殺しのベストセラー(テレビ放映タイトル 裏切りのベストセラー)
<BEST SELLER>
87年 アメリカ映画 95分

監督:ジョン・フリン
出演:ブライアン・デネヒー(デニス・ミッチャム)
   ジェームズ・ウッズ(クリーブ)
   ポール・シェナー(デビッド・マドロック)
   アリソン・バルソン(ホリー・ミッチャム)
   ビクトリア・テナント(ロベルタ)

(あらすじ)
警官でありながらベストセラー作家という二つの顔を持つ男デニス。だが、妻を病気で亡くして以来、すっかり書く気力が無くなり、もっぱら暴力刑事としてのみ活躍をしていた。
そんなデニスの前にクリーブという名の殺し屋が現われ、「自分の半生を書いてほしい」と言って来た。彼は、大物企業カッパ・インターナショナル社の創始者で社長のデビッド・マドロックに雇われていた殺し屋で、自分をあっさりクビにしたマドロックを破滅させてやりたいと思っているらしいのだ。
そして、マドロックの悪事の中には、デニスが作家をやり始めたきっかけである、15年前の証拠品保管庫襲撃事件も含まれているのだった。この事件で保管庫にいた警官数名が殉職し、デニスはその中でただ一人の生き残りだった。

クリーブの話が本当なら、大物企業家の影の悪事を暴くというとんでもないスクープとなり、ベストセラーとなる事は間違いない。それに、デニスは妻の医療費に大量の金をつぎ込んでいた為、生活が苦しくなってきているのだ。ベストセラーが欲しい事に間違いはなかった。
クリーブを信用しきれず半信半疑ながらも、本の為に、二人で、過去にクリーブがマドロックの依頼で殺しをやった現場に赴く。

だが、クリーブの裏切りを知ったマドロック側も殺し屋や弁護士といった刺客を二人に差し向けるのだった。

(感想)
警官兼作家と殺し屋という超異色コンビのサスペンスアクションです。
コンビと言っても、他のコンビ映画と違って、二人の間に信頼関係が築かれていくというような展開にはなりません。何しろ、警官と殺し屋ですからね。ただ、殺し屋のクリーブの方は、どうやらかなり警官のデニスの作家としての腕に惚れ込んでいるらしく、信用を得るために結構必死になっているようです。
そこまでして自分の半生を本にし、世間に自分の存在を知ってもらおうとするあたり、演じてるのがジェームズ・ウッズという事もあり、かなり危ない人物に見えます(見るからに神経質そうですし・笑)。
ですが、殺しの腕はかなりのもののようです。自分でも「自分が超一流の殺し屋だ」という自覚を持ちまくっていて、マドロックに雇われたザコ殺し屋を返り討ちにしては、「素人が」と吐き捨てるように言ったりします。
ですが、実家にはごく普通の家族が暮らしていて、しかも家族はクリーブが殺し屋をやってる事を知らないんです。

一方のデニスは、かなり立派な体格の奴で、動きはとろそうですが、見るからに強そうです。劇中、二人でバーで飲んでいた時、クリーブがケンカっ早そうな奴にからまれるというシーンがあるんですが、そいつはクリーブの連れであるデニスの姿を見ただけでビビッてましたからね。で、確かにそれだの迫力のある外見なんです(ただ、もしデニスを見てビビッてなければ、クリーブに殺されてたんでしょうが)。
クリーブはデニスに対し、必死に信用を得ようとするんですが、デニスの方は「自分は警官、相手は殺し屋」という事で、始終クリーブを警戒し、心を許すような事はしません。デニスは保管庫襲撃事件で腹に銃弾を食らいつつ、その相手の腹をナイフで刺していたんですが、実はその覆面犯人がクリーブであった事も判明します。
でも、デニスの書いている本の内容が、決してクリーブを最低の極悪人というふうに書いていない辺り、心の中では奇妙な友情のようなものも感じていたりしていたのかもしれませんね。

それにしても、もし私がデニスの立場なら、いきなり現われて「俺の事を書け」なんて言ってくる殺し屋は信用しないですけどね(笑)。なので、見ている時も、「もしかしたら何か裏があるんじゃないのか?」とか、「デニスを騙そうとしているんじゃないのか?」などかなり疑って見ていました。
標的の大物企業家も、実は本当は悪い奴ではなく、ただクリーブに恨みを買ってただけなのでは?とも考えてました。と言うのも、マドロックが具体的に悪い事をするシーンが最後になるまで出てこなかったからなんですよね。全部、クリーブの話でしか語られない事なんです。
でも、結局マドロックは人殺しの悪党である事が判明。どうやらクリーブが劇中でデニスに言ったセリフは、全て100%真実のようでした。
この辺の事を、変な回り道をしないで見ていたら、異色コンビ物としてもっとスッキリ楽しめたのかもしれなかったですね。何しろ、職業も外見も性格も全然違いますし、“強さ”と“カッコ良さ”のタイプもまた大きな違いがあります。まさに異色なこの二人のキャラクターの違いは見てて面白いものがありましたからね。