F.R.A.T./戦慄の武装警察
<EDISON>
05年 アメリカ映画 99分

監督:デビッド・J・バーク
出演:ジャスティン・ティンバーレイク(ジョシュ・ポラック)
   LL・クール・J(レイフ・ディード)
   モーガン・フリーマン(モーゼス・アシュフォード)
   ケビン・スペイシー(ウォレス)
   ディラン・マクダーモット(ラザロフ)
   ジョン・ハート(ティルマン)
   ケアリー・エルウェス(リゲルト)
   パイパー・ペラーボ(ウィロー)
   ロザリン・サンチェス(マリア)

(ストーリー)
かつて、犯罪のはびこる荒廃した都市だったエジソンは、武装警察フラットの活躍で平和で活気のある都市へと変貌していた。だが、困った事に、フラットは汚職警官で構成された略奪部隊でもあったのだ。そして、町の腐敗は警察だけでなく、さらに上の方まで広がっているのだった。
そんな折、記事のネタを探していた一人の新米ジャーナリストが、フラットの仕事の裏に何かがありそうな事を嗅ぎ付け、調査を始める。そしてそこから、エジソンを揺るがす大事件へと発展していくのだった。

(感想)
豪華キャストでおくる、汚職警官物のサスペンス・アクションです。
“フラット”という、スワットのバッタ物みたいな武装警察が組織されているんですが、これが、裏で犯罪者から押収した金品やら麻薬やらを盗んだりしてる悪徳警察軍団なんです。
「警察の中に、何人か汚職に手を染めてる奴がいる」というレベルではなく、もう、組織を上で束ねてるボスが犯罪行為の命令を下してるんですよね。要するに、“国家権力を持ったギャング”みたいな連中なわけですよ。
ただ、確かにコイツらは私腹を肥やしてるわけなんですけど、それは、市民から血税を毟り取ってるわけではなく、逮捕した悪党連中から戦利品を頂戴してるわけなんで、「もし自分がエジソン市民だったとしたら」と考えた場合、「放っておいてもいいのでは」なんて事を考えてしまいます。
ですが、「倫理にもとる行い」である事は間違いありません。それに、秘密を嗅ぎ付けようとしてる市民を暴行したり、たまたま悪事に手を染めてしまったような人までも平気で殺したりとかする辺りは、やはり許せない行為ですからね。
で、そんな悪徳警察軍団を相手にするのが、若きジャーナリストとその協力者、そして、フラットの一員でありながら、その行動に疑問を持ち、善悪の間で揺れ動いているマッチョです。ちなみに、この“マッチョ”とはもちろん、LL・クール・Jの事です。『SWAT』や『マインドハンター』で“筋肉担当”として活躍していたこの男。今回も自慢の筋肉で大暴れをする場面が出てきたりします。
他にも、モーガン・フリーマンとケビン・スペイシーというビッグネームがキャストに名を連ねていますが、この二人は主人公のサポート的な役割で登場する事となります。モーガンは、主人公の勤める新聞社のボスですが、その出してる新聞というのが、いわゆる情報誌的なもので、本来は大事件を扱うような所ではないんです。なので、最初は主人公の調査にも反対という立場をとっていたのですが、何しろ、演じてるのがモーガン・フリーマンという事で、「過去にピューリッツァー賞を獲っている、スーパージャーナリスト」という裏の顔を持っていたりします。ただの老人ではないんです。
このモーガン演じるアシュフォードは、脇役なんですけど、面白いキャラでしたね。普段はお得なクーポン券満載の情報誌を作っているただの老人なのに、もし、誰も手を付けてない(あるいは、手が付けられない)大事件に気付いたら、例えそれが、普通は目を瞑ってやり過ごすのが賢明な事件であろうと行動に移るわけですよ。眠っていたジャーナリスト魂が燃え出したかのように。何か、カッコいい老人だなとか思いますね。
で、一方の主人公、ジョシュ・ポラックは、ピューリッツァー賞を狙う若き熱血ジャーナリストなのですが、基本的に、怖い目には遭いたくないと思っていて、「自分の行動がどういう結果を招くのか」というのをあまり考えていない、ただ若さで突っ走ってるだけというヤツなんです。ですが、事件を追う、と言うか、関わっていくうちに大分頼もしくなっていく事となります。何しろ、元スーパージャーナリストのモーガン・フリーマンが師匠みたいな感じでサポートしているんですからね。
そして、もう一人のビッグネーム、ケビン・スペイシーは、内務調査官みたいな感じの役職の人で、悪いことをやってる警官にとっては「顔を見ただけで腹が立つ」という恐るべき存在です。『コップランド』のデ・ニーロみたいな感じのキャラですかね。こちらも、モーガンと同等かそれ以上の脇役なんですけど、その少ない登場シーンでも存在感をしっかり残していましたね。ベテランの凄味とでも言うのか、立ち居振る舞いに迫力があります。

“犯罪組織が敵”という映画は色々ありますが、こういう、ジャーナリストが主人公の映画というのは、刑事が主役の映画とはまた違った面白さがありますね。それに、ここまで敵が巨大になると、むしろジャーナリストの方が効果的な攻撃が出来るのかなとも思います。刑事が敵のボスを逮捕しても、裁判所も腐敗してたりするんで、あっさり無罪になったりとかしそうですからね。でも、世論を味方につけたジャーナリストが相手だとそう簡単に済ます事は出来ないような気がします(でも、結局最後は“筋肉担当”が大暴れして、全てを破壊して終わりみたいな感じなんですけど・笑)。
敵は強大ですけど、仲間も強力という事で、ストーリー展開にさほど緊張感が無かったりもするんですが、主人公がやや頼りないヤツなんで、「どう戦っていくのか」という辺りは見てて面白いものでした。それに、やっぱり、キャストが豪華なのもいいですね。モーガン&ケビンも、見る前は「きっとチョイ役程度の出番なんだろう」と思っていたんですが、思っていたよりも登場シーンが多かったんで、何か得した気分になったものでした。しかも、最後にモーガンが結構おいしいところを持っていってましたからね(笑)。