エキスパート(テレビ放映題「ザ・リベンジ/地獄の処刑プリズン)
<THE EXPERT>
94年 アメリカ映画 92分

監督:リック・エイヴリー
音楽:アシュレイ・アーウィン
出演:ジェフ・スピークマン(ジョン・ロマックス)
   マイケル・シェイナー(マーティン・ケーガン)
   ジェームズ・ブローリン(マンジー所長)
   アレックス・ダッチャー(バーンズ副所長)
   ウォルフガング・ボディソン(ダン)
   エリザベス・グレーセン(リズ)

(あらすじ)
異常殺人者に妹を殺された元特殊部隊員のジョン・ロマックスは、犯人、ケーガンの収監されてる刑務所まで復讐に出向く。

(感想)
人権擁護の人が見たら眉をひそめそうだけど、我々、いつ異常者によって自分や家族が傷つけられるか分からない一般人にとっては溜飲が下がる一作です。
主人公の妹が、図書館で偶然出くわした異常者に家まで付け回され、さらに家の中にまで侵入されて殺されるという痛ましい事件が起きてしまいます。しかもコイツはこれが初犯ではなく、過去にも数件の殺しをしている本物の異常者です。
そんな悪党ですが、家に帰宅途中の主人公に顔を見られた為に御用となります(指紋やら毛髪やらも大量に残していったらしい)。だが、収監された刑務所の副所長が人権擁護派の人物で、彼には更生の余地があると発言。実際に、大した罰も受けずに釈放になってしまいそうな状況となってしまいます。

これはまさに、現実でも似たような事が起こり得るだけに非常に怖いです。平気で人を殺せるような異常者が、「精神異常だから」という理由で無罪となり、数年後にはまた世間に放たれてしまうのです。むしろ「精神異常だから」有罪にすべきという考えは間違ってるんでしょうかね?
そんな一般人のジレンマに応えるべく、この映画の主役スピークマンは刑務所に乗り込んで行ってまで悪党を殺してくれます。

今までの刑務所物映画では、所長が悪党として描かれる事が多いですが、この映画では、いい者として描かれています。行動自体は他の映画の暴力所長とあまり変わらないものの、「囚人を死刑にする時に私が祈っているのは、囚人の為ではなく、遺族の為だ」なんて事を言ったりします。
加害者ではなく、被害者とその遺族の事をもっと考えるべきだというのがテーマなんでしょうね。
この辺は約10年前の映画、スタローンの『コブラ』の冒頭でも少し触れられていましたね。どうやらあれから現状はあまり変わっていないようです。

また、この手の映画を「暴力映画」だと批判する人は、実際に自分が暴力に巻き込まれた時の事を考えたことがないんでしょう。スピークマンやヴァン・ダムが映画の中で実行している暴力こそ、今、自分に降りかかっている暴力を守ってくれる力を描いているというのに。
今まさに自分に降りかかっている暴力、これは決して弁護士や検事では救えないんです。
・・・なんて事を考えさせてくれる映画でした。ちなみに、囚人全部が悪として描かれている訳ではなく、無実で捕まってる人がいたり(しかもその内の一人が刑務所に乗り込んできた主人公に殺される)、ラストに主人公が自分のやった事のむなしさを感じ、後悔したりと、「暴力礼賛」で終わってるわけではないです。

個人的にはタイトルは、原題の『エキスパート』よりも、テレビ放映題の『ザ・リベンジ』の方が作品に合ってるような気がしますね。