監督:ロン・シェルトン
原作:ジェームズ・エルロイ
出演:カート・ラッセル(エルトン・ペリー)
スコット・スピードマン(ボビー・キーオフ)
マイケル・ミシェル(ベス・ウィリアムソン)
ブレンダン・グリーソン(ジャック)
ビング・レイムズ(アーサー・ホーランド)
クルプト(ダリル・オーチャード)
ダッシュ・ミホク(ゲイリー・シドウェル)
ジョナサン・バンクス(ジェームズ)
ロリータ・ダビドビッチ(サリー・ペリー)
カンディ・アレクサンダー(ジャネル・ホーランド)
(感想)
実際の事件である、ロドニー・キング暴行事件から始まったロス暴動を背景に、警察の腐敗を鋭く抉った社会派サスペンス・アクションの傑作です。ちなみに原作は『LAコンフィデンシャル』のジェームズ・エルロイ。
さてこの映画。カート・ラッセル主演最新作でありながら、日本ではビデオスルーとなってしまいました。この映画が劇場公開を飛ばして一気にビデオ化されるという情報を知った時はガッカリしたものでしたね。何しろ、私の好きなスターであるスタローンの主演作が劇場公開とビデオスルーの間を揺れ動いているという状況なので、「あのカート・ラッセルの新作がビデオ・スルーになった」というのは、悪い予感をさらに増幅させてくれる、まさにバッド・ニュースでした。
そんな背景の映画ですが、その出来は素晴らしいものでした。確かに、大ヒットはしなさそうな内容の映画ではありますが、未公開扱いにするほどウケが悪いとも思えないんですがねぇ・・・。
警察の腐敗を描いた映画と言えば、原作が同じジェームズ・エルロイの『LAコンフィデンシャル』に、他にも『コップランド』や『トレーニング・デイ』といった映画がありますが、これらの映画に匹敵する面白さを持った映画だと思います。
特に、最終的に主人公が一人で腐敗刑事を告発するという、反旗を翻す行動に出る辺りは、『コップランド』を思わせますね。ただ、「主人公が長年、その片棒を担いでいる汚職刑事だ」という違いはありますが。あの映画に置き換えると、ロバート・パトリック辺りの立場が、この映画の主人公エルトンの立場と似てるかもしれないですね。
ですが、こちらはさすがに主人公だけあって、ただの腐れ刑事ではありません。捜査の仕方はかなり強引ですが、スーパーの強盗殺人事件の犯人をあっさり見つけてしまったように、刑事としての腕は超一流のようですし、裏で賄賂を貰っていたりといったケチな真似をしてるわけでもありません。正義感に溢れた刑事同様、悪を憎む気持ちは人一倍あるんです。その“悪”とは、強盗、殺人を平気でやるような極悪人達の事を指します。
で、「そんな奴らを挙げる(または殺す)のにはちょっとぐらい汚い事をするのは当たり前だ」という考えを持っているんです。
そう思うと、エルトンのやってる事がそんなに悪い事には思えなくなってしまいます。スーパー強盗殺人事件では、全然関係無い奴を殺して逮捕するんですが、こいつらも結局、死んで当然な極悪人なわけですからね。
でも、「悪い奴だから殺そうが罪を着せようが何をしてもいい」というような、法や倫理を遵守しない体質が警察にあった為に、ロドニー・キング事件(黒人だという理由で、警察に過剰に暴力を振るわれた)のようなものが起こった、という雰囲気が映画から感じられるんですよね。
結局最後は、エルトンは自分が逮捕されるのを覚悟の上で、腐敗の元凶とも言うべき上司の告発に踏み切ります。そして、そんなエルトン=カート・ラッセルの姿がまたエラくカッコ良く見えたものでした。