監督:シェルドン・レティック
出演:ジャン=クロード・ヴァン・ダム(フィリップ・ソバージュ)
ラザーク・アドティ(ウェイン・バークレー)
ヴィヴィカ・A・フォックス(タマラ・バークレー)
ヴィヴ・リーコック(テレル・シングレタリー)
ジュリアン・クリストファー(クラレンス・ボーデン)
ロン・ボッティッタ(ティグ刑事)
マーク・グリフィン(ケイシー・ブレッソン)
(感想)
『ザ・コマンダー』に続く、ヴァン・ダム日本劇場未公開作です。今回は、ケビン・コスナーの『ボディガード』を思い出させるような、要人警護の任務についた男の物語で、やっぱり、警護対象は主人公の言う事を聞いてくれません。「しかし、後に愛情が芽生え・・・」的な展開も、対象が女性ではなくマッチョな男という事で、そういう方向にはいきません。ついでに、歌も歌いません。
まあ、そんな点にはこちらも期待してないんでいいんです。何しろ、ヴァン・ダム主演のアクション映画なんですから、期待するのはただ一点、「ヴァン・ダムによる肉体アクション」です。
ですが、実は、この点にはほとんど期待に応えてくれないんですよね。もう、アクションシーンに迫力を出すつもりが全く無いといった演出で、銃撃シーンも「ただ立って銃を撃ちまくってるだけ」なんて有様でした。
なので、期待しどころを間違えると大変な目に遭いそうな映画なんですが、「テレビ映画」としてはそれなりに満足感のある面白い映画でした。
最近のヴァン・ダム主演作は「主人公が暗い過去を持っている」というのが多いですが、この映画も、イラクで従軍中、精神的に酷い傷を負うような事態に遭っていたという過去を持った、暗い男を演じています。で、こういう役ももはや手馴れたものとなったのか、「暗くて寡黙で真面目だけど、その悩みを抱えた姿がクールでカッコいい」と見えるようになってきました。
ただ、映画のストーリー自体は「過去の事件を乗り越えていく男の姿を描く」というのがメインになってるわけではなく、あくまでもストーリーを盛り上げる為の一要素として盛り込まれているといった雰囲気です。なので、この面で感動するような事は無いものの、目的である「ストーリーを盛り上げる」という役目はしっかり果たしていて、見てて主人公を応援したくなってきます。本来はまだ軍の精神病院で療養してた方がいい所、無理やり仕事をさせられているという状況なのですが、根が真面目なキャラクターなので、その仕事をしっかりとこなそうとするんですよね。この辺りは、何だか「私も頑張らないとな」とかポジティブな事を思わせてもらえます。
警護対象である元チャンプが、「警護チームにオレの知り合いを入れろ」とか「一人でオンナに会いに行く」などの我がままを言ってきて、「そんな状況で、プロはいかにして対象を守るのか」という、“仕事ぶり”の面にも面白さがありました。
また、後にこの二人が「拳で分かり合おうとする」という、『ボディガード』では絶対見られない熱いシーンが出てきたりするのも魅力です。最終的には、誤解や偏見も解け、お互いに友情のようなものが芽生える、という展開になるのもいいです。まあ、こちらもやっぱり、「ストーリーを盛り上げる為の一要素として盛り込まれている」という感じで、さらっと流されるんですけど(笑)。
正直、劇場公開は無理だったなと思える内容の映画ですが、かと言って、テレビドラマレベルの映画がつまらない代物なのかというとそんな事はないわけで、先にも書いたように、期待どころを間違えなければ十分楽しめる映画だったと思います。私も、「シネパトスですらかけてもらえない映画だ」という事で、過去のヴァン・ダム主演作ほどの内容を期待していなかったおかげで、約2時間の間、楽しませてもらえました。