監督:アーロン・ノリス
出演:チャック・ノリス(フランク・シャター)
カルビン・レベルズ(ジャクソン)
クリストファー・ニーメ(ロッカリー教授)
シェリー・J・ウィルソン(レスリー・ホーキンス)
ジャック・アダリスト(ラインハルト・クリーガー)
エレス・アター(ベジ)
プロサタノスは、シカゴの安ホテルの一室で、ラビという男と杖の一部の取引をしていた。だが、それがニセモノだと気付き、ラビの心臓を掴み出して殺害。さらに、部屋にいた娼婦を窓の外に放り投げるのだった。
しかし、それが良くなかった。なぜなら、娼婦の体は外に停まっていた車のボンネットに叩き付けられたのだが、その車にはチャック・ノリスが乗っていたのだ!!
チャックは本拠地イスラエルまで乗り込んでいき、プロサタノスを得意のマーシャル・アーツでぶちのめすのだった。
(感想)
悪魔の化身とチャック・ノリスが大激突する様をコメディタッチで描いた、割とヌルめのアクション映画です。
ですが、私はこの映画を初めて見た時はかなりの衝撃を受けましたね。何にそんなに驚いたのかと言うと、それはクライマックスの、プロサタノスとチャックの対決シーンです。
悪魔の化身であるところのプロサタノスは、数千年の時を経て復活したような人智を超えた存在ですし、これまでにも様々な邪悪な能力を披露して人々を殺害するシーンが描かれてきました。
まず、その怪力はジェイソン並のもので、一撃で心臓を掴み出すという奥義も持っています。さらに、瞬間移動の能力もあり、銃弾をかわす事すら出来ます。その外見も、肩までかかるほどの長髪ながら、額は頭頂部までツルピカという有様で、ベテラン神父でさえ姿を見ただけでビビってしまうほどです。まあ、神父がビビったのは髪型にではないという意見もありますが。
そんな凄い奴が相手なわけです。他の映画で言えば、『ハムナプトラ』のイムホテップみたいな感じでしょうか。神父が歯が立たないという点では、『エクソシスト』のパズズも思い出させます。アチラは事件に関わったほんの数人を呪い殺した程度でしたが、こっちは直接的な殺しをしてくる分、さらに厄介な相手かもしれません。
で、そんな恐ろしい相手と我らがチャック・ノリスがクライマックスで対決するわけです。「さすがのチャックもこれは苦戦は必至だろうな」「いったい、どうやって倒すんだろう」と固唾を飲んで見守っていたんですが、何と、戦いが始まってビックリ。プロサタノスはチャックのマーシャル・アーツの前にほとんど歯が立たないんです(爆)。
まあ、確かにマーシャル・アーツだけでは勝てませんでしたが、結局、チャックはほとんどダメージを受けてないまま勝ってしまいましたからね。
もう、最初にこれを見た時は驚きましたね。チャック・ノリスクラスにまでなると、悪魔の化身を回し蹴りで撃退できてしまうのかと。あまりにも私の常識を超えた展開だった為、もう見てて大興奮でしたね。実のところ、特にスピード感もない、普通のアクションシーンなんですけどね。
映画の内容は、チャックのアクションよりも、コミカルな相棒との掛け合いがメインに描写され、合間にプロサタノスが悪い事をするシーンが挿入されます。
そんな内容なので、アクション映画として見ると少々物足りないものはありますね。チャックが暴れるのも最初と最後だけですし。
その代わり、ジャマイカンな感じの相棒がかなりいい感じのキャラクターで、要所要所で笑いを提供してくれます。“いかにも黒人の相棒キャラ”な感じのオーバーリアクションを見せ、サイフを盗まれたりといった不運さを持ち、常に腹を空かせていて、愚痴が多く、バスケ観戦が大好きという、もうどこを切っても愛すべきキャラというような奴ですよ。
そして、そんなハイテンション気味の相棒との掛け合いをするチャックの演技が「いつものチャック」だという点も素晴らしい。何しろこの人、犬と共演したコメディ『トップドッグ』の時ですら、「いつものチャック」を通してましたからね。あの映画を見た時も、この「これぞ俺流」と言わんばかりなチャックの佇まいに本気で感心したものでした。
思えば、この映画の「悪魔の化身をマーシャル・アーツで叩きのめす」というのも、まさにチャック流のアプローチですよね。
今の映画界で、こういう揺るぎの無い自分流を通してるアクションスターは、チャックの他はセガールぐらいでしょうかねぇ。
ちなみに、この映画の邦題、ビデオでは『ヘルバウンド』だけですが、劇場公開時とテレビ放映時には『地獄のヒーロー5』という副題が付いてました。この、「実際はシリーズじゃないのに、邦題でシリーズにされている」というのも、セガールの『沈黙』を思い出させてくれますね。