監督・製作:レニー・ハーリン
脚本・製作:シルベスター・スタローン
音楽:BT
出演:シルベスター・スタローン(ジョー・タント)
キップ・パルデュー(ジミー・ブライ)
ティル・シュワイガー(ボー・ブランデンバーグ)
バート・レイノルズ(カール・ヘンリー)
エステラ・ウォーレン(ソフィア・サイモン)
ジーナ・ガーション(キャシー・モレノ)
ステイシー・エドワーズ(ルクレシア・ジョーンズ)
ロバート・ショーン・レナード(デミル・ブライ)
クリスチャン・デ・ラ・フュエンテ(メモ・モレノ)
(感想)
最初に映画館で見た時は、スタローンの脚本とレニー・ハーリンのアクション演出がうまく噛み合ってないような印象があったんですが(アクションとドラマのどっちつかずみたいな)、何回か見ていくうちに「これはこれでいいんだ」と思えるようになってきましたね。
アクションメインだったら内容の薄い映画になってしまいますし、人間ドラマに重点が置かれた映画だったら、題材が映画界ではあまりとりあげられないタイプのものだけに、どこか地味な印象になりかねない。
なので、この二つの要素をミックスした今の形になったのでしょう。
ストーリーは、若き天才ドライバーの苦悩と、復活にかけるベテランドライバーのドラマが描かれるんですが、これに、周囲の人々のドラマもさらりとですが描かれていきます。
登場人物が結構多いんですが、キャラクターをよく描いているので、話に厚みがあるような感じがありますね。その人がどういう性格の人物なのかが見てて容易に想像できるんです。この辺は、さすがスタローンが脚本書いてるだけのことはあるなと思ってしまいますね。こういう、エンターテイメント映画のキャラクターの性格付けとかが凄くうまいですからね。
ですが、この登場人物の多さの為、初見時はちょっと混乱するかもしれないですけどね。でも、派手なレースシーンを見てるだけでも楽しい映画なので、まあ問題無いでしょう。ここは、監督がアクション派のハーリンであった事が効いてました。
あと、この多彩な登場人物の中に“悪役”と呼べるものが存在しない、というのは、他の映画ではあまり見られない点です。ライバルや、主人公と見解の違う人はいますが、決して“悪役”ではないんです。
それプラス、劇中で誰一人として死なないというのも他の映画ではあまり見られない要素です。
この2点のおかげで、映画全体にどことなく爽やかで清々しい感じがありますね。
「死と暴力が無くても、こんな大迫力なエンターテイメント映画が作れる」事を示したというのは、ある意味快挙と言ってもいいんじゃないでしょうか。
アクション面に関してですが、これまでもレース映画は細々と作られてきましたが、後発という事で、レースシーンの映像にCGを多用したりと、かなり凝った作りになっています。
クラッシュシーンではまさにハーリンの本領発揮といった感じで、車が宙を舞うわ、大爆破をするわの大騒ぎです。特に、大爆破のシーンは、“爆破王ハーリン”のこだわりが感じられていいですね。普通の監督ならあんなシーンは入れないでしょう(笑)。
また、事故った仲間を、レースを捨ててまで救出に行くとか、突如始まる、公道でのカートチェイスなど、映画にリアルさを求める人にとってはツラいシーンを、“あくまでもレーサーのドラマを描いた映画”に敢えて入れてきてる辺りは、これはハーリンとスタローンの観客へのサービス以外の何物でもないととらなきゃダメな所だと思います。
ただ、この辺が「アクションとドラマが噛み合ってない」と感じてしまう部分でもあるんですけどね・・・。
いずれにせよ、クライマックスで最高の盛り上がりをみせ、絵に描いたようなハッピーエンドで映画は終わるので、見終わってしばらくはそんなささいな欠点には気付かないぐらいです。
ほんと、終盤のレースシーンの迫力は凄いぐらいですから。それも、これまで描いてきたドラマがあってこその盛り上がりなので、ここだけを見ても表面しか面白さが分からないでしょうね。
ドラマが表面だけのものじゃないので何度見ても面白いし、万人にも勧められるという、まさに“良質のエンターテイメント映画”ですね。