メルトダウン
<MELTDOWN>
04年 アメリカ・ドイツ合作映画(テレビ用) 90分

監督:ジェレマイア・S・チェチック
出演:ブルース・グリーンウッド(トム・シェイ捜査官)
   アーノルド・ボスルー(カリード/エディー・サンズ)
   レスリー・ホープ(ゾーイ・コックス巡査)
   ジェームズ・レマー(ボッグス大佐)
   ビル・マンディ(リッチー捜査官)
   ブレント・ステイト(ホール)
   ディエゴ・デル・マー(ラウール・リーダ)

(あらすじ)
カリフォルニアのサンファン原子力発電所が、イスラム系テロリストグループに乗っ取られてしまった。もし炉心を融解させられたら数十万人の市民が命を落とす事となる甚大な被害が出てしまう。政府は発電所周辺数キロの住民に避難勧告を出すなどの対応をするが、各地で暴動が発生して都市が大パニックになるのだった。

FBIのトム・シェイ捜査官が事態解決の為に指揮を執る事となるが、今回の事件が普通のテロ事件とは違う事に気づく。そして、突入によって早期解決を目論む政府や軍と衝突する事となるのだった。

一方、発電所内でただ一人テロに見つからずに残った女巡査のゾーイは、シェイと連絡を取りながら内部で調査を始める。そこで、驚くべき事実を発見するのだった。

(感想)
これまで、色々な施設を乗っ取って来たテロリストグループですが、今回は原子力発電所を乗っ取ってきました。
と言う訳で、発電所を舞台としたドンパチが繰り広げられたりするのかな?とか思っていたんですが、この映画、実はアクション映画じゃないんですよね。 ではジャンルは何なのかというと、「前半はパニック映画、後半はポリティカル・サスペンス」といった感じになります。
前半部分は、リアリティを追求した作りになっていて、「もしも実際にこういう事態が起こったら、政府は、アメリカはどういう行動をするのだろうか?」というのをシミュレーションしてるような展開を見せてきます。
また、映像もドキュメンタリーを意識したような感じになっていて、ほぼ全編、手持ちカメラによるブレた映像になっています。それに、モノクロで荒れた画像を挿入してきたり、劇映画ではあまり見ないような変なズームが出て来たりします。そして、定期的に挿入されるニュース映像によって、現在の社会的な状況を見せてきます。
こういうテロリスト物のストーリーを、リアルなパニック映画風に演出してくるというケースはこれまであまり見た覚えの無いものなので、かなり新鮮で面白かったですね。特に、ニュース映像のリアル感は、まるで実際に今起こっているニュースを見ているかのような臨場感があって、恐ろしいぐらいでした。9・11テロが起こった時に、ニュース番組にかじりついて見ていた時の事を思い出してしまいましたね。
特に、そのニュース番組において、各方面の専門家が現れてあーだこーだと語ったりする辺りにはかなりのリアル感がありました。日本でも大事件が起こると見た事も聞いた事も無い専門家がニュース番組に登場したりしますからね。

主人公は、銃やカンフーでテロに立ち向かうようなタイプではなく、FBIのテロ対策専門の捜査官としてリアルに事件に対処していく事となります。武闘派じゃない分、実に頭のキレる男という設定で、この事件がいわゆる「テロ事件」とはどこか違うという事に気づく事となります。
実は、このイスラム系と思しきテロリスト達には、ある驚くべき目的があるんです。たったの数人のテロリストが、あっさりと発電所を占拠してしまった事にも意味があったんです(決して、突っ込み所ではありません)。
ネタバレすると、これから見る時に面白さが半減すると思うので詳しくは書きませんが(まあ、この映画をこれから見ようという人がどれだけいるかは不明ですが・笑)、こういう展開になるとは思ってもみなかったんで驚きましたね。そして、「もしこれが現実だったら?」と思うと、そら恐ろしいものを感じずにはいられませんでした。テロリスト達の計画が恐ろしいのではなく、「なぜそんな事を思いつき、実行するに至ったのか」の原因に恐ろしさを感じてしまいます。

中盤以降は社会派サスペンスみたいな感じの展開になっていき、「見てる人に一時の娯楽を提供するだけではなく、見た人に考えてもらいたい、確固としたテーマ性を持った映画だ」というのをアピールしてきます。
サスペンス描写もなかなか見事で、前半とはまた違った緊