007/ロシアより愛をこめて
<FROM RUSSIA WITH LOVE>
63年 イギリス映画 115分

監督:テレンス・ヤング
音楽:ジョン・バリー
出演:ショーン・コネリー(ジェームズ・ボンド)
   ダニエラ・ビアンキ(タチアナ・ロマノヴァ)
   ロバート・ショウ(レッド・グラント)
   ペドロ・アルメンダリス(ケリム・ベイ)
   ロッテ・レーニャ(ローザ・クレッブ/No.3)
   ヴラデク・シェイバル(クロンスティーン/No.5)
   バーナード・リー(M)
   デスモンド・リュウェリン(Q)
   ロイス・マクスウェル(マネーペニー)

(ストーリー)
悪の秘密結社スペクターは、暗号解読機レクターの奪取と、ドクター・ノオの仇である英国諜報部員ジェームズ・ボンドの抹殺を同時に行う画期的な作戦を思いついた。
簡単に罠だと見破られそうな作戦だったが、ボンドを釣る為の美女を作戦に絡ませる事で、「これなら罠と分かっててもアイツなら鼻の下を伸ばしながら引っ掛かってくるだろう」と考える。そして、その思惑通り、ボンドは「こんな美女に会えるのなら罠でも構わん」とばかりに、豪快に釣られてくるのだった。

(感想)
前作から僅か1年でもう続編の登場です。そんなに早く続編が作られる事を望まれるぐらい、前作が当たったという事なんでしょうね。予算もかなり増えたようで、大掛かりなアクションシーンも出てくるようになりました。
前作ほど「今見ると色々ショボい」という面は少なくなってきて、特に終盤の、平地でヘリに追われる場面と、水上で敵のボートに追われる場面が連続して畳み掛けて来る辺りは、いかにもクライマックスな迫力がありましたね。
そして、シリーズお馴染みのスパイグッズも登場し、舞台が一か国では済まなくなったり、手強い中ボスが出てきたりと、いよいよ後のシリーズの原型が見られるような作りになってきました。後はボンドカーが出てくればもうお馴染みの『007』といった感じです。
ただ、「今見ると笑える」という場面もちょいちょいありました。まあ、これは後に色んな所でパロディにされてるのを見てるせいだと思うんですけど、主にスペクターの内部の描写とか、「この人達は真面目な顔して何やってるんだろう」とかつい思ってしまいます。
そして、中盤頃には「キャットファイト鑑賞」という謎の見せ場も登場。これは、一体何なんでしょうかね。舞台のトルコでは有名な出し物だったりするんだろうか。まあ、何かとりあえず「面白い物を見せてもらった」という気分にはなりましたけど。

一方、前作ではすっきり見易かったストーリーは、今回は結構複雑になってきました。見ている間はそんなにややこしい話とは思ってなかったんですけど、後に感想を書く段階になって、「あれ、この映画って、どういう話だったんだ?」という疑問が出てきてしまいました。
何か、前提となる敵の計画がちょっと飲み込みづらい感じなんですよね。まず、暗号解読機のレクターは、スペクター側は別に欲してるわけではないっぽいんですね。あくまでもボンドを釣るエサでしかないと。
ボンドガールのタチアナの立ち位置もちょっと複雑で、この人に命令を下す上司は実はスペクターの幹部なんですけど、タチアナ本人はスペクターのメンバーではなく、ソビエトの情報局の人です。で、ソビエト情報局なんて言うとイギリス側からすると敵組織っぽいですけど、今回の敵はスペクターですし、むしろソビエト側からしたらこれから暗号解読機を盗まれるという被害者的立場なんですよね。
ただ、タチアナとその上司のNo.3ことクレッブの以前の所属はただのソビエト情報局ではなく、何かの組織っぽい感じもあったんですけど、この辺の事情も何だかよく分かりませんでしたね。多分説明はされてるんだと思いますけど、こういうスパイ事情の知識に疎いのでサラッとした説明だけだと理解しきれないです。
そして、今回のスペクターの最終目的は、「ボンドを罠に嵌めてから殺す」というものなんですけど、そこにレクターとタチアナを絡ませたり、二人のハメ撮り映像を使った醜聞を仕込もうとしたりとか、もう、無駄に複雑な筋立てになってるんですよね。
あと、トルコでボンドに協力するおじさんが、今回の件とは無関係で敵に襲われてるというサブイベントが同時発生してるのも話をややこしくするのに一役買ってましたねぇ。
ロバート・ショウ演じるグラントという手強い暗殺者が中ボスとして出てきましたけど、普通に、この人を刺客としてボンドに差し向けるだけで良かったのにとか思ってしまいます。こんな複雑な作戦に絡ませたせいで結局最後はボンドにやられてしまいましたけど、単純な暗殺任務だったら多分ボンド殺れてましたよね、この人。しかも「金に目が眩んで隙を作ってしまった」という、情けない感じになってしまいましたし。

でも、こういった複雑さがある話なのに、見てる間は特に難しい話だと気付かせずに見せていたというのは凄いですね。「何だか知らない間に進むストーリー」「危機を寸での所で切り抜けるボンドの活躍」を単純に面白がって見てましたからねぇ。きっと、エンターテイメント映画としてよく出来てたという事なんでしょうね。