監督:ジョセフ・ジトー
製作:ヨーラン・グローバス
出演:ゲイリー・ダニエルズ(ジェイムズ・ウェルフォード大尉)
マイク・ノリス(マイク・モートン軍曹)
ベントレー・ミッチャム(ドン・ニコルズ軍曹)
ジョン・リス=デイビス(イヴァン)
ミシェル・カペタ(ダイアナ・エリクソン衛生兵)
ゼブ・リバッチ(ユセフ・アルバニル)
敵の激しい攻撃にさらされながらも砂漠を突き進むジェイムズ達は、ついに偵察の一団が乗っていたジープを発見する。だがそれは、激しい攻撃で大破していたのだ。
実はこの付近に秘密のミサイル発射基地があり、その秘密を知られない為にも、平和維持軍だろうがなんだろうが、近くを通るものは片っ端から襲っていたのだ。
ジェイムズ達はその発射基地を探し出し、ミサイル発射を阻止しようとするのだった。
(感想)
ドルフ・ラングレン主演のアクション映画『レッド・スコルピオン』の監督が、今度はゲイリー・ダニエルズを主演に迎えて、また戦争アクションを撮った!というのがウリの映画(多分)。
舞台が中東の砂漠という事で、邦題が『デザート・スコルピオン』になったんでしょうね(しかも、本物のサソリが一瞬出て来るシーンもありました)。
しかしこの映画、上映時間の半分以上はそんなに面白くないという、少々困った映画でした。なぜかと言うと、ゲイリー演じるウェルフォード大尉が、「自分達はあくまでも平和維持軍の偵察隊なのだから、交戦は絶対許さん!」という態度をずっととっているからです。
なので、本来は銃撃戦に発展するはずの敵の攻撃シーンが、ただ銃撃や迫撃砲の中をジープで逃げ回るだけのシーンになってしまっているんです。それはそれで迫力がありそうなものですが、敵の弾が主人公の乗るジープに当たるわけが無いので、全部外れる事は目に見えてるわけです。
そんなわけで、緊迫感が無いわ、主人公側が全然攻撃しない事で見てる方もフラストレーションがたまるわの困った展開です。
そんなウェルフォードの部下に、「好戦的な軍曹」(マイク・ノリス演じるモートン軍曹)がいて、この人との対立というドラマがあったりします。で、このモートンが、ある局面で命令を無視して発砲してしまい、敵を一人殺してしまいます。ですが、コイツは別に銃を持っていたわけでもない、ただ騒いでいただけの奴だったんです。
しかも何故かコイツの妻が近くにいて、目の前で夫を殺された事で泣き崩れます。向こうの言葉でこっちを罵倒してくるのを、仲間のアラブ人ユセフが訳したところによると、先日、病気で子供達も失ってるらしいんです、この人。まあ、何て気の毒な事でしょうね。さらに「平和維持軍なのに人を殺すなんて!」と文句を言ってきますが、なら武器を構えた軍人に喚きながら迫るのはやめろと言いたい(笑)。
また、この場面では、背景に悲劇的な音楽を派手に鳴らしてくるんですが、あまりにクドい演出なんで逆に笑えたりします。
でも、この事件が原因で、モートンはすっかりおとなしくなってしまいます。これが、ラストの戦闘シーンで「思わず引き金を引くのをためらってしまう」という行動を誘発する結果となり、そのおかげでゲイリーのアクションシーンが一つ増える事となります(笑)。
あと、衛生兵の女性兵士がウェルフォードの元恋人という設定なんですが、こちらのドラマにはほとんど、と言うか全く触れられません。
映画の中盤辺りまで、「敵側の行動」を映すシーンが結構多くて、その間は当然アクション無しです。このように、アクション面でもドラマ面でも大した事が起こらないまま映画は進んでいくんですが、終盤の秘密ミサイル発射基地でのアクションシーンは、ようやくそこそこ面白くなってくれます。
今までは「反撃無し!」を貫いていたウェルフォードも、ここを潰さないと大変な事になるという事で、いよいよ攻撃命令を出してくれるんです。
基地は洞窟の中に作られてて、そこでは結構な数の敵がウロウロしてるんですが、そんな中をゲイリーらも中腰でウロウロします。どうやら、敵の正面に出なければ気付かれないというルールがあるらしいです(笑)。このように、“ある意味でも”面白いシーンになってる所がいいですね。
また、銃を使うと敵にバレるという事で、ここでようやくゲイリーのマーシャルアーツが見られます。まあ、「待った甲斐があった!」という程の量ではないんですが。
と、こういう映画なので、ゲイリーファン以外は手を出さない方がいい、という感じの映画ですね。ゲイリーファンにとっては、このラストのアクションでレンタル料の元はとれると思います(300円以下ぐらいなら・笑)。
ところで、エンドクレジットの前に、主人公達のその後が語られるんですが、その中の一人、ニコルズ軍曹が、後に脚本化になってこの映画の脚本を書いた、という事になってました。これは、この映画が“実話の映画化”という事なのか、それとも“実話の映画化っぽくしてみた”のか悩むところです。
ただ、どうも、エンディングで主人公達のその後が語られるというのは『スリー・キングス』をパクってるんじゃないかと思われるので(製作時期的にも)、それをちょっと捻って実話の映画化を気取ってみたのでは、という感じはします(笑)。