ハドソン・ホーク
<HUDSON HAWK>
90年 アメリカ映画 100分

監督:マイケル・レーマン
製作:ジョエル・シルバー
原案:ブルース・ウィリス
   ロバート・クラフト
共同脚本:スティーブン・E・デ・スーザ
音楽:マイケル・ケイメン
   ロバート・クラフト
出演:ブルース・ウィリス(ハドソン・ホーク)
   ダニー・アイエロ(トミー・ファイブ=トーン)
   アンディ・マクダウェル(アナ・バラグリー)
   ジェームズ・コバーン(ジョージ・キャプラン)
   リチャード・E・グラント(ダーウィン・メイフラワー)
   サンドラ・バーンハート(ミナーバ・メイフラワー)
   ドナルド・バートン(アルフレッド)
   ロレイン・チューサン (アーモンド・ジョイ)
   デビッド・カルソー(キット・カット)
   フランク・スタローン(シーザ・マリオ)
   カーマイン・ゾゾラ(アントニー・マリオ)

(あらすじ)
10年の刑期を終え、出所したばかりのハドソン・ホークに国際的陰謀団のリーダー、メイフラワー夫妻から予期せぬコンタクトが入った。昔のパートナーだったトミーの命と引き替えに、世界的な文化遺産を盗めというものだった。
それは、ニューヨークとヨーロッパ各地の美術館に収められている、世紀の天才レオナルド・ダ・ビンチが残した芸術品の数々。スフォルツァの騎馬像、古写本コテックス、、、。
ハドソンは旧友の命を守るため、やむなく仕事を引き受ける事となった。その時、要求の裏に秘められた巨大な罠にホークはまだ気付いていなかった・・・。(プログラムの解説文より)

(感想)
公開当時、『ダイハード2』の大ヒットで飛ぶ鳥を落とす勢いだったブルース・ウィリスの主演アクション最新作という事で大きな期待を持って見に行ったところ、『ダイハード』とは全然違う、怪しげなギャグのオンパレードなコメディ映画だったという事で、初見時の印象のあまり良くない映画でした。でも今見直すと、これがまた、結構面白い映画なんですよね。
とにかく、ギャグが面白いです。腹を抱えて笑うほどのものはないし、どちらかと言うとスベってるギャグの方が多いんですが、それもまた妙な味があっていいんです。

アクションコメディですが、主演のブルース・ウィリスの演技は特にコメディを意識したようなものではないです。本人はしてるつもりなのかもしれませんが、見てる側には「いつものブルース」がちょっとおどけてみせてるだけにしか見えません(笑)。
でも、それが全体のトーンには合っていたりするんですよね。どうも監督の意図らしいんですが、一般的なアクション・コメディ映画ではなく、少々珍妙な味わいのアクション・コメディ映画になっているんですね。ただ、その笑いのツボが当時の観客(私含む)の求めていたものではなかったらしく、今では失敗作という認識がなされている映画です。しかし、この映画はこのまま失敗作として眠らせておくのは惜しいです。

では、この映画にはどんなギャグシーンがあったのか。まず、目的のお宝のある建物に入ったハドソン・ホークと相棒のトミーが歌を歌いながら盗みを働くという有名なシーン。いきなりミュージカルになるという変化球的なギャグです。もちろん、伏線でも何でも無い、メインのストーリーとはまるきり関係の無い演出です。でも、この映画のカラーを決定づけている重要なシーンでもありますね。
次に、やたらと気絶する主人公ネタ。劇中、4、5回ほど、敵に殴られたりして気を失うハドソン・ホーク。まず、こんな何回もノビる主人公なんて他の映画じゃ考えられません(『エージェント・レッド』のドルフは2回ノビましたが・笑)。この手法、どうやら舞台を別の場所に移す時に用いられてるようです。要するに、常に気絶して移動してるわけなんですね、この主人公は(笑)。
あと、カプチーノギャグ。ホークは無類のカプチーノ好きで、10年のムショ生活の間、一滴も飲むことが出来なかった。だから飲みたくてしょうがないわけです。そして、劇中3回ほどカップを手にして飲もうとするんですが、必ず邪魔が入って飲めなくなるという、割りと基本的なギャグですね。でも、私のお気に入りのギャグです。それに「カプチーノが飲めた」というのがラストシーンになるので、物語と無関係というわけでもありません。ちなみに、この映画を見た後は必ずカプチーノが飲みたくなります(笑)。
「妙な編集」ネタというのもあります。例えば、高いところから落下したと思ったら、次のシーンでは別の場所の椅子に座ってるという、まるで椅子の上に落ちたかのような錯覚を観客に(無駄に)起こさせます。さらに、さっきまで夕方だったのに、劇中で時間の経過が描写されたわけでもないのに、次のシーンでは夜になっているというもの。どっちも「だからどうした」系のスベりギャグなんですが、何とも言えない妙な面白さがあります。
そして、ジェームズ・コバーン関連ギャグ。コバーン演じるCIAの怪しい男、ジョージ・キャプランの部下達のネーミングがなぜかお菓子の名前になっています。その中の一人「キット・カット」が出る度に妙な扮装をして登場します。
そして、ホークとキャプランの格闘シーンでは『ダイハード2』のフィンランディアがバックに流れ、ちょっとしたパロディ演出も見せてくれます。
キャプランの攻撃で立ったまま上体を繰り返し前後運動させるホーク(文章にすると意味不明ですが)に飛び蹴りを放つものの、見事に外れてそのまますっ飛んで行くコバーン。アホ過ぎです(笑)。
それにしても、この映画のジェームズ・コバーンの演技は凄いですね。こんな訳の分からない映画の登場人物を見事に浮かせずに演じているんですから。そして、演技に微妙にコメディが入ってるのが感じられるあたり、さすがベテランといったところでしょうか。これがどういう映画なのか理解していないと出来ない技でしょうね。
そして、ラストに出てくる一番笑えるギャグ(文章では伝わらないと思いますが)。車に閉じ込められ、そのまま断崖から転落してしまったトミーが、ラストに「実は生きていたんだ!」と言って再登場するんですが、崖から落ちたのに生きていた理由が、「車にエアバックが付いてたから」。車が爆発したじゃないかとホークが言うと「スプリンクラーが付いてたから」。もう、最高です。アホ過ぎ(笑)。こういうバカなギャグは大好きです。

他にも色々なギャグがあるんですが、まあ今印象に残ってるのはこれぐらいですね。
ちなみにこの映画、ヨーロッパではヒットしたらしいですね。どうも、西洋人のツボを刺激する笑いだったらしいです。とてもそうは思えないんですが(笑)。