監督:トニー・スコット
製作:ドン・シンプソン
ジェリー・ブラッカイマー
音楽:ハンス・ジマー
出演:デンゼル・ワシントン(ハンター副長)
ジーン・ハックマン(ラムジー艦長)
マット・クレイブン(ジマー)
ヴィゴ・モーテンセン(ウェップス)
ジョージ・ズンザ(ボート)
ジェームズ・ガンドルフィーニ(ボビー)
ダニー・ヌッチ(リベッティ)
ジェイミー・ゴメス(マホーニー)
ロッキー・キャロル(ウェスタガート)
マイケル・ミルホアン(ハンシカー)
航行中、反乱軍が核ミサイル発射のコードを解析した為、アラバマに核ミサイルでの先制攻撃を行う命令が下る。
だが、その後、新たな命令が送られてくるが、受信機の故障により命令文が途中で途切れてしまっていたのだ。ハンターは「核ミサイル発射の中止命令かもしれない」という事で、ラムジーにミサイル発射を中止するように言うが、ムラジーは聞こうとしないのだった。
もし、新たな命令が「発射中止」なら、アメリカが第3次世界大戦の勃発を招く事になってしまうが、そうでないのなら、ロシアからアメリカと日本に核ミサイルが発射されるのを阻止できなくなってしまうのだ。
こうして、アラバマ全艦を巻き込んだ、壮絶な「艦長VS副長」のバトルが巻き起こるのだった。
(感想)
「潜水艦映画に外れ無し」とよく言われますが、このジャンルをあまり見てない私にはピンと来ない言葉です。ですが、この映画はまさに紛れも無い傑作娯楽映画ですね。他の同ジャンルの映画もこれほどの面白さがあるのなら進んで追いかけたい所ですが、生憎、今まで私が見た潜水艦映画の中で、この映画以上の面白さを持ったものには出会えてません。
ただ、私はこの傑作映画をかなり遅れて見る事となってしまいました。潜水艦という、閉塞空間で行われる緊迫したドラマが面白いが為に「潜水艦映画に外れ無し」なんて事が言われるようになったのだと思うのですが、「狭い空間でドラマが繰り広げられるなんて地味に決まってる」と思ってずっと見ようとしなかったんですよねぇ。アホですねぇ。
で、何かの機会で見てみたら、もうそれは凄い緊迫したやりとりが繰り広げられているじゃないですか。地味どころか、もはや瞬きする暇も無いほどの熱い展開に、見終わった後はもう疲れてグッタリしてしまいましたね。
核ミサイルを発射するかどうかで揉めるというストーリーですが、あの状況なら、「発射しない」というのがどう考えても普通の事のように思えます。なので、発射を主張するハックマンが悪役のように私には思えるのですが、軍の法律によれば「双方とも正しいとも言え、間違っていたとも言える」という事になるんだそうで。何か、そんなアホな話があっていいのかという気がするんですけどね。
だいたい、「発射しろ」という命令の後にまた指令が来たというのなら、それはもう「中止」か「目標変更」以外にあり得ないと思うんですよね。軍に詳しい人なら、他の可能性も考えられるんだろうか。なので、新たな指令を「意味をなさないから無視」とか言ってるラムジー艦長がアホにしか見えないです。
でも、そんなアホでもハックマンが演じると説得力が出て来るから不思議。これが名優の力なんでしょうかね。「この人に逆らったらエラい目に遭わされる」と思ってしまうほどの迫力(と、殺気・笑)、「信頼のおける上官」という雰囲気が全身から漲っているんですよね。私もあの場にいたら「どっちが正しいんだろう」と迷ってしまいそうです。
そして、そのハックマン艦長に逆らうのが、我らがデンゼル副長ことハンターです。どうも、ほとんどの乗員は核攻撃の恐ろしさをあまり理解していないような雰囲気でしたが(「強力なミサイル」程度の認識なのでしょうね)、その“核”の恐ろしさを艦内で唯一知っていたのがハンター副長だったようです。
ただ、核の恐ろしさを知っていても、相手がただの艦長ではなく、魔人ハックマンとなると(何で魔人なんだ・笑)、なかなか逆らうのも難しい事と思います。ですが、このハンター副長は、自分の行動が正当であるというきちんとした信念を持って、どんな相手だろうとぶつかっていけるガッツを持っているのです。
いやぁ、もしアラバマにハンターが乗っていなかったら、世界はどうなっていたんだろうと恐ろしくなってきますね。
そして、「もし発射してしまったら」という恐怖感がこの映画のストーリーに緊迫感を与えているんですよね。「どっちが正しいんだろう」というジレンマではなくて、「何としてもミサイル発射は阻止しなくてはならない」というストーリーなんです。でも、融通の利かない頑固親父が発射を強行しようとする。このせめぎ合いが、名優二人による超熱い演技合戦によって、それは見応えのある緊迫感を出してくれるわけですよ。
監督のトニー・スコットの演出も無駄が無くていいですし、ハンス・ジマーのスコアも「ジマー、フルパワーだ!」とかわけの分からない事を思ってしまうぐらいの最高の曲です。ラストで、本当の指令が「ミサイル発射中止」だった事が分かる場面も、普通なら「当たり前じゃん」と思うような所なのに、ギリギリの裁判で勝訴が決まった時のような昂揚感があるのは、ジマーの熱いスコアが背景で鳴ってるせいに違いないと思いますね。