監督:ガイ・ハミルトン
音楽:ジョン・バリー
出演:ロジャー・ムーア(ジェームズ・ボンド)
クリストファー・リー(フランシスコ・スカラマンガ)
エルヴィ・ヴィルシェーズ(ニック・ナック)
ブリット・エクランド(メアリー・グッドナイト)
モード・アダムス(アンドレア・アンダース)
バーナード・リー(M)
デスモンド・リュウェリン(Q)
ロイス・マクスウェル(マネーペニー)
スーン=テック・オー(ヒップ中尉)
リチャード・ルー(ハイ・ファット)
クリフトン・ジェームズ(J・W・ペッパー保安官)
(感想)
ムーアボンド2作目で、マカオに香港、タイといったアジア方面を舞台にした、オリエンタルムード満開な一作となっていました。それにしても、タイが舞台なのに、ムエタイじゃなくて空手と相撲が出てくるのはどういう事なんでしょうかね。当時はまだムエタイはそんなに流行ってなかったんだろうか。
謎の道場が出てきて、そこでボンドが空手の組み手をやらされる、という訳の分からないシーンが出てくるんですが、ここは何か色々と面白い場面になってましたね。最初の相手と戦う時、相手がお辞儀をしてる隙に蹴り倒すという汚い手を平気で使うボンドとか、次に出て来た敵が動きに若干ブルース・リーの物真似が入ってる所とか、ボンドを助けにカンフー女子高生が現れる所とか、格闘アクションの動きの迫力の無さを補って余りある賑やかさと楽しさがあって実に良かったです。
前作の『死ぬのは奴らだ』に続いて、奇妙な内容の007といった感じなんですけど、ムーアボンドにはこの雰囲気は割と合ってるような感じですね。コネリー他、後のボンド達だとこの雰囲気には溶け込めなさそうな気がします(ブロスナンボンドならギリギリ行けそうな感はありますが)。
そもそも、このムーアボンドって、どうもこれまでの印象だと、「凄腕スパイ」と言うより「面白おじさんスパイ」に見えてしょうがないんですよね。「007本編」より「007のパロディ」の主人公っぽい感じがします。まあ、それも私がパロディの方を先に見てしまってるからそんな事を思ってしまうのかもしれないですけど。
とは言え、だからといってムーアボンドが他のボンドと比べて変だとかカッコ悪いだとかは思わないですけどね。先に書いたように、映画の雰囲気には非常にマッチしていましたし、シリーズの中でも色々と評判の悪い映画らしいですけど、妙な違和感を持つ事なく、全編普通に楽しんで見る事が出来ました。
ただ、今回の悪役である“黄金銃を持つ男”ことスカラマンガは、ムーアボンドに比べると非常に優秀で、クールでカッコいい男に見えまして、正直、ボンドより全然強そうでした。この悪役に関しては、他のボンドで出て来た方が良かったと思ってしまいましたね。必殺の武器“黄金銃”も、今見るとゴールドライタンのおもちゃみたいでちょっとダサいんですけど、その場でパッと組み立てられる所とか、弾も黄金で、これまで標的を一発で仕留めてきた所とか、設定自体は「いかにも特殊な武器」といった感があって素敵でした。
それにしても、この人の「乳首が3つある」という特徴は何なんでしょうかね。だいたい、男の乳首というもの自体「何の為にあるのか分からない」と巷で言われるぐらいの器官だというのに、何故そんなのを一つ増やしたのか。しかも、その情報が結構な規模で広まってるらしいのがまた、笑っていいのか何なのか戸惑ってしまいます。本人は顔も素性も知られてないぐらいなのに。もしかしたら、小人の召使いがうっぷん晴らしに各地で言いふらしてたとか。
そうそう、この小人の召使いはいいキャラしてましたね。忠実に働いてる割に、遺産を狙ってたりするようですし(笑)。スカラマンガのアジトにある決闘ルームで、こいつが一々茶々を入れてくるのも実にウザかったですねぇ。そう言えば、ここの遊園地のアトラクション的な仕掛けとか、こいつの茶々とか、『Fallout4』の遊園地DLCに似たようなのが出てきましたけど、これが元ネタだったりするんだろうか。
今回のボンドガールは、現地でボンドのサポートをする諜報員なんですけど、これがまた驚くほどのドジっ子でしたねぇ。どうやって諜報員になったんだろう。ひたすらボンドと寝る事を狙ってくるという盛りのつきっぷりも凄かったですけど、まあこの点はボンドも同レベルでしたからね。
終盤、スカラマンガに拉致されてアジトに連れて行かれましたけど、そこで監禁される事になるのかと思ったら、どうやら普通にもてなされてたようですね。後にボンドの前にビキニ姿で満更でもないような感じで現れてましたけど、あれって、泳ぎに行ってた帰りなんでしたっけ。自由過ぎだろ(笑)。あと、“グッドナイト”って名前もいいですね。キャラ的にも、毎晩気持ちよく寝てそうですし。そう言えば、本編内でも、クローゼットの中で2時間程居眠りしてましたね。