コブラ
<COBRA>
86年 アメリカ映画 85分

監督:ジョージ・P・コスマトス
製作:メナハム・ゴーラン
   ヨーラン・グローバス
脚本:シルベスター・スタローン
出演:シルベスター・スタローン(マリオン・コブレッティ)
   ブリジット・ニールセン(イングリッド・ヌードセン)
   レニー・サントーニ(ゴンザレス刑事)
   アンドリュー・ロビンソン(モンテ刑事)
   ブライアン・トンプソン(ナイトスラッシャー)

(あらすじ)
ストッキングを被り、斧をチリンチリン鳴らす怪しげな集団が、夜な夜な通行人を惨殺する事件が勃発。神出鬼没の犯人にロス市警も頭を悩ますばかり。
そんな折、例の集団に襲われた女性を警察が保護。犯人の顔を目撃していたその女性の警護に、グラサンの似合うイカした刑事“コブラ”が当たる事となった。
証人を消そうと、敵集団が次々と襲い掛かってくるが、コブラは自慢の改造カーやマイ・マシンガンで難なく撃退していくのだった。

(感想)
もう、見るからに「アクションヒーロー以外の何者でもない!」といった感じの外見のバイオレンス・スーパー・コップが、悪い奴を退治するという内容のアクション映画です。しかも90分以下という、気軽に見られる上映時間!
それはいいんですが、全盛期のスーパー・アクション・スターが出る映画としてはちょっと弱いような気もしないでもない(笑)。
まず、“大作感”というのがほとんど無いですし、ストーリー展開もあまりにストレート過ぎです。敵軍団が“唯一の目撃者”を消そうと必死で襲ってくるわけですけど、主人公がただそれを撃退していくだけという内容ですからね。あと、敵がその「証人を消す」という行動をするに当たって、かな〜り派手に動いてるんですよね。その姿をまた誰かに目撃されたらどうするつもりなんでしょう(笑)。
ストーリーがそんなでも、アクションシーンに迫力があれば何の問題もありません。ですがこの映画のアクションシーン、今見ると迫力に欠ける印象があるんですよね。
まず、銃撃戦のシーンにおいて、撃たれた側の“着弾演出(撃たれた箇所から血が飛び出すだとか)”というのがほとんど無いんですよね。「銃を撃つスタローン」「撃たれた演技をしてる敵役」という二つの映像をただそのまま繋いでるだけなんです。
爆破シーンも、「ただ物が爆発している映像を映しただけ」という感じで、どうもアクションシーンの迫力と興奮を高めるという役割を期待ほど果たしていないような雰囲気です。全体的に“臨場感”というものに欠けてるアクションシーンになってるんですよね。

という、内容的には悪い意味でB級映画的なこの映画ですが、見てみると、『ダイハード』等の名実共に傑作アクションと比べても決して引けを取らないものになっているんです。
それは何故かと言うと、主人公コブラのキャラクター造形が見事な事と、演じるスタローンのスター・パワーですね。特に後者は、何しろ『ロッキー4』『ランボー2』の次という、スタローンが最も光り輝いていた時期ですからね。そのスター・オーラはもう圧倒的です。コブラの初登場シーンなんて、あまりのスタローンのスター・パワーに、テレビのモニターが悲鳴を上げかかってましたからね(いや、それは気のせいかもしれないですが・笑)。

あと、このコブレッティというキャラクター自体もとてもいいですね。確かに、その見た目から態度、性格付けなんかも「みんながイメージするスーパー・バイオレンス・コップ」をそのまま形にしたようなものです。「個性が無い」とか「捻りが無い」と言われればそれまでです。
ですが、私はこのストレートなヒーロー像はすごく好きですね。見るからにヒーローな人が、スーパーに押し入った狂人を撃ち殺したりする様なんて、最高じゃないですか。見ててスカっとしますね。あと、イキがってるだけの若者のシャツを破いてやったりだとか(笑)。
そして、こんな見るからにヒーローな人の自宅の様子が垣間見られるというのもこの映画の魅力だと思います。何だか、あまり私生活を感じさせないような外見なんですが、自宅の内部を映したりだとか、おやつを食べる様子、ホームワークに勤しむ様子なんかが描かれる場面が出て来るんです。
で、これがまた、結構いい家に住んでるんですよね。もうちょっと荒んだ感じの部屋に住んでそうなイメージなんですが、家具は白を基調とした爽やかな感じのもので、窓から見える景色もいいです。同じくスーパー・バイオレンス・コップのカテゴリーにいる、『リーサル・ウェポン』のリッグスの住まいとは大分違いますね。
でも、この見た目とギャップがある所が、逆にキャラクターに深みを感じさせてくれますね。「コブラさんはどういう理由でこの家とか家具類とかを選んだんだろう」という事をつい考えてしまいます。
ギャップと言えば、本名が“マリオン”というのも凄いですね。それとか、同僚が言うには「いまだに50年代を生きてる」らしいところとか、キャラクターの魅力を描写する場面が結構出て来るんですよね。
そういった面だけでなく、コブラはアクション・ヒーローなんですから、アクションシーンが始まったらそれはもう、目の覚めるような大活躍を見せてくれるわけです。演出に凝った所が無くとも、スタローンの動き自体が立派な“アクションの見せ場”になってるんですよね。

このように、この“コブラ”というキャラクター、演じるスタローンの魅力と相まって、とんでもなく魅力的に見えるんですが(少なくとも私には・笑)、対する事件がちょっと役不足的なのが気になるところですね。敵のボスは“シュワもどき”ですし。
この辺も、パワーアップした続編が作られてくれれば解決なんですけどねぇ。