ニューヨーク1997
<ESCAPE FROM NEW YORK>
81年 アメリカ映画 99分

監督・共同脚本・音楽:ジョン・カーペンター
出演:カート・ラッセル(スネーク・プリスケン)
   ドナルド・プレザンス(大統領)
   リー・ヴァン・クリーフ(ホブ・ホーク)
   ハリー・ディーン・スタントン(ブレイン)
   エイドリアン・バーボー(マギー)
   アイザック・ヘイズ(デューク)
   アーネスト・ボーグナイン(キャビー)

(あらすじ)
近未来、犯罪大国となったアメリカは、ニューヨーク、マンハッタン全域を巨大な刑務所にし、そこに犯罪者を送り込んでいた。
そんな巨大刑務所島に大統領専用機が墜落、大統領は人質にとられ、その命と引き換えに囚人達を釈放するよう要求されてしまう。
しかし、大統領を救出する為に、伝説のアウトロー、スネーク・プリスケンが送り込まれることとなった。

(感想)
近未来と言っても、1997年が舞台の話です。もう過去になってしまいましたね。ただ、ニューヨークは監獄にはならなかったものの、大変な事になりましたが・・・。
それにしても、何でまた1997年なんでしょうかね。世紀末感を出したいなら1999年にしそうなところなのに。

元々カルト映画として一部で大人気の映画でしたが、『メタルギア』というゲームの元ネタという事で、また別の層からの認知度も上がる事になりました。ちなみに、私はゲームの方はファミコンで出てた奴しかやってないんですけど、アレはこの映画の要素は全く無い感じでしたねぇ。 ただこの映画、古臭さやら面白さ等、今見ると色々と厳しい面もあるんで、そういう層は果たしてこの映画を楽しめたのかどうか。かく言う私も初見時はどの辺りが面白いのかいまいちよく分かりませんでした。『LA』の方は一発で虜になったんですけどね。ただ、何度か見ていく内に、雰囲気はいい映画だな、というのは分かってきました。敵も味方も犯罪者という辺りとか、美術面とか音楽何かも、他の似たような映画と比べても独特の味わいがあって、「面白いかどうか分からないけど、何か見ちゃう」みたいな感じですかね。

主人公スネークは、元特殊部隊の歴戦の勇士にして、伝説のアウトロー。犯罪者の間でその名を知らない者はいないほどの有名人です。主人公が悪というのもこの映画の魅力の一つですね。登場人物との会話にも、主人公が正義の味方の場合とは違った緊張感があります。
ただ、経歴や名声の凄さにしては、どうも見てて強いんだか弱いんだか分からない所のある奴なんですよね。会う人のほとんどに死んだと思われてるのも、もしかしたら割りと死にがちな奴だと思われるんじゃないのかと。
まあ、監督のカーペンターは普通に強い男として描いてるつもりだと思うんですが、多分、後の強さ盛り盛りのファンタジックなマッチョヒーロー共を散々見てきた後だからこんな事を思ってしまうんでしょうね。
それに、「もの凄くふてぶてしくて態度もデカいけど、強いんだか弱いんだか分からないヒーロー」と言えば、ウルヴァリンも似たようなタイプのやつでした。そしてどちらも「強ければいいってものじゃない」と思わずにはいられないような魅力とカッコ良さがあったものでした。

舞台となる、巨大な監獄と化したニューヨークですが、これも面白いアイデアでしたよね。マンハッタン島を全部監獄島にしてしまうなんて。この設定だけでもっといろんなお話が作れそうなポテンシャルの感じられるネタですよ。
そして、そんな所に、犯罪者を通り越して、異常者の集団となった連中が夜な夜な徘徊する様は、なんとも異常な光景です。もはや秩序なんて無さそうな感じなんですけど、一応人々はここで生活をしているんですよね。この辺はあんまり突っ込んで描かれてないんで、色々と想像が捗るところです。

今回スネークは「大統領を救出する」という任務を与えられていたわけですが、この救出対象の大統領、何とも地味に酷い仕打ちをされていましたね。「指を切られる」はまだ分かり易い仕打ちですけど、「変なかつらをかぶせられる」というのは何だったんだ。でも屈辱感はこっちの方が酷そうでした。
で、見事救出する事に成功するわけですが、あんな酷い目に遭っていて、そんな場所からの救出に力を貸して命を落とした連中に対してどう思うかをスネークから聞かれた際、まさに形通りな感謝を言うだけというこの人間味の無さ。
スネークに対する政府の態度何かも含めて、政府側も犯罪者同等の悪として描いてるんですよね。
結局この映画、メイン所から脇役に至るまで悪人しか出て来ないという潔さですよ。普通は一人ぐらいはまともな倫理観を持ってるキャラとかいそうなものなんですけどね(まあ、多分途中で殺されるとかそんな扱いになると思いますけど・笑)。