サンダー・アーム 龍兄虎弟
<龍兄虎弟(THE ARMOUR OF GOD)>
86年 香港映画 98分

監督:ジャッキー・チェン
出演:ジャッキー・チェン(ジャッキー)
   アラン・タム(アラン)
   ロザマンド・クワン(ローラ)
   ローラ・フォルネル(メイ)
   ケン・ボイル(魔王)

(あらすじ)
数千年前、悪の邪教集団が人々を支配していた。だが、正義の神が現れ、邪教軍団を退治してくれた。その時、正義の神が使っていた5つの武具は“神の武器”と呼ばれる事となる。
そして現代。邪教軍団が復活し、世界各地に散らばっていた神の武器を集め始めていた。5つの神の武器、全てを破壊すれば、再び世界を支配する事が出来るからだ。

“アジアの鷹”の異名を持つトレジャー・ハンターのジャッキーは、そんな謂れがあるとは知らずに、神の武器の一つである剣を、とある部族の祭壇から盗み出す事に成功した。時を同じくして、ジャッキーの友人、アランの恋人ローラが、邪教軍団にさらわれるという事件が発生。身代金の代わりに、神の武器を要求されるのだった。
残り2つの神の武器を所有する、ある大富豪の元を訪れたジャッキーとアラン。そこには、先日ジャッキーが手に入れ、オークションで売りに出した剣もあった。剣を買ったのはこの富豪の娘、メイだったのだ。
全ての神の武器を揃えて返す、メイを一緒に連れて行く、という条件で3つの神の武器をレンタルしたジャッキー達は、邪教軍団のアジトへ向かうのだった。

(感想)
ジャッキーが『インディ・ジョーンズ』シリーズにインスパイアされて作った映画、らしいです。
ジャッキー演じるジャッキー(今回は役名もジャッキー)は、アジアの鷹と呼ばれるトレジャーハンターで、金銭教の熱心な信者です。なので、インスパイア元の映画の考古学者と違って、手に入れたお宝は博物館に寄贈したりなどせず、オークションで売り払ってしまいます。
中盤のカーチェイスシーンでは加速装置やら脱出装置などが装備された車に乗っているんですが、これはお宝を売って稼いだ金で改造したものなんでしょうかね。
ちなみに、このアジアの鷹というトレジャーハンター。他のこの手の映画の同業者達とは大きく違う、一風変わった点があります。それは、何故か「元アイドルグループ出身」という訳の分からない設定が入ってるところです。一体、何がどうなったらアイドルからトレジャーハンターに転身なんて事になるんだ(笑)。まあ、劇中ではメンバー間の三画関係に敗れたからみたいな事が語られてましたけど、普通は女に振られたからってトレジャーハンターにはならんだろ。いや、凡人なら有り得ないけど、ジャッキーなら有り得るのか・・・?

さて、そのかつての三角関係の勝者であるアランが現れ、かつてジャッキーを振った女ことローラがさらわれたという事で、ジャッキーに助けを求めてくる事となります。
これはまた愛憎関連の面倒な一悶着が起こるのかなと思うところですが、ありがたい事に、この辺の恋愛事情はそんなに前面には出てきません。何しろアクション映画でこんな所を掘り下げて語られたらたまったものじゃないですからね。どちらかと言うと、ジャッキーとアランの、まるで兄弟のような友情の方が前面に来てるという感じです。
アランもジャッキーと行動を共にして、敵との戦いやらアジトへの潜入なんかを一緒にやる事になるんですが、コイツがまた見事なまでのポンコツなんですよね。で、この映画のコメディシーンは、主にこの二人の凸凹コンビっぷりで笑いを取りに来ているという感じです。
このアランという人、ジャッキーから女を勝ち取ったぐらいなんですから、2枚目のライバルキャラみたいになっててもおかしくない所なんですけど、もう、完全に笑いをとりにきてる三枚目キャラでしたからね。演じてるアラン・タムという人はコメディアンではなく、本業が歌手の人らしいんですけど、元々バラエティ番組とかで面白い事を言ったりするようなタイプの人なんだろうか。

いつものジャッキー映画同様、全体的にハイレベルなアクションシーンが出てくるんですが、意外とカンフーシーンがあんまり出てきません。ですが、この点は最後にまとめて出すつもりだったのか、クライマックスになると大カンフーバトル大会がおっ始まる事となります。もう、「待ってました!」てなものですね。
大量に湧いてくる邪教軍団の雑魚相手の百人組手が終わったと思ったら、今度はハイヒールによる蹴り技で攻めてくるアマゾネス軍団がボスとして登場します。邪教の教祖は武闘派ではないので、ここがラスボス戦という扱いになるんですが、このアマゾネス4人組はかなりユニークかつインパクトのある敵でしたね。特に、ジャッキーのパンチを巨乳で衝撃吸収する辺りは、マッチョマンには真似の出来ない防御技で、最初に見た時は驚いたものでした。

最後は教団のアジトをダイナマイトで吹っ飛ばし、崩れる洞窟からギリギリの所で脱出!ハッピーエンドだバンザイ!といった感じで終わりになります。
で、見ているほとんどの人が思っているであろう、「あれ、神の武具は?」という疑問には一切応えず、お馴染みNGシーン付きエンドクレジットが始まります。ここで、「おい、お宝どうすんねん!」と言いたくなりますが、エンドクレジットの背景でジャッキー大怪我の場面なんかが流れてくるんで、こちらも口をつぐまざるを得なくなるという。まあ、ジャッキーも無事でこうして映画も完成したし、お宝を回収できなくても、きっとどうにかなるんでしょう(レンタルさせてくれた富豪も、そんなに執着してないふうでしたし・・・)。