監督:ジョセフ・ラスナック
出演:ウェズリー・スナイプス(ジェームス・J・ダイヤル)
イライザ・ベネット(エミリー・デイ)
レナ・ヘディ(アネット・バラード警部)
ラルフ・ブラウン(ジェレミー・コリンズ)
チャールズ・ダンス(ウィンザー警視正)
ジェマ・ジョーンズ(ミセス・デイ)
ライン・ロバートソン(クラムストン刑事)
リチャード・ハリントン(テリー・ウィンチェル)
(感想)
スナイプスが暗殺者を演じている、サスペンス・アクション映画です。でも、そう聞いて想像するような内容ではなかったですね。わざわざアクションスターを主演に据えているんですから、そのアクションスキルを活かした演出の暗殺シーンが出てきたり、銃撃シーンから格闘シーン、カーチェイスまで出てくるような一品になってると思うじゃないですか。
ですが、スナイプスがアサシンとしての仕事をするのも、最初の方に一回あるだけですし、後も大したアクションシーンは出てきません。完全にストーリー展開の方がメインで、アクションは添え物程度の扱いでしかなかったんですよね。
で、その肝心のストーリーですが、とりたてて面白いという事はなかったんですけど、でも、何とも言えない魅力がある、といった感じでして、映画自体はアクションがほとんど無かったにも関わらず、結構楽しんで見る事が出来ましたね。
実は、この映画のストーリーで一番大きなウエイトを占めているのが、「スナイプスと14歳の少女の交流」というものなんです。で、これが、何かいいんですよね。
まず、この少女がどうしてこんなにスナイプスに関心を持ったのかというのがよく分からなくて、少々、この二人の関係には不自然な雰囲気が漂っているんですけど、でも、若い子に、無条件でなつかれる、というのは実に楽しそうじゃないですか。しかも、少し前に両親を事故で亡くしていて、そのショックと寂しさをまだ引きずっているという、可哀想な子なんです。何だか、こっちも「かまってあげたい」という気になってきます。
外見の方も可愛らしくて、スレてるような感じも無く、「あるいは、裏で何か企んでいるのでは」なんて雰囲気は微塵も感じられません。そんな子が興味を持って近づいてきたものだから、さすがの暗殺者スナイプスも心を許してしまいます。でも、この後、恋愛感情に発展したりだとか、事件に巻き込まれていったりなど、ストーリーを大きく動かすような方向には全く向かいません。
結局、「友達同士」もしくは、「今まで会う機会が無かった親戚同士」みたいな関係のままなんですけど、このドロ臭くない、爽やかな感じがまたいいんですよね。
さて。このハートフルな面以外に、スナイプスが警察や組織に追われるという、サスペンスストーリーも描写されてくるわけですが、その、スナイプスを追っている敵の黒幕が、何故にスナイプスを追っているのかがよく分からなかったんですよね。
その黒幕は、最初にスナイプスに暗殺の指令を出した奴なんですが、それが元々スナイプスをハメるための罠だったのかな、と思ったんですが、それらしい場面もセリフも無かったような気がします。
もう一つ考えられるのは、“モスクワ・ルール”という、「任務に失敗したら殺す」的なローカル・ルールが語られる場面があったんですが、もしかしたら、それで追ってきているのかな、と。でも、別にスナイプスは失敗したわけではないんですよねぇ。逃げるのに手間取っただけで。
敵が何を考えてるのか、よく意味が分からなかったんで、サスペンス面にはあまりのめり込んで見られませんでした。ここで、合間に派手なアクションが入ってきたりしていたら、敵との攻防の面で面白味を感じられたと思うんですが、ほんと、オマケ程度のアクションばかりでしたからね(ただ、一瞬出てきた格闘アクションシーンは、「さすがスナイプス!」と思うような見事な動きでした)。
でも、その派手さが無いという所が、スナイプスと少女の交流のパートを浮かび上がらせているともとれるわけで、半端にアクションがメインの映画よりはむしろ楽しめたのかもなんて事を思ってしまいますね。