ダイナソー・ファイター カンフーVS.巨大恐竜
<FUTURE WAR>
97年 アメリカ映画 82分

監督:アンソニー・ダブリン
製作・脚本:デビッド・ヒューイ
出演:ダニエル・バーンハード(逃亡者)
   トラビス・ブルックス・スチュワート(アン)
   ロバート・ツダール(サイボーグ・マスター)
   カジャ(サイボーグ)
   レイ・アダッシュ(ポラリス警部)
   アンドレ・シュルッグス(フレッド)
   デビッド・ジャコブス(ロメロ)
   マシュー・サキモト(マックス)
   ジョアンナ・タカハシ(ドクター・タナカ)

(あらすじ)
ロサンゼルスの郊外に、他の星から逃亡者がやってきた。その星では、サイボーグがマスターとして全てを支配していて、遥かな昔に地球から人類と恐竜を誘拐し、人間は奴隷に、恐竜は逃げた奴隷を追うハンターに飼育していた。

逃亡者こと、カンフー(仮名)は、追ってきたサイボーグや恐竜と戦いながら逃亡を続けるが、道路に飛び出したところ、シスター・アンの運転する車に轢かれてしまう。
アンはカンフーを家に連れ帰って介抱し、復活したカンフーから事情を聞く。最初は信じられなかったアンだが、家に恐竜が現れて信じざるを得なくなる。

恐竜は市民数人も襲い、ロス市警のポラリス警部他、SWAT隊、FBI等が押しかける大混乱に発展。そんな中、アンは昔のワル仲間の力を借り、恐竜の隠れ家に襲撃をかけるのだった。

(感想)
現代のロスに、余所の惑星から恐竜とサイボーグ戦士が現れ、その星から逃亡したカンフーマンと追撃戦を繰り広げるという内容のSFアクションを、呆れるほどの低予算で作ったのがこの映画です。
主人公のカンフーを演じる男は、外見から動きに至るまで、その全てが見るからにヴァンダミングです。そしてティラノサウルスのハリボテが襲ってくるという内容から、『ユニバーサル・ソルジャー』と『ジュラシック・パーク』のすぐ後ぐらいに作られた映画だろうと予想したんですが、その特撮技術は70年代後半を思わせるようなチャチいもので、とても90年代に作った映画とは思えません。
でも、“ヴァンダミング”+“恐竜”なんて組み合わせは93年以降の映画じゃないと作り得ないはずです。「こりゃいったい、いつの映画なんだ!」と思って後で調べてみたら、97年製作でした。意外に新しいんですね。『ロストワールド』と同じ年の映画だったとは。

そのヴァンダミングな主人公のダニエル・バーンハードという人は、『ブラッド・スポーツ』の続編とか『モータル・コンバット/コンクエスト』といった映画に出ている事から分かるように、ヴァン・ダムのような格闘技経験者のようです。もう、その動きからして「撮影前に数ヶ月格闘の練習をした」という俳優の動きとは一線を画する華麗なものです。
ただ、何しろ映画が映画だけに、“アクションシーンの迫力”なんてものはほとんど無いですね。バーンハードの動きも、“格闘アクション”と言うより“デモンストレーション”と言った方がしっくりくるような映され方でした。まあ、闘う相手が恐竜のハリボテとかサイボーグっぽい格好をした動きのトロいマッチョなんですからしょうがないと言えばしょうがないんですけどね。

あんなあらすじの映画だけに、ハジけた内容を期待してしまうんですが、ストーリーはかなり真面目なもので、あまつさえキリスト万歳精神まで入り込んでました。
ヒロインの役柄が、「かつて荒れていたが、神に目覚めて更生したシスター」というものです。そして、自分が売ったヤクが原因で友人が死亡したという事件があり、その事で大いに悩んでいるという時期に、この「未来戦争」に巻き込まれる事となるんです。
また、カンフーの方もキリストの教えに妙に詳しかったりします。それは何故かと言うと、聖書の言葉というのがカンフーのいた星で古くから伝わっている言葉だからなんだそうです。この星のサイボーグ達は、かつて地球から人間をさらっていって奴隷化しているという背景があり、その際に一緒にキリスト教もサイボーグ星に輸入されていったようなんです。
この、キリストの教えを知る、他の星からきたカンフーマンと接するうちに、ヒロインが自分の悩みを克服し、立派なシスターになっていく、というドラマが背景にあるんですが、実のところ、こういう立派な人間ドラマをきちんと描けるような才能を持った人材を集められなかったようで・・・(笑)。私も、「多分、そういうストーリーなんだろう」と想像して書いただけで、実際映画を見てみると、とてもそんなテーマが根底にあるとは思えないような展開を見せてたりします。

アクションもドラマもダメだし、特に笑えるような箇所もない。予算も無い。面白く無い。と、無い無いづくしの映画なんですが、そんな中でも精一杯いい映画を作ろうとした形跡が感じられるので、何だか清々しいものが感じられましたね。思わず、応援したくなってしまいます。そして、「私も頑張ってみよう」と決意しかかったものです(決意したわけじゃない・笑)。
アクションシーンにしろドラマシーンにしろ、限られた予算の中で出来る限りの事をやったと思うんですよね。これでも。映画の節々から、製作に関わった人達の努力と苦労がなんとなく感じられるようです。そして、映画の出来を見る限り、その努力が全て無駄になっているというところが泣けてきますね。
例えば、「恐竜に襲われたカンフーとアンが、トラックの荷台に飛び乗って逃げる」というシーンがあるんですが、ここは『ジュラシック・パーク』の、T−REXの襲撃からジープで逃げるシーンをパクった形で演出されてるんです。襲いくるT−REXの姿に、ローラ・ダーンが派手な悲鳴を上げる、というシーンですね。
で、この映画でも、アンを演じる女優さんが同じような感じで悲鳴をあげるんですが、襲って来てるのが残念な代物だという事で、気合を入れて悲鳴をあげればあげるほど惨めに映るという、まさに俳優にとって悪夢のようなワンシーンとなってしまってました。もう、見てて気の毒になってくるんですが、それでも頑張って悲鳴をあげてるわけですよ。「よく頑張った!」と褒めてあげたくなりましたね。

多分、まともな映画になるとは製作陣の誰一人として思ってなかった事と思いますが、それでもやれるだけ頑張って、きちんと形になってる映画として完成させた。この事実は劇中で語られているストーリーよりも感動がありしまたね。
まあ、全て私の勝手な思い込みなんでしょうけど(笑)。

ちなみに、サイボーグのボスが明らかに『デッドフォール』や『マニアック・コップ』で見た感じの顔をしてるので「まさか」と思って調べてみたら、やっぱり当人でした。