監督:ガイ・ノーマン・ビー
製作総指揮:ロブ・コーエン
原案:ロブ・コーエン
ロン・マッギー
脚本:ロン・マッギー
出演:デニス・ホッパー(ロニー・パーネル)
ウィル・パットン(アーロン・パーネル)
フレッド・ウォード(ダリル・カーツ)
クリス・カーマック(マット)
ナディーヌ・ヴェラズクエズ(ジェシカ)
(感想)
『ファースト・スピード』なんてタイトルですが、『スピード』の前日談という内容ではありません。デニス・ホッパーの役も『スピード』の時とは全くの別人です(そんな映画だとは誰も思ってないか・笑)。
一見、『ワイルド・スピード』のバッタ物のようにも思える映画ですが、何気に大手のユニバーサルからDVDがリリースされていたり、製作にロブ・コーエンが関わっていたりするので、その辺の未公開バッタ物系の映画とは少々趣が違います。
強盗をして刑務所に入った祖父、そんな父親を憎んでいる刑事の父親、そして悩める現代の若者である息子の、親子3代に渡るドラマが描かれています。カーアクションよりも、このドラマ面の方が重視された内容になってましたね。
で、このドラマがまた面白かったですねぇ。むしろ、ストーリーに関しては『ワイルド・スピード』より全然良かったです。
そのストーリーの面白さもさることながら、この映画一番の見どころは「かつてない輝きを見せるデニス・ホッパー」でしょうね。もう、こんなにカッコいいデニス・ホッパーを私は初めて見ましたよ。
まず、冒頭は70年代のある事件から始まり、そこでロニーという若者が逃避行に失敗して警察にとっ捕まる事となります。ロニーは、「いかにも当時の若者」といった感じの、政府に反感を抱く反体制派な奴でした。
そして、現在のロニー役がデニス・ホッパーなわけです。初登場が出所するシーンなんですが、「あの若者が刑期を終えたらデニス・ホッパーになっていた」という点にまず惹かれるものを感じましたね。「これは、いい映画かもしれない!」とか思ったものでした。
ロニーの孫であるマットは、アンチヒーロー的な雰囲気の感じられるロニーに対して少なからず憧れを抱いていたようで、出所の時に一人で迎えに出向くほどです。
そしてロニーは、そんなマットの期待に応えるような人物なわけですよ。単なる「出所したての元犯罪者」とは風格の違う、70年代の伝説が新世紀に現れたかのような雰囲気の人物で、まさにデニス・ホッパーそのままみたいなキャラクターなんですよね。
最近、B級未公開映画でやる気の無い悪党を演じてたりする事が多いようですけど、この映画ではもう、登場時から、これまでに見た事の無いようなオーラと存在感を放ってましたね。
実の所、私はこの人の過去の映画をまるで見ていないんですが(一番古くて『スーパーマリオ』でしょうか・笑)、「何か、凄い人物だな」というのが感じられましたね。そしてこれは、劇中のマットも同じ事をきっとホッパー演じるロニーに対して思ってる事だろうな、とも思います。
そして、このロニーとマットには似てる所が多いんですよね。隔世遺伝なんでしょうか。で、この二人に、マットの恋人を加えた3人で、ロニーをハメた奴の証拠を探す、というストーリー展開となります。
一方、祖父と息子の間に挟まれた、ウィル・パットン演じるアーロンですが、この人は、犯罪者である父親のロニーを恨んでいて、また、息子のマットからは「真面目で口うるさい奴」という事で嫌われています。
ですが、事件の真相を知っていくうちに、憎んでいた父親に対する気持ちに変化が現れていく事となります。そして、そんなアーロンを同じく嫌っていたマットもまた、この一連の事件で精神的に成長したせいか、和解していく事となるんです。
終盤になってようやく、この3人が同じ場所に集まる場面が出てくるんですが、特に会話らしいものも無く、みんなでホームビデオを見てるだけというシーンなんですが、感動的なシーンでしたねぇ(まあ、それもただの意味の無いホームビデオじゃないですからね)。
一方、時々出て来るカーアクションシーンですが、その迫力は「カーアクションを売りにしていない、普通のアクション映画のカーチェイスシーン」と同程度のものです。まあ、要するにオマケみたいなものですね。
アクションはおまけですが、車自体には拘りがあるようでしたね。出所したロニーが、マットの乗る新車について語り合うシーンは、お互いに“車好き”という共通の趣味がある事が分かる、微笑ましいシーンでした。
また、ロニーのかつての愛車だった赤いGTOがストーリーに大きく関わってくる事となるんですが、中盤、マットが、悪者の罠により警察から逃げなければならない、という展開になった際に、乗り込んだ車が「最新版、GTO」なんですよね。しかも、逃げる途中で、黒だった塗装をしっかり赤に塗り替えたりします(笑)。
この、孫に引き継がれたかのようなGTOチェイスシーンは、見た目の迫力こそさほどでもないんですが(そもそも、チェイスしてた時は赤に塗り替える前でしたし)、背景に運命的なものが感じられて良かったですね。