奪還 DAKKAN−アルカトラズ−
<HALF PAST DEAD>
02年 アメリカ映画 98分

監督・脚本:ドン・マイケル・ポール
共同製作:スティーブン・セガール
出演:スティーブン・セガール(サーシャ・ペトロセビッチ)
   モリス・チェスナット(ドニー)
   ジャルール(ニック・フレイザー)
   ニア・ピープルズ(フォーティナイナー・シックス)
   トニー・プラナ(エル・フエゴ)
   クルプト(トゥイッチ)
   マイケル・“ベアー”・タリフェロ(リトル・ジョー)
   クローディア・クリスチャン(E・Z・ウィリアムス)
   リンダ・ソーン(ジェーン・マクファーソン判事)
   ブルース・ワイツ(レスター)
   リチャード・ブレマー(ソニー・エックボール)
   マイケル・マクグラディ(バッド・アス)

(ストーリー)
あの、アルカトラズ刑務所が復活した!まだ改装中のところもあるが、将来は“超凶悪犯が最後に行き着く先”というまさに悪夢のような場所になる予定の刑務所だ。
その刑務所に入れられた二人の男、サーシャとニック。二人はソニー・エックボール率いる組織の一員だったが、FBIとの銃撃戦の末、逮捕されたのだった。サーシャはその銃撃戦でニックを庇ってFBIに撃たれ、生死の境を彷徨ったという実績を引っさげてのお勤めなのだった。

その“ニュー・アルカトラズ”では、最初の死刑囚レスターの処刑が行われようとしていた。レスターは強奪した大量の金塊をどこかに隠し持っていて、その隠し場所を吐かぬまま、処刑をむかえようとしていた。
そしてレスターは、処刑の前の最後の面会人に、初対面のはずのサーシャを指名するのだった。きっと、サーシャがただの囚人ではなく、セガール拳を得意とするアクション魔神である事を、その存在感から感じ取ったのだろう。

だが、そのレスターの金塊をテロリスト一味が狙ってきたのだ!テロ達によって看守は殺害され、どさくさで牢を閉めておく装置が故障し、囚人たちが外に出てきてしまったのだ。
しかし、牢から出たところで、特にする事もない囚人たちは、仲良くバスケットボールに興じるのだった。
一方、レスターに招かれていたせいで事件に乗り遅れたサーシャだが、待ってましたとばかりに大好きな“テロ狩り”行為をおっ始める。

囚人達、テロの一味のカンフー女、サーシャらが暴れ回る無法地帯と化した刑務所内!いったいこの後、どうなってしまうのかぁ!!?

(感想)
セガール最後の全米劇場公開作として有名な一作です。いや、まだ引退してないんで、可能性が無いわけではないんですが、まあ、まず無理だろうと(笑)。
で、「劇場公開最終作」に相応しく、過去のセガール映画の色んな要素の詰まった豪華な内容となっています。
まず、映画が始まってすぐ、サーシャが「嘘発見器をパスする」という、『グリマーマン』でお馴染みなシーンが登場という掴みを見せてきます。
そして、『死の標的』では「元麻薬の潜入捜査官」という役柄でしたが、今回は「現FBIの潜入捜査官」です。この職業のおかげで、仲間のFBIから「事件の収拾を任される」という、『アンダー・シージ』シリーズな展開になります。もちろん、ケイシー・ライバックのようにブービー・トラップを仕掛けたりもしてきます。ついでに、テロリストのリーダーを演じてるのが、『暴走特急』でポーターを演じていたモリス・チェスナットだったりします。ただのポーターからテロリストのリーダーとは、かなりの出世ですね。
他にも、“死の淵から生還(『ハード・トゥ・キル』)”、“死後の世界について語る(『珍テロ』)”といった要素も登場。中でも、登場キャラのほとんどが黒人、背景で鳴ってる音楽もそれ系、という『DENGEKI電撃』を思い出す要素が一番色濃く出ていましたね。と言うか、『電撃』っぽい映画を作ろうと思っただけで、他の過去のセガール映画を思わせる要素は「たまたま似てるだけ」なんだと思いますが(笑)。
で、この映画、アクション指導を、香港から招かれたシン・シン・シャンという秘伝のタレみたいな名前の人がやってるようで、黒人+香港アクションという、まさに“ヒップホップカンフーシリーズ”と同じコンセプトで作られた映画なんですね。

