監督:ポール・グリーングラス
脚本:トニー・ギルロイ
ブライアン・ヘルゲランド
音楽:ジョン・パウエル
出演:マット・デイモン(ジェイソン・ボーン)
ジョーン・アレン(パメラ・ランディ)
ブライアン・コックス(アボット)
カール・アーバン(キリル)
ジュリア・スタイルズ(ニッキー)
フランカ・ポテンテ(マリー)
ある日、ついにボーン達の前に刺客が現れ、逃げる途中でマリーが撃たれて死んでしまう。ボーンは、なぜCIAが未だに刺客を送るような事をしているのかを探りにインドを離れる。
一方、CIA側はある事件の犯人として、“謎の男、ボーン”の正体を探ろうと調査を開始していた。ボーンもCIAも、ある人物の陰謀に巻き込まれているのだった。
(感想)
前作の一番の見所は「マット・デイモンがアクションに挑戦している」という所でしたが、二作目となる今回は、前作とは見所がガラリと変わってましたね。
まず、今回のマットは、もはや「アクションに挑戦している」というレベルでは無かったですね。表情から普段の立居振る舞い、アクションシーンでの動きなど、どれ一つとっても、それが“ジェイソン・ボーンの動き”になってるんです。もう、完全に役に同化してましたね。同時期に公開だった『オーシャンズ12』の時のマットとは、もう完全に別人ですね。大したものです。
ストーリーは、「恋人のマリーが殺される」という、衝撃的な事件から始まるんですが、そんな展開なのに、ストーリーが「復讐物」の方向に行かなかったのは驚きでした。何故かと言うと、ボーンの「追ってきた者は殺す」という考えを、マリーが改めさせてしまったからです。
復讐には走らないものの、逃げるというわけでもありません。「何故狙われる事になったのか」については徹底的に調べ上げようとしていきます。前作は敵から逃げながら戦ってましたが、今回は自分から向かって行く事となるんです。
一方、CIAチームも“謎の男、ボーン”の事を調査し始める事となります。CIAチームとボーン、共に、背後に潜む黒幕の陰謀について何も知らない状態からスタートするわけですが、単独行動(しかも追われる身)のボーンの方があっさりと「CIAの作戦本部を突き止める」という、有利な立場に立ってしまうんですよね。タイトルの“supremacy”という単語には“優位”といった意味もあるようですが、今回はまさに、ボーンの方が優位に立ってる展開でしたね。
今回、アクションシーンよりも、むしろ、こういったスパイ活動的な所の方に面白味があったような気がしましたね。その代わり、アクションシーンは、前作と比べるといくらか地味になったような印象です。前作は定期的に刺客が襲ってきたりと、割と派手でしたからね。クライマックスでは人間業ではないような奥義をボーンが見せてきましたし。
今回は、徹底的に“リアル”にこだわったようで、格闘シーンでの振り付けも、いわゆる“アクションシーンの振り付け”とは少々違うタイプのものになっていました。爽快感の無い、荒々しいファイトなんです。
前作のカリによる格闘シーンはスピーディで楽しいものだったんで、今回のアクションは最初に見た時はちょっと寂しかったりもしたんですが、アクションシーンだけでなく、全体的にリアリティにこだわっているので、「これは地味になったというわけではないんだな」と今では思えるようになりました。格闘シーンの最中、雑誌を丸めたものを武器として使うというのも、ジャッキーの小道具使いとは別の面で面白いものでした。
さて。今回、マリーが早々にいなくなった事で、ストーリーから恋愛関連の要素が無くなり、前作よりもかなり硬派な感じになりました。前作のストーリー展開も分かり易くて良かったですが、今回のストイックな内容もいいですね。前作とはまた違った面白さがあります。
監督も変わり、内容も変化しましたが、音楽担当も一緒なら、エンディングテーマも一緒という事で、シリーズのカラーはしっかり残しているのはいいですね。「シリーズ2作目」として最高の出来なんじゃないかと思うぐらいです。