監督:アレイン・ヤクボウィッツ
製作:ダニー・ラーナー
製作総指揮:アヴィ・ラーナー
音楽:ビル・ワンデル
出演:ディーン・コクラン(ブレット・プレスコット)
アラン・オースティン(ニコラス機長)
イーライ・ダンカー(イライジャ)
タリー・マーケル(ヘザー)
ケイト・コンナー(マリー)
ティム・トマーソン(チェンバーズ上院議員)
アッマー・ダライシェ(ジャマル)
フランク・ノバック(ブーマー・ワトキンズ将軍)
アンディ・ハッシュ(ロバート・クライン補佐官)
一方、テログループ側は、自爆テロをするか、乗客を人質に政府から金を要求するかで大いに揉めるのだった。
(感想)
B級未公開映画界に腐るほどある航空テロリストアクション物の一本です。製作会社があのヌー・イメージで、お馴染みのアヴィ・ラーナーが製作総指揮として参加。という事で、いい意味で「これぞB級アクション!」といった精神の感じられる、安定して楽しい娯楽映画となっていました。
この手の映画もここまで続くと感覚が麻痺してくるのか、やれ「『エグゼクティブ・デシジョン』のパクりだ」とか「『乱気流タービュランス』のパクりだ」とか全く思わなくなってきますね。もはや、こういうジャンルの映画の新作として普通に楽しんでいる自分を発見したり。
でも、何だかんだ言って、こういうテロリストアクション物は見てて楽しいですね。もはやA級映画ではこんなストレートな作りなのは製作してもらえないので、「単純に楽しいテロリストアクションが見たい」という欲求を満たしてくれる“B級未公開映画界”というものには、「実に素晴らしいマーケットだ」とか思いますね。
この映画ならではな楽しかった点としては、テログループに“自爆テロを目論んでいる狂信派”と、“人質を使って金を要求する、昔ながらの穏健派”の2グループがいる所ですね。
この考えの違う2グループが何故一緒にテロ計画を実行してるのかは謎ですが、まあ、何かそれぞれに思う所があったのでしょう。
で、そんな連中に我らがアメリカ航空局の捜査官がたった一人で戦いを挑むわけです。
主役のエア・マーシャルを演じるディーン・コクランという人は、外見は「織田裕二をアメリカ人にしてマッチョ化させた」みたいな雰囲気の、見るからにヒーロー系な人物です。以前は『バットマン&ロビン』や『フォーン・ブース』などの端役で出ていたようですが、ここ数年B級映画に出始めるようになったようですね。この手の映画の主演が似合いそうなので、今後も頑張ってほしいものです。
この映画で格闘アクションを披露する場面がありますが、筋肉があるだけで、格闘技の経験は無さそうです。ですがこの映画、アクションの撮影方法が「スロー&接写を多用して、攻撃を出し合う様を近距離でじっくり見せる」という演出になってました。アクションの型をワンカットづつゆっくり見せていけばいいので、演じるのは随分楽だったんじゃないでしょうかね。
最近の「揺れるカメラ&早回し」的な格闘演出と正反対のものですが、スピード感こそ無いものの、見た目の迫力が感じられるので、いいアクション演出だったと思います。
それに、恐らく、格闘アクションをやるに当たってヴァン・ダムの主演作を見て研究したに違いないと思わせるアクション演技をしていて、見ていて実に清々しかったですね。
さて、このエア・マーシャルの活躍のおかげで、豪華客船か何かにカミカゼテロを実行しかけていた狂信派グループが全滅する事となります。
で、この後は、油断した隙にまんまと穏健派テロのリーダーに主導権を握られる事となるんですが、この穏健派のイライジャというテロリストが、何か妙にお茶目なキャラクターでしたね。ここから映画の雰囲気も妙に軽い感じになるんですが、この軽妙な雰囲気がまた見てて楽しかったりするんですよね。
しかも、こいつの要求が「テロリスト対策用として政府が準備してある費用5千万ドルのうち、3千万ドルをよこせ」というものです。普通、アメリカ政府はテロとは交渉しないものですが、ちょっと前に自爆テロの脅威にさらされていたすぐ後でこんな程度の要求をされたものだから、うっかり要求を呑んでしまうんですよね(笑)。交渉術としてはなかなかいい作戦でしたね。まあ、実際にやっても通用しないでしょうけどね。
さて、飛行機が舞台の映画では、「機長が死亡または意識不明となり、素人が着陸させるハメになる」というのがパターンです。ですがこの映画は驚くことに、機長が着陸をさせてしまいます。いやぁ、これには驚きましたね。「これが驚くような事なのか」とも思うんですが(笑)。
このオリジナリティ溢れる展開に驚いていたのも束の間。飛行機はまたテロの命令により、降り損じた乗客と共に再び飛ぶ事となります。で、この2回目の着陸時、機長まんまと負傷(爆笑)。ああ、やっぱりこうなるんだなぁ。これが無いと飛行機映画は終われないんですねぇ。
そんなわけで、冒頭でフライトシミュレーションゲームに興じていた少年(やっぱり伏線だったか・笑)と我らがエア・マーシャルが協力して飛行機を着陸させる事となるのでした。めでたしめでたし。