クローン
<IMPOSTOR>
01年 アメリカ映画 102分

監督・製作:ゲイリー・フレダー
共同製作:ゲイリー・シニーズ
原作:フィリップ・K・ディック
出演:ゲイリー・シニーズ(スペンサー・オーラム)
   マデリーン・ストー(マヤ・オーラム)
   ヴィンセント・ドノフリオ(ハサウェイ少佐)
   トニー・シャルーブ(ネルソン)
   メキー・ファイファー(ケール)
   ティム・ギニー(ドクター・キャローン)

(あらすじ)
異星人ケンタウリとの戦争状態にある2079年の地球。地球側は都市を防護ドームで覆い、ケンタウリの侵入を防いでいたが、時折、どこかからか侵入しては、要人を誘拐して殺害、その人物と外見から記憶まで全く同じのコピー(クローン)を作成していた。そしてそのクローンの心臓には爆弾が埋め込まれており、標的に近づくと反応し、大爆発を起こすのだ。

特殊兵器開発局の局長、スペンサー・オーラムは、ある日突然、政府の軍隊に拉致され、「お前はクローンだ」と言われる。この世界の掟では、捕まったクローンは生きたまま心臓を取り除かれて殺されるのだ。
そんな事はされたくないし、自分はクローンでは無いと信じるスペンサーは何とかしてその場から逃げ出し、“ゾーン”と呼ばれる貧民街に逃げ込む。
そして、そこで出会ったケールという若者と共に病院に潜入し、全身のスキャニング検査をして、そのデータを過去の検査データと比較して、自分が本物である事を証明しようとするのだった。

(感想)
フィリップ・K・ディック原作の近未来SFサスペンスアクションです。
この映画での未来像は、ハイテクの溢れる未来的な街の他、現代の荒れてる地区となんら変わりの無いような貧民街が存在しているという、『マイノリティ・リポート』のような未来世界になってます。
ですが、『マイノリティ〜』とは一ヶ所大きく違う点があります。それは、現在、人類が異星人と交戦状態にあるという点です。その為、都市は全て、巨大なドームで覆われていて、そのドームの材質はどうも電磁バリヤーとか、そんな類いのもののようです。まさにSF的な世界観ですね。
冒頭では、その戦いの歴史みたいなのがちょこっと映されるんですが、その映像の中に『アルマゲドン』の流用シーンが含まれていたのを発見してちょっとビックリ。てっきり、こういう“アクションシーンの流用”というのは、B級未公開映画界専用の技なのかと思ってました。
また、確信は無いものの、『ボルケーノ』や『スターシップ・トゥルーパーズ』の映像も含まれてたような気がします。さらに、CG映像がチャチかったりと、何とも先行きを不安にしてくれるオープニングでしたが、本編のサスペンス・ドラマには手抜かりの感じられない、しっかりしたものになっていました。

その本編のストーリーですが、映画が始まって間も無い、序盤のうちに、「実は主人公であるスペンサーがクローンである」と告げられてしまいます。クローンが作られた場合、そのオリジナルはその場で殺されるというルール(?)なので、某映画みたいにゲイリー・シニーズがオリジナルとクローンの一人二役を演じる、という事にはなりません(主演がヴァン・ダムだったら、脚本を書き換えてまで一人二役をやったかもしれないですが・笑)。
ともかく、「主人公がニセモノ」とはまた、ハードな始まりですね。ですが、スペンサーは自分が本物である事を証明する為の逃避行を始めます。
そして、実はこの時点では、見ている我々には主人公が本物かクローンか、どっちだか分からないようになってるんですよね。スペンサーは「クローンだ」という事で捕まる事になるんですが、こいつらは何故か、特に本物かどうかの検査とかをせずに、完全に頭から「こいつはクローンだ」と決めてかかってるだけなんです。具体的な証拠が何も無いという、かなり杜撰な捜査なようです。
さらに、敵の隊長ネルソンは、これまでに10人、実はクローンじゃなかった人を間違えて殺している、という前科が語られたりするんです(それに対する弁明が、「10人殺したが、そのおかげで一万人救った」という、強気のものでした)。

そんなわけで、必死に自分の無実を証明しようと奔走する主人公を姿を見るにつけ、「クローンであってほしくない」と思うようになってきてしまいますね。でも同時に、「映画的に、きっとラストではやっぱりクローンだった事が明かされて終わるんだろうな」という思いもあったりするんですがね。

ゾーンと呼ばれる貧民街に逃げ込んだスペンサーは、黒人の男ケールと知り合い、一緒に目的地の病院に行く事になります。で、このケールという男、敵との戦闘が始まると、何とマーシャル・アーツっぽいような動きを見せるんです。まさか、こんなSF映画に格闘アクションシーンが出てくるとは思わなかったので、計算外のラッキーでしたね。ただ、ケール役の人は、その動きを見るかぎり、格闘技経験者かどうかは微妙な所ではありましたけどね。

(以下、ラストシーンについての感想。映画を見てない人は読まない方がいいです)

















ラストは中々衝撃的でしたね。まず、実は妻のマヤの方がクローンだったと判明した時点で一驚きですが、さらに、やっぱりスペンサーの方もクローンだった事が判明してしまいました。スペンサーが妻の亡骸を抱える時、宇宙船の中にあった“本物の死体”ではなく、“クローンの死体”を抱き抱えていたのは、自分もクローンだったからなのかもしれないですね。
ところで、確か爆弾は標的に近づかないと爆発しないのかと思ってたんですが、何で最後に爆発したんでしょうかね。標的は議長(だったっけか)じゃなかったんですかね。それとも、ネルソン他、ESAの隊員達を少しでも減らすのが目的で仕掛けられた爆弾だったんでしょうか?しかも、本物のスペンサーの死体を発見したのが引き金になったようにも見えたんですが・・・。

という謎を残したまま、主要登場人物が一気に死亡という、潔い(と言うのか・笑)ラストに。う〜ん、凄い結末でしたね。
一見、何の救いも無い完全なバッドエンドですが、スペンサーの導きで、病院から大量の薬を盗み出して来たケールが無事に生還していた事が判明しました。そして、その薬のおかげでゾーンに住む病人達は助かっていくわけですね。これで、まあ多少の救いはあったかな、といったところですかね。