チェーン・リアクション
<CHAIN REACTION>
96年 アメリカ映画 107分

監督・製作:アンドリュー・デイビス
音楽:ジェリー・ゴールドスミス
出演:キアヌ・リーブス(エディ・カサリヴィッチ)
   レイチェル・ワイズ(リリー・シンクレア)
   モーガン・フリーマン(ポール・シャノン)
   フレッド・ウォード(フォード捜査官)
   ブライアン・コックス(ライマン・コリアー)
   ケビン・ダン(ドイル捜査官)
   ニコラス・ルドール(バークレー教授)
   チー・マ(ルー・チェン教授)
   ジョアンナ・キャシディ(マギー・マクダーモット)

(あらすじ)
シカゴ大学のバークレー教授率いる科学プロジェクトチームが研究していた、石油や原子力に変わるクリーンで安価な新エネルギーが、研究チームのエディのおかげで完成した。
だがその晩、研究所が爆破され、バークレー教授が死亡、共同で研究をしていたチェン教授が行方不明となってしまった。
爆破の直前に偶然研究所に戻り、バークレー教授の死体を発見したエディは、警察に、教授が何者かに殺害されていた事を話すのだった。
だがエディは、研究仲間のリリーと共に、爆破事件の容疑者としての疑いをかけられるようになってしまう。
訳が分からないまま逃走をする二人を、FBIが追跡してくる。だが、二人を追っているのはFBIだけではないのだった。

(感想)
『逃亡者』のアンドリュー・デイビス監督が再びチャレンジした逃亡系サスペンス・アクション映画で、その内容も『逃亡者』に迫る面白さと緊迫感を持った傑作映画となっていました。
落ち着いてサスペンスを撮ってくる監督の演出もいいですし、ストーリーも面白い、配役もいい、音楽もいいと、個人的には特にこれといった欠点の見当たらない、素晴らしい映画だと思いますね。
どうやら一般的な評価は低い映画のようですが、『逃亡者』が全映画ベスト10に入るほど気に入っている私にとっては、似たような雰囲気の感じられるこの映画は最初に見た時から好印象でしたね。なので、初見が劇場ではなく、ビデオでの鑑賞だったのが惜しまれます。タイトルを『逃亡者2』にしてくれれば見に行ったかもしれないのに(そうなったらなったで、「全然違う内容じゃん!」と言い出す事になったと思いますが・笑)。

今回の主人公は殺人の容疑者として追われる事となるんですが、追ってくるのが連邦保安官からFBIに変わり、事件もただの殺人事件ではなく、背後に大きな陰謀の関わる規模のデカいものにバージョンアップされました。
ですが、逃げる主人公と追うFBIの追いかけっこの他に、事件の背後にどんな陰謀があるのかが暴かれていく様が描かれて行くこととなります。そして、FBIの追跡者よりも、陰謀の黒幕である謎の組織に属するモーガン・フリーマン演じる謎の男の方がより大きい役になっています。
なので、雰囲気は『逃亡者』に似てるものの、面白さの種類はまた別物でしたね。私の場合、背後に巨大な陰謀が関わるようなストーリーが出て来ると、大抵は途中でついていけなくなるんですが、この映画はかなり分かり易かったです。豚でも理解できるような親切な脚本になっているようで、このストーリーの分かり易さもこの映画の魅力の一つだと思います。

主人公を演じるのは、当時『スピード』のヒットで大ブレイクしていたキアヌ・リーブスですが、『スピード』のキアヌを想像していた多くの方は、この映画の「むさ苦しい長髪&やや太った体型」のキアヌにガッカリしたようですね。
ですが、私はこの映画のキアヌの外見はいいと思いますね。役作りとしては完璧だと思います。今回は『スピード』の時のようなアクションヒーローという役柄ではなく、機械いじりが大好きな科学オタクという役柄です。あの体型や衣装、髪形に至るまでに感じられるオタク臭い外見は、この役柄に完全に見合ったものなんじゃないだろうか。
ですが、ただのオタクではなく、かなり行動的なオタクです。サスペンス・アクションの主人公としては、かなり新しいキャラクターだったんじゃないかと思いますね。それに、この「行動的なオタク」いうキャラクターは、後の『マトリックス』のネオ役にも引き継がれてるような気がします。
そんなキアヌを追いかけるFBIのフォード捜査官を演じるのは、『トレマーズ』でお馴染みのフレッド・ウォードです。フォードもなかなか頭の切れるいい捜査官なんですが、活躍の場面はほとんどありません。ついでに言うと、出番もあまり多くありません。『逃亡者』のジェラード役と比べると重要度の低い役なので、見終わった後に印象に残りづらい、不遇のキャラのような気がしますね。
その代わりにスポットライトが当たっているのが、モーガン・フリーマン演じる謎の男シャノンです。映画がかなり進むまで敵なのか味方なのかがよく分からないという、実に怪しい男で、まさにこの映画のストーリーのキーマンといった感じですね。で、もはや言うまでもない事ですが、演じるモーガンの雰囲気とか佇まいが実にいいです。確実に映画のグレードを高めてくれてましたね。
ヒロイン役は、『ハムナプトラ2』以来マッチョ化の傾向が著しいレイチェル・ワイズですが、この頃は見てて守ってあげたくなるような、か弱い感じのする可愛らしい女性、といった雰囲気でした。
役柄のせいか演じる本人の雰囲気のせいか、「勉強一筋なお嬢様」といった感じのキャラクターで、見るからに陰謀とは縁が無さそうな感じです。それなのに訳の分からない陰謀に巻き込まれてしまった、というのが気の毒に思えてくるぐらいですね。これはキアヌ演じる主人公のエディも同様です。追っ手と戦うよりも機械をいじってる時の方がはるかに楽しそうでしたからね(笑)。
そして、こういう、事件に巻き込まれるのが似合わない二人が必死に逃げ回るという姿は、サスペンス映画的には凄く面白いし魅力的です。あと、この二人にキスシーンが無いというのも、二人のキャラクターをよく表してると思いますね。お互いに、あんまり異性との付き合いが無さそうな感じですし(笑)。
ちなみに、これも勝手な想像なんですが、エディが各局面で見事な逃走技術を見せてくるのは、映画や小説で得た知識を活用してるんじゃないかとか思うんですよね。いや、何かスパイ物の映画とか陰謀物のサスペンス映画とか、好んで見てそうな雰囲気が感じられたんですよね(笑)。