9デイズ
<BAD COMPANY>
02年 アメリカ映画 117分

監督:ジョエル・シューマカー
製作:ジェリー・ブラッカイマー
音楽:トレバー・ラビン
出演:アンソニー・ホプキンス(ゲイロード・オークス)
   クリス・ロック(ジェイク・ヘイズ/ケビン・ポープ)
   ピーター・ストーメア(ヴァス)
   ガブリエル・マクト(シール)
   ケリー・ワシントン(ジュリー)
   ジョン・スラッテリー(ローランド・イェーツ)
   ブルック・スミス(スワンソン)
   マシュー・マーシュ(ドラガン)

(あらすじ)
プラハでポータブル核爆弾の密売が行われていた。だが、買い手の古美術商マイケル・ターナーは、実は本名ケビン・ポープというCIAの囮捜査官なのだ。相棒のベテラン捜査官オークスと共に交渉を進め、2週間後に取引をする約束を済ませた。
だが、帰りに何者かの襲撃を受け、ケビンはオークスをかばって銃弾を受け、命を落としてしまった。ケビンがいなければこの取引きは失敗に終わり、核爆弾は他の者の手に渡ってしまう。
そこでCIAは、生まれてすぐに生き別れとなっていたケビンの双子の弟、ジェイクを見つけ出し、ケビンの変わりをさせるという作戦に出る。そして、取引のある9日後までに、この作戦行動に必要な情報と能力をジェイクに叩き込まなければならないのだ。

(感想)
「人類史上最悪の9日間!」という、映画の内容と違うウソ宣伝がなされていたブラッカイマー印の娯楽アクション。宣伝では、核爆発のタイムリミットが9日間という表現をしていましたが、実際は、核爆弾の取引の日まであと9日間という事でした。
民間人がCIAの仕事をさせられるという、同時期公開(日本で)の『トリプルX』と似た内容の映画ですが(しかも主な舞台が“プラハ”というのも一緒)、あちらが火薬と筋肉がメインだったのに比べて、こちらは純粋にストーリー展開を楽しむ映画になってますね。ブラッカイマー映画も監督がマイケル・ベイじゃないとこんなにスマートな映画になるんですね(笑)。
『トリプルX』がほぼ若者向けな内容だったのに比べ、こちらは幅広い層が見ても楽しめる内容になってますね。その割りに、日本でも全米でも『トリプルX』ほどヒットしなかったですが(笑)。ただ、私は作りの丁寧な『9デイズ』の方が好きですけどね。


突如としてCIAの仕事をさせられるハメとなった男が、持ち前の社交性や抜群の記憶力でもって見事に仕事をこなしていく様はなかなか痛快なものがあります。しかも、さも当然のようにこなしているわけではなく、時にビビリながら、時に逃げ出したりしながらなので、見てる側にとっても等身大な感じのするキャラクターとなっています。
そんな主人公を演じるのは、『リーサル・ウェポン4』でお馴染みのクリス・ロックです。コメディアンなので、演技が全般的にコミカルなんですが、これが場面と合わなく感じる事も度々あったりするのが玉に瑕ですかね。敵に襲われているという深刻なシーンの時もふざけてるように見えてしまったりとか。
映画の内容自体、本来ならば全編シリアス調で通してもよさそうな内容なのに、主演がコメディアンという事で、コメディシーンとまではいかないものの、ちょっとしたギャグが入ってきたりするんですが、それがどうにも微妙な感じなんですよね。例えば、『リーサル・ウェポン』シリーズでもところどころでギャグが入ったりしてたのに、見ていて全く違和感は無かったんですが、こちらは何か変に感じるんですよね。
それがどうしてなのか考えてみたところ、どうも、ギャグシーンにおいて、クリス・ロックがふざけてるように見えるせいらしいという事に思い当たりました。コメディというより、おふざけに見えるとでもいうんでしょうか。全編そんな調子というわけではなく、時折そう見えるというだけなんですが、他の黒人コメディアンの方々、エディ・マーフィやマーティン・ローレンスとかと比べて、どうも魅力の感じられない男です(個人的に)。

そもそも、この映画のウリが「アクション映画の主演がアンソニー・ホプキンスとクリス・ロック」という点なんですが、これが「予想外の面白さを生んだ!」という所に行ってないのが残念なところです。
ホプキンスがCIA役をやってるという事自体には別に問題は無いんですが、アクションシーンをやらせるのはさすがに無理があったようです。現場で若い捜査官と一緒に走り回ったりするんですが、もう走る姿の辛そうな事(笑)。また、敵にヘナヘナパンチを放ったりする辺りは、「あぁ、ヤバい事になってるなぁ・・・」と思わずにはいられなくなります(そんなパンチでも、敵はしっかりやられてくれてるし・笑)。

ストーリーもアクション演出も申し分無いんですが、キャスティングでしくじったかな、という感じがありますねぇ。奇をてらったキャスティングなんかしないで、ちゃんとこういう内容の映画の主演をこなせる人をキャスティングしていれば、超傑作になっていても不思議じゃないぐらいなんですけどね。何しろ、このままでも充分面白い映画なんですから。

監督はエンターテイメント職人の異名を持つ(かどうかは定かではない・笑)ジョエル・シューマカーで、ストーリーで楽しませつつ、要所要所でブラッカイマー的な迫力アクションを挟んできたりと、まさに職人芸的な監督技を披露しています。
アクションもコメディもサスペンスもバランスよく入っていて、さらにドラマ的な要素もちゃんと見せてくれます(特に、ジェイクの母ちゃんのエピソードがいいですね)。
ジェイクとオークス、二人のキャラがしっかり描けているし、主役達だけでなく、脇役にも味のある連中がいたりと、もうほぼ死角無しといった感じです。キャスティングに不満があったにも関わらず、見終わった後には「またこの面子で続編が見たい」と思ってしまうぐらいですからね。
さらに、アクションシーンで流れるイカしたトレバー・ラビンのスコアは、聞いてるだけで興奮してくるぐらい、場面を盛り上げています。
ああ、これで主役のキャスティングがちゃんとしていれば・・・(笑)。
そもそも、アクション映画なのに、主演の二人がアクションの出来ない人ですからね。クリス・ロックの方は、アクションシーンの間はキャーキャー言ってるだけですし(まあ、そういう役柄なんですが)、一方のホプキンスは先にも書いたように酷い有様・・・。
そんな中、仲間のCIA局員役のガブリエル・マクトが普通にアクションをこなしてる姿を最初に見た時は、「おお!何か凄いアクションをやってる奴が脇にいるぞ!?」とか思ったんですが、後に見直してみたらそうでもなかったという(笑)。きっと、相対的に凄く見えただけだったんでしょうね。ただ、少なくともこの映画の登場人物の中では最もアクションがサマになってる人物であった事に変わりはないんですけど。