監督:ガイ・ハミルトン
出演:ロジャー・ムーア(ジェームズ・ボンド)
ヤフェット・コットー(Dr.カナンガ)
ジェーン・シーモア(ソリテア)
ジュリアス・ハリス(トゥー・ヒー)
ジェフリー・ホールダー(サミディ)
グロリア・ヘンドリー(ロージー)
クリフトン・ジェームズ(J.W.ペッパー保安官)
バーナード・リー(M)
ロイス・マックスウェル(マネーペニー)
デビッド・ヘディソン(フィリックス)
(感想)
現時点で「最も続いたボンド」である、ロジャー・ムーアの記念すべき第1作目です。何でも、シリーズの1作目製作の時点ですでにボンド役の候補にあがっていた事もあったようで、「イメージが違う」と思われるような事もなく、当時の観客から受け入れてもらうことができたようですね。
歴代ボンドの中でも、最も“プレイボーイ度”が高そうな雰囲気で(コネリーも相当なものでしたけど・笑)、正直、強そうにも見えません。なので、アクションヒーローとはまたちょっと違うボンド像なんですが、何か「味のある人」という感じで、行動が見てて面白いです。
この雰囲気、どちらかと言うと、スパイコメディ映画の主役みたいな感じなんですよね。本来ならハラハラドキドキの見せ場のシーンの所も、時代のせいなのか、今見ると笑えたりするような所もありますし、さらには、元々笑いをとるつもりのユーモラスなシーンもあったりして、何だか『裸の銃を持つ男』みたいなコメディ映画を見てるような気になってきます。
どう見ても威力が無さそうなロジャー・ボンドのキックで敵が吹っ飛んだりしますし、ヘビ一匹がバスルームに入ってきただけで大袈裟な展開になったりしますし、何よりも、ボンドが罠にかかる時の描写が「ヌケてるスパイがドジった所」みたいに見えて爆笑ものでしたからね。
もう、全体的にヌルいんですけど、このヌルさがロジャー・ムーアの持つ雰囲気から感じられるものなのか、それとも、元々ヌルい雰囲気にロジャーが溶け込んでいるのか、どっちだか分からないですが、「これがこの映画のカラーだ」みたいな、一本芯の通ってる雰囲気なので、見ながら「こういう気楽な『007』も楽しいものだな」と思えてきます。
でも、タイトルは『死ぬのは奴らだ』なんて強気のものなんですよね。このギャップも何か面白いです。
ストーリーにも、占いとか魔術といった、神秘的なものが出てきますし、オープニングとエンディングのクレジットでは、ドクロを多用した映像が出てくるなど、不気味なイメージというのが背景にあるんですよね。気味の悪いカカシとか大量のワニとか、怖いギミックは結構仕込まれてるんですけど、でも、どうにもヌルくてお気楽な感じがあるんですよね。
これは、今見るから怪奇っぽさが感じられないだけでかもしれないですけどね。当時としたら、ボンドが不思議で奇怪な敵と戦っているという事にドキドキハラハラするような映画だったのかもしれません。
まあ、今の印象である「怪奇風味なのに、ヌルくて陽気」という雰囲気も面白くて好きなんでいいですけどね。