ランボー
<FIRST BLOOD>
82年 アメリカ映画 94分

監督:テッド・コッチェフ
製作:バズ・フェイトシャンズ
   シルベスター・スタローン
製作総指揮:マリオ・カサール 他
脚本:シルベスター・スタローン 他
原作:デビッド・マレル
音楽:ジェリー・ゴールドスミス
出演:シルベスター・スタローン(ジョン・J・ランボー)
   リチャード・クレンナ(トラウトマン大佐)
   ブライアン・デネヒー(ティーズル保安官)
   ジャック・スターレット(アーサー)
   デビッド・カルーソ(ミッチ)

(あらすじ)
アメリカの田舎町に一人の男がやってきた。名前をランボーといい、この町に住むベトナム戦争時の戦友を訪ねて来たのだ。
だがその友人は、ベトナムで使われた化学戦の薬品が原因で癌に冒され、死亡していたのだった。
友人の死にショックを受けたランボーは、町で食事をとった後、どこか別の地に行こうと考えていた。だが、通りがかった町の保安官に不審者扱いをされ、揚げ句に逮捕されてしまうのだった。
署に連行されたランボーは、署内の嫌な警官達に乱暴に扱われる。それにより、ベトナムでの悪夢のような拷問の記憶が蘇ってしまい、ランボーの頭のスイッチが“戦闘モード”に切り換わってしまった。
警官達をなぎ倒し、山に逃げ込んだランボー。だが、連中は銃で武装して後を追ってくるのだった。

(感想)
ランボーと言えば、上半身裸で戦場を駆け回る、筋肉&殺戮ヒーローと一般的には思われてるっぽいですが、このイメージは2作目以降からついたもので(と言うか、『2』も『3』も、ちゃんと見ていれば、ランボーにそんな単細胞な感じのイメージを抱いたりするはずはないんですが)、この1作目では「孤独なベトナム帰還兵」という、ドラマ映画の主役として出てきてもおかしくないようなキャラクターとなっています。
内容も、ベトナム帰還兵に対する世間の対応や、その兵士達が「国のために地獄のような戦場で戦ってきた」という現実を考えさせる(思い出させる)ようなセリフが出て来たりと、メッセージ性の強い、社会派の側面を持ったアクション映画なんです。
アクション面は、『2』以降のような派手さの無い、かなり地味、と言うか渋い感じのものです。ランボーに襲い掛かってくるのも、『2』以降の「もはや敵以外の何者でもない輩」みたいなのと違って、普段は町の平和を守ってる警官達だというわけで、マシンガンをぶっ放して殺戮しまくるわけにもいきません。まあ、嫌な奴らに違いはないので、見てて「殺しちまえ!」とか思うんですが、ランボーは殺人鬼ではないので、戦場以外では人は殺さないんです。なので、山の中で一人一人罠にかける等して怪我をさせるだけ、みたいなアクションなんですよね。
ランボーの動きも、一見、超人的な行動をしてるんですが、「映画的に映える動き」みたいなのがかなり抑えられてるような感じで、どことなくリアルな雰囲気があります。娯楽アクションに違いはないんですが、その“リアルな雰囲気”で娯楽アクションっぽくないような感じが出ているんです。アクション描写がメインの映画じゃない、という事なんでしょうかね。
当時の「戦地で死ぬ気で戦ってきたベトナム帰還兵に、やたら冷淡な世間」という状況を、ランボーという一人の帰還兵の目線で批判的に描いているという、言わば「社会派アクション」といった感じの映画で、『ランボー』シリーズに変なイメージを持ってる輩には「この一作目を見てからものを言え、このクソ野郎め」と陰口を叩いてやりたいです。

全体的に寒々しい感じのする画面も、ランボーの心情を表しているようで、非常に印象深いです。そして、ジェリー・ゴールドスミスの哀愁漂うスコアに、スタローンの「哀しみや辛い過去を胸に秘めた、孤独の男」を完璧に体言している演技等から、悲しみや切なさ、悲壮感というのが強く感じられます。
大概にして、「傑作」と言われる映画は、暗い話の映画が多いような気がしますが、もちろん、この『ランボー』もしかり。と言う訳で、私はこの映画が傑作であると信じて全く疑いません。
でも。実は、そんなに好きな映画ではなかったりするんですよね。その理由は、映画全体に漂う悲壮感というのが(この映画の格調を高めている要素なんですが)、まあ、見てて単純に「辛い。暗い。楽しくない」と思うわけですよ。
そして、ランボーに因縁をつける警察、特に、ブライアン・デネヒーが嫌な奴過ぎて、見ててムカつくというのも大きな理由です。しかも、先にも書いたようにランボーは戦場以外では人は殺さない奴なので、コイツも最後まで死なないんですよね。
で、これが一番大きな原因なんですが、ランボーが可哀想過ぎて、見てられないんです。特に、ラストの、心情をトラウトマンの前で爆発させるシーンなんて、あまりに辛すぎですよ。ここはもう、見るたびに泣いてしまうぐらい、感情の迸りが感じられる名シーンなんですけど、いたたまれな過ぎて、本当に辛いです。
要するに、私がこの映画をあまり好きじゃない理由は、どれも、この映画がそれだけ完成度が高いという事を示してるわけなんですよね。
でも、映画の完成度とか、傑作かどうかとかは関係無く、私は「楽しい映画」が見たいと思うんですよね。なので、「ジョン・ランボーの姿が見たい」と思った時は、『2』とか『3』を選んで見てしまいますねぇ。