007/ゴールデンアイ
<GOLDENEYE>
95年 イギリス・アメリカ映画 130分

監督:マーティン・キャンベル
音楽:エリック・セラ
出演:ピアース・ブロスナン(ジェームズ・ボンド)
   ショーン・ビーン(アレック)
   イザベラ・スコルプコ(ナターリア・シミョノヴァ)
   ファムケ・ヤンセン(ゼニア・オナトップ)
   ゴットフリード・ジョン(アーカディ・ウルモフ将軍)
   アラン・カミング(ボリス・グリシェンコ)
   チェッキー・カリョ(ドミトリ・ミシュキン防衛大臣)
   ジョー・ドン・ベイカー(ジャック・ウェイド)
   ルビー・コルトレーン(ヴァレンティン・ズコフスキー)
   ジュディ・デンチ(M)
   デスモンド・リュウェリン(Q)
   サマンサ・ボンド(マネーペニー)

(ストーリー)
ソ連が密かに開発していた衛星“ゴールデン・アイ”が、謎の犯罪組織ヤヌスに盗まれてしまった。ゴールデン・アイは、電磁波ビームにより、狙った地域の電子機器を全て破壊する能力があるのだ。
英国が誇る女たらしスパイのジェームズ・ボンドは、ゴールデン・アイを管理していた基地に勤めていた女性職員のナターリアと協力してゴールデン・アイとヤヌスを追う。
そして、ヤヌスの黒幕が、9年前にボンドとのソ連での任務中に殉職したと思われていた、元006のアレックだと判明。アレックは、ロシアの将軍ウルモフと、ナターリアの同僚ボリスを引き込み、ロンドンの銀行から金を盗み出した後、ゴールデン・アイで全ての記録を抹消するという、大規模な強盗計画を立てていたのだ!

(感想)
前作から結構間を開けての新作であり、ボンド役も変更という、まさに「心機一転」な一作だったようです。
この映画が公開された当時、私はまだボンドに何の興味も持っていなかったので、普通にスルーしていました。「大人向けのスパイ映画」という印象があって、難しそうでとっつきにくいような感じがあったんですよね。
ですが、深夜にテレビ放映された『美しき獲物たち』を試しに見てみたら、これがかなり分かり易いエンターテイメント映画だったという事が判明いたしまして。それで、当時シリーズ最新作だった、この『ゴールデン・アイ』をレンタルで見てみたところ、「これが、『007』という映画なのか!!」と衝撃を受けたものでした。
まず、何といっても、ボンドのキャラクターが実に面白かったです。英国紳士な雰囲気を漂わせつつ、ユーモアのセンスがあり、女たらしであり、そしてどんな危機的状況も切り抜けてしまう強さを持っているわけです。まあ、最後のは他のアクションヒーローもみんな持ってる要素ですけど、ボンドから感じられる「ダンディズム」というのは、これまでのアクション映画の主役ではあまり見ないタイプのものでしたからねぇ。
「スーツを着込んだ、ミスター・ダンディ」という、パッと見、アクションの似合わなそうな優男が、いざ戦闘にになると、銃を乱射し、飛んだり跳ねたりの大活躍を見せるというギャップには新鮮な面白さがありました。
今回からピアース・ブロスナンがボンド役に抜擢されたわけですが、もう、「この人はボンドをやる為に生まれてきたんじゃないんだろうか」と思うぐらいのハマりっぷりでしたね。昨日今日シリーズを見始めた奴が言うのもおかしな話なんですけど、何と言うか、「これがボンドというキャラクターだ」というような説得力が感じられるんですよね。これまで、多少聞きかじっていた事から想像していたボンド像がそのまま形になったようなフィット感があったんです。
なので、私にとっては、“ジェームズ・ボンド”とは即ちピアース・ブロスナンの事で、他は“コネリー・ボンド”“クレイグ・ボンド”等、俳優名を入れて区別して表記してしまうぐらいの、もはや別物扱いですね。
やっぱり、「最初に見たボンド」が、その人にとっての「ベスト・ボンド」という事になるんでしょうかね。多分、私もコネリー・ボンドからこのシリーズに入ったのなら、「コネリーこそ本物のボンド」と思っていたのかもしれないですし、ムーア・ボンドから入ったのなら、「ロジャー・ムーアこそ最高のボンド」と思っていたのかもしれません。・・・あれ、そう言えば、私が最初に見たボンドはロジャー・ムーアだったような(笑)。でもまあ、あれはテレビ放映でしたからね。2時間枠だったんで、30分近くはカットされてたんでしょうし。やっぱり、最初にきちんと見たのは、この『ゴールデン・アイ』という事になると思います。

ただ、この映画に関しては、ボンドと出会った衝撃というのが一番で、映画の内容や面白さに関しては、今では「中ぐらいかな」みたいな印象なんですよね。
「冷戦終結後のスパイ映画」という事で、脚本家にとってもまだ手探りみたいな状態だったのかもしれません。悪役の正体が元の仲間だったとか、悪に走るようになった動機とか、翌年公開の『ミッション:インポッシブル』と被ってましたからね(ついでに、敵が攻撃衛星の乗っ取りを企てるというのも、同時期公開の『暴走特急』と被ってましたし)。
あと、途中の展開に「ボンドならでは」と思えるような面が少なかったような気もします。他のアクションヒーローが対峙しても、同じように切り抜けて、同じような展開になったんじゃないかと思えるんですよね。

と、いったような面が感じられたものの、冒頭のアクションシーンと、中盤の戦車チェイスのシーンは、『007』シリーズならではとも思える、荒唐無稽で楽しい、名アクションシーンでした。
特に、冒頭の「崖から落下する飛行機にボンドがバイクで追いつき、そのままその飛行機で逃走」という流れを最初に見た時は感動すらしましたね。こういう、ありえないアクションシーンは大好きですからねぇ。『ダイハード2』の「コックピットからの脱出」とか、『エスケープ・フロム・LA』の「ツナミ・サーフィン」の系譜に入るアクションシーンだったんじゃないかと思います。
しかも、この後すぐに、ティナ・ターナーによる超カッコいいオープニングテーマに乗せた、クールなタイトルクレジットが開始されるんですからね。まさに最高の掴みでした。
あと、戦車チェイスも実に良かったです。この映画の前に、『レッド・ブロンクス』でジャッキーがホバークラフトチェイスを敢行していましたが、この当時は「普段、公道を走らない、デカいものでチェイスを撮ろう」という風潮のある年だったのかもしれません(まあ、多分この2作だけだと思いますけど・笑)。
建物や車をぶっ壊しながら突き進む戦車の迫力もかなりのものでしたけど、それを運転してるのがスーツ姿のダンディというのがまたイカしてるんですよねぇ。しかも、途中でおもむろにネクタイを直したりしますし。
銅像の台座をぶっ壊して、戦車がその銅像を頭に載せたまましばらく走るという絵も、シュールと言うかマヌケと言うか、非常に愉快な映像でした。こういう構成を考えるのも凄いですけど、それを実写で撮ってしまうんですから驚きです。