監督:アルバート・ピュン
製作:メナハム・ゴーラン
ヨーラン・グローバス
出演:ジャン=クロード・ヴァン・ダム(ギブソン・リッケンバッカー)
デボラ・リクター(ナディ・シモンズ)
デイル・ハドソン(パール・プロフェット)
ヴィンセント・クライン(フェンダー)
(感想)
ヴァン・ダムが初めて悪役から主演に昇格した記念すべき映画です。
『マッド・マックス』風味な世界で、一匹狼の戦士が敵の武闘派集団を追う、というストーリーで、途中、ブサイクなヒロインが合流して一緒に旅をする事となります。
このメインストーリーに、「何故主人公は敵を追っているのか」というのが語られる回想シーンが時々出てきたりします。
一方、タイトルにもなってるサイボーグは、ほとんど出番が無く、ストーリーにもあんまり絡みません。もはや、何でタイトルが『サイボーグ』なのか不明なほどの脇役っぷりです(笑)。
普通は、この女サイボーグがヒロイン的立場になってもおかしくないと思うんですが、なんでこんなストーリーになったんでしょうかね。まあ、この映画は「若くて瑞々しいヴァン・ダムの姿を見る」為だけに存在してるようなものなので、どうでもいいと言えばどうでもいいような点ではありますけどね。
で、その肝心のヴァン・ダムですが、まあとにかく若いです。当たり前ですが(笑)。そして、精悍で整った顔立ちはまさにイケメン。初主演作で頑張っている様は実に清々しいものが感じられますね。
華麗でしなやかな格闘アクションに、脅威の開脚を披露と、もう見るからに「今後に期待の持てるアクションスター」といった雰囲気満開です。
アクションシーンの演出はかなりスローで、正直、ほとんど迫力が無いんですけど、ヴァン・ダムの動きがあまりに華麗なので見応えはありましたね。
ザコ敵との戦い方から、ヴァン・ダム演じる主人公がかなり強い男である事が窺えます。ですが、ストーリーの都合上、終盤で敵にやられてしまうという展開になります。こういう場合、「あんなに強い男が何故やられるんだ」と見てて疑問に思う事もしばしばありますが、この映画のヴァン・ダムの場合、そのアクション演技から“試合の流れが敵側に傾いてる”みたいな雰囲気が醸し出されているのが感じられるんです。
今までザコを倒してきた必殺の回し蹴りも、今の状況で出しても通用しない、と言うか失敗しそうな感じが見ててするんですよね。なので、こういう「アクションヒーローがやられる場面」にありがちな「ストーリーの都合上、負けてあげてる」という感覚が無いんですよね。むしろ「今は我慢の時だ」とか思えるんです。
まあ、監督の演出とか、ヴァン・ダムの演技プランと言うより、「たまたまそう見えただけ」という気は凄くするんですが(笑)、たまたまでもそう見えたのならそれも本人の実力の内に入れてもいいに違いない。要するに「ヴァン・ダムのアクション演技力は凄え!」という事ですよ。誰が何と言おうと!(何ムキになってる・笑)
で、そんな凄いヴァン・ダムと最後に戦う敵のボスですが、こちらも何か凄い事になってましたね。もう、戦ってる最中、常に「あ゛あ゛〜〜!」とか「お゛お゛〜〜!」とか、不気味な唸り声を上げてるんですよ。しかも上半身裸でムキムキしながら威嚇するようなポーズで歩いてきたりするんですよ。そのあまりに人外な戦闘スタイルは、見てて「この人は本当に人間なんだろうか」と思ってしまうぐらいです。むしろコイツがサイボーグという設定でも良かったんじゃないのか。
このボスも凄いですが、配下の連中もみんな濃い方々が集まってましたね。『マッド・マックス2』と違って衣装にはあまり凝った所が見られないんですが、「狂いっぷり」は負けてませんでした(こちらは製作費や美術関連のスタッフの質とか関係無くやれますからね・笑)。マンホールに逃げこんだヴァン・ダムを追いかけるのに、こんな狂った連中が次々とマンホールに飛び込んでいく様は実に異様な光景でしたね。その後の、水辺での追いかけっこも、「追ってきてるのが狂人」という事で妙な迫力が出ていました。
序盤からヴァン・ダムの後をくっ付いてきては、足手まといになっていた邪魔なヒロインというキャラがこの映画にはいるんですが、このヒロインを演じてる方がまたブサイクで困ってしまいましたね。ブサイクなうえに足手まとい。しかも、海に着くやいなや「もう我慢出来ん!」と言わんばかりに服を脱ぎ出し、全裸で海に向かって疾走するという露出狂の気がある人物ですよ。それでいてラストにあっさり死ぬ辺りもなんだかなぁと思わずにはいられませんね(ちょっと気の毒でしたけど・笑)。
また、主人公の妻(それとも、まだ恋人だったか)の連れ子が、なぜか敵の一味に加わっていたんですが、ラスト、ヴァン・ダムはこの元連れ子(回想シーンでは少女でしたが、ブサイクヒロインと同じぐらいの歳になってました。あの回想シーンから現在までそんなに月日が経ってたんですね)と共に去っていく、というラストシーンとなります。最後の最後でヒロイン交代ですか。
ちなみに、続編もありそうな終わり方でしたが、結局、続編はアンジェリーナ・ジョリー主演の、今作とほとんど関連の無い映画になっていましたね。