製作側の思惑はともかくとして、「いかにもセガール的」な要素が結構多く出て来る映画なんですが、見ていて、どうにもセガール映画っぽくない感じがするんです。その理由ですが、どうも私の中で「セガール+ヒップホップ」の食い合わせがとてつもなく悪いようなんです。他の人が見てどうかは分からないですが、『電撃』といい今作といい、見ていてどうしても、「この映画にセガールが出ている事自体に違和感がある」という感じを拭う事が出来ませんでした。
でも、最近はようやく慣れてきたのか、この手の映画にセガールがいる事に面白味を感じられるようになってきましたけどね(と言うか、最近作と比べて制作費が掛かってる豪華感があるから、当時よりも映画自体が良く見えるという話なのかもしれませんが・笑)。

セガールの最近作と比べると豪華な感じはあるものの、映画全体に、悪い意味でB級っぽい所があって、A級のアクション大作を期待するとガッカリする事になると思います。でも、元々B級アクションを期待していると、きちんと期待に応えてくれる内容になっています。何しろ、刑務所という限定空間が舞台なのに、銃撃戦、爆破、カンフー、と娯楽アクション映画に必要な要素が全て登場しますからね。
肝心のセガールのアクションについても、セガール拳こそ期待ほど出てこないですが、「セガールとモリス・チェスナットのターザンバトル」、「セガールに投げられた敵の一人がグルングルン回りながら飛んでいく」といった気の利いたシーンが出てきたり、セガールに一人一人消されていく敵さん達の映像が、『ジェイソンX』で、ジェイソンに一人一人葬られていく特殊部隊の姿を思い出させるものだったりと、「セガールが敵に負ける気配が全く無い」という辺りは見てて楽しいものです。そしてラストには、ついにセガールが空を飛ぶというアルティメットな見せ場もありました(正確には自由落下ですが・笑)。最初に映画館でこのシーンを見た時は「ついに飛んだか!」と感慨深いものがありましたね。ロボコップも3作目で飛びましたし、シュワも『イレイザー』で飛びましたからね。やはり、空を舞ってこそアクションヒーローですよ。
あと、セガールがテロ一味と対決するにあたって、この囚人達と協力するという展開は面白かったです。囚人達にあっさりと強力な銃を渡す豪快さとか、セガールに素直に従う囚人達とか、実に素敵な状況でしたね。
それにしても、囚人達は何か楽しそうでしたねぇ(笑)。テロ一味が侵入してきてるというのに、バスケで遊んでたりしてましたからね。何だか、とっても平和な感じがしてしまいました(強力な重火器も使わせてもらえたし・笑)。
ただ、欲を言えば、セガールなら一人でテロ一味を全滅させてほしかったというのはありますね。囚人達の協力とか無しで。まあ、これはこれで面白かったとも思いますけど、せめて、あのやたら目立ってたカンフー女をあっさり料理するシーンぐらいあって欲しかったです。結局、今回セガールが倒した敵って、雑魚ばっかでしたからね。
あと、2000年前後のアクション映画の特徴みたいなものなんですけど、二丁拳銃やら『マトリックス』風カンフーアクションやら、香港映画界から渡ってきたアクション演出を取り入れてた時期でしたけど、こういうアクションって、似合わない人がやるとクソダサいんですよね。おかげで、今ではこういうアクション演出の映画なんてほとんど見なくなりましたけど。序盤で出てきたFBIのおばちゃんの二挺拳銃アクションの似合わないっぷりとか凄かったですからね。

“舞台が刑務所なのに、「刑務所映画」という雰囲気が全くと言っていいほどない”というのは最初に見た時はちょっとガッカリした点でした。セガールがムショに入ったその日の夜にテロの襲撃が起こるので、「セガールinムショ」を楽しむ暇が無いんです。見る前は“囚人セガール”が刑務所内で他の囚人相手にどんな暴れ方をするのか、というのを期待してたんですけどね。まあ、入る早々、看守をぶん殴るというシーンはありましたが(笑)。でも、この点は「そういう映画じゃない」という事なんで仕方がないんですけどね。それに、この点は後の『沈黙の脱獄』で見る事が出来ましたし。
あと、テロ一味のレスター誘拐計画は何だか適当でしたね。潜入までは良かったんですが、その後、迎えのヘリは即行で墜落するわ、囚人達を放置しておいたおかげて敵に回られるわとトラブル続きです。
そもそも、死を覚悟している死刑囚を脅して情報を聞き出すというのは、計画としてどうなんだろうと思うんですが、どうも、以前に面会するなどして、レスターが「他の無関係な人を殺すと脅せば吐きそうな奴だ」と思ったからこその計画だったみたいですね。で、実際セガールが現れなければ割とうまくいきそうだったのが凄い。あんな計画でもセガールの介入が無かったら成功してたかもしれなかったんですねぇ。この辺は、さすが「暴走特急事件」を生き残った男が考え出した策と考えるべきなのか(結局、暴走特急事件を解決した男に邪魔されるんですが)。