スパイラルコード
<GREENMAIL>
02年 カナダ/アメリカ合作映画(ビデオ用) 97分

監督:ジョナサン・ヒープ
出演:スティーブン・ボールドウィン(スコット・アンダーソン)
   ケリー・ローワン(アシュリー・プライヤー)
   トム・スケリット(トム・ブラッドショウ)
   D・B・スウィーニー(ジェレミー・オブライエン)
   シュキ・カイザー(アリソン・シェフリーズ)

(あらすじ)
シアトルで連続爆破殺人事件が発生。調査を始めたATFは、最重要容疑者として、環境保護を訴えるグループ“RAM”のリーダーであるスコット・アンダーソンを逮捕する。だが、スコットを拘束中も爆破事件が発生。犯人は別にいるのだ。

一方スコットは、この一連の爆破事件の犯人が、グループの仲間であるジェレミーの仕業ではないかと考える。スコットは、ジェレミーのテロ行為をやめさせる為に、ATFの美人捜査官アシュリーに捜査の協力を申し出るのだった。

(感想)
ビデオ用として製作されたB級未公開映画ですが、突っ込みどころ満載の毎度バカバカしい雰囲気のある映画と違い、かなりまともな仕上がりの映画でした。

「敵が爆弾魔」というタイプのサスペンス・アクション映画で、『スペシャリスト』や『ブローン・アウェイ』と同系統の映画ですかね。
犯人の爆弾魔は、かなり巧妙な爆弾を仕掛ける事の出来る奴で、まるで『スペシャリスト』のスタローンのように、標的だけを爆死させる事が出来ます。そうかと思うと、「家一軒まるごと爆破!」みたいな大技を使う事もあったりと、まさに自由自在。
そんな強敵に立ち向かう主人公のスティーブン・ボールドウィンは、何と爆弾に関しては素人です。何しろ、演じるスコットは刑事でも政府の職員でもなく、ただの環境保護を訴える活動家というキャラなんです。
と言う訳で、スコットとは別に、メインキャラに爆弾解除のプロフェッショナルであるATFの女性捜査官と、その師匠であるベテラン・オヤジ捜査官が出てきて、犯人を追って行く事となります。
と言うか、どちらかというとメインに描写されるのは女性捜査官のアシュリーの方で、この人の捜査活動が映画のメインストーリーになってるんですよね。前半ではスコットが犯人扱いされてたりもしますし、むしろアシュリーの方が主人公っぽい雰囲気ですね(そうかと思うと、クライマックスで活躍するのはスコットの方なんですけどね)。

敵である爆弾魔の目的は、「無差別テロ」というわけではなく、自然破壊をしようとする悪い連中を標的としています(企業のエラい人とか弁護士とか)。
正直に言うと、こういう連中を助けなければならないというストーリー展開には素直にノレないものがありましたね。ノレないと言うか、ジレンマを感じると言うのか。本来なら、こいつらが敵として出てきてもおかしくないような、儲け第一主義のイヤな悪党連中が、爆破テロの標的なんですよね。むしろ、「吹っ飛ばしてしまえばいいのに」とか思ってしまいます。
ですが、そんな事を思って見る人の事を見越してか、きちんとメインキャラのスコットが環境保護団体のリーダーという、思想的には爆弾魔と同じ側の人間として設定されています。そして「あいつのやり方は間違っている。暴力はいけない」というセリフを言わせて、「そうか、悪い奴でも吹っ飛ばしてはいけないんだな」と考えを改めさせてくれます。
「映画で描かれる環境問題」といえば、セガール大先生の『沈黙の要塞』や『沈黙の断崖』などを思い出しますが、実はこの映画は「セガール環境シリーズ」ほど環境問題について語ってくるわけではありません。映画のテーマではなく、ただの背景として使われている、といった感じですかね。
メインとなるのは環境問題ではなく、犯人の活動が「爆弾テロ」という点です。何しろ、『スペシャリスト』の仲間ですからね。
爆破シーンも何度か出て来るんですが、見せ場だけあって、結構派手に爆破します。しかも、流用じゃありません。B級未公開映画で新撮の爆破シーンが出て来ると「おお!!」と思ってしまいますね。
また、爆破だけでなく、「いかにして起爆装置を解除するのか?」というのも大きな見どころとなります。これがかなり緊迫感のある、見事なサスペンスシーンになっていましたね。
解除シーンは計3回出てきて、1回目は主人公のアシュリーが見事に手際よく処理します。しかも、「わざとダミーを解除させて、安心したところでドカン!」という犯人側の思惑も直前で察知し、人命救助に成功します。
これで、「とりあえず、このアシュリーがいればどんな爆弾も処理してくれそうだ」という安心感が得られるんですが、後の2回の解除シーンではアシュリーのいないところで爆弾処理シーンが発生してしまいます。
特に、クライマックスに出て来る最後の解除シーンは、今まで何の役にも立ってなかったスティーブン・ボールドウィンが、無線でアシュリーの指示を聞きながら解除をするという、手に汗握る展開となります。航空パニック系の映画で、素人が飛行機を着陸させるハメになるというのと同じパターンではあるんですが(笑)。でも、本来なら「赤の線か青の線か?」という2択で締めとなるところを、両方青の線を出してみるなど、細かい工夫がなされていたのには感心しましたね。しかも、その舞台が移動しているロープウェーの上という、『クリフハンガー』も一瞬ビックリな高所アクションっぷりです。

派手な爆破シーンや、サスペンスフルな爆弾処理シーンだけでなく、主要キャラのスコットとアシュリーに軽くロマンスが芽生えたりと、全編に渡って、娯楽映画のツボを心得ているような展開を見せてくれる、面白い映画でしたね。