監督:ジョン・クレン
音楽:ジョン・バリー
出演:ティモシー・ダルトン(ジェームズ・ボンド)
マリアム・ダボ(カーラ・ミロヴィ)
ジェローン・クラッベ(ゲオルギ・コスコフ将軍)
ジョー・ドン・ベイカー(ブラッド・ウィティカー)
アンドレアス・ウィズニュースキー(ネクロス)
ジョン・リス=デイビス(レオニド・プーシキン将軍)
トーマス・ウィートリー(ソンダース)
アート・マリック(カムラン・シャー)
デズモンド・リュウェリン(Q)
ロバート・ブラウン(M)
キャロライン・ブリス(マネーペニー)
ジョン・テリー(フィリックス)
ジェフリー・キーン(国防大臣)
(感想)
長年ボンド役を務めていたロジャー・ムーアに代わり、今作からティモシー・ダルトンに変更になりました。
結局、次の『消されたライセンス』含めて2作で終了という、ジョージ・レーゼンビーに次ぐ短命ボンドとなってしまいましたけど、独自の魅力あるボンド像を創造していて、2作で終わってしまったのは実に惜しかったと思います。
歴代ボンドの中でも、「プロっぽさ」というのが感じられ、「英国紳士然とした、女たらしの諜報員」と言うより、「腕利きのスパイ」のような雰囲気です。まあ、実際、ボンドは腕利きのスパイなんですけど、何と言うか、よりアクションヒーローっぽくなったと言うんでしょうかね。もかしたら、“ボンド”よりも“スパイ・アクション・ヒーロー”に近いのかもしれません。
この映画の公開当時はマッチョ・アクションスター全盛期の時代でしたし、そういうマッチョなアクション映画に対抗するには、優男風味が強調されるようなボンドでは駄目だったんでしょうね。ダルトンも、自らスタントをこなしたりしていたようですし、眼光の鋭さといい、見事な割れっぷりのケツアゴといい、「本当に強そう」という雰囲気が漂っていました。
「どんな状況でもどこか余裕のようなものが感じられる」というのは今までのボンドもそうだったんですけど、そこに説得力も備わったかのようで、アクションシーンにおける映画的リアリティもかなり増したと思います。
そして、もちろん、ボンド役に必須な「紳士の雰囲気がある」「スーツが似合う」「ユーモアのセンスがある」「女性に対する扱いの上手さ」等もしっかり併せ持っているんで、他のマッチョアクションスター達とは、やっぱり少し違うんですよね。アクションヒーローに近づいても、やっぱり今までのボンドのイメージもちゃんと継承してるんです。
今回、そんなティモシー・ボンドの魅力を前面に出す為か、ストーリー展開もかなりアクション映画的でした。終盤なんて『ランボー3』みたいになってましたし(舞台がアフガンというだけで、武装ヘリと対決したりはしませんが・笑)。出来れば、ボンドカーによる激しいカーチェイスなんかも見たかったですが、今回はギミックを個別に出すだけで終わった感がありましたね。これはこれで『TAXi』の改造タクシーの活躍を見てるみたいな楽しさがあって面白かったですけど、ティモシー・ボンドのハンドル捌きとか見てみたかったですね。
まあ、そんな無いものねだりは置いておくとして、敵の陰謀を見抜いていく所とか、危機を切り抜ける所なんかは、まさに「ヒーロー大活躍!」といった感じで、上質のアクション大作を見てる気分になってきます。
そして、そんなアクションヒーロー風味の、頼もしくもダンディなボンドと行動を共にして、一緒に危機を潜り抜けていくボンドガールが何だか見てて羨ましくなってきてしまいましたよ。
このボンドガールのキャラクターが、本来は諜報員のスパイ活動に巻き込まれたりとかしないような、観客と同じ等身大の普通の人というキャラクターなんですよね。なので、主人公のボンドよりも、むしろこのボンドガールの方に感情移入して見てしまいます。
で、急に、雪原を敵の追っ手から逃げるとか、アフガンゲリラと行動を共にするみたいな、非日常の世界に入っていく(と言うか、連れて行かれる)わけですけど、超頼もしいケツアゴ・スパイのエスコートがあるおかげで、どこか安心感みたいなのがあるんですよね。きちんと守ってくれそうですし。
全体的に、ストーリーの流れもスムーズで、起承転結もしっかりしていたように思えましたし、合間にはしっかりレベルの高いアクションシーンが定期的に出てきたりするんで、アクション・エンターテイメント映画としての出来の良さ、見易さはシリーズ中でも相当なものだと思います。あと、主題歌のカッコ良さとボンドガールの美人さもかなりのものでしたねぇ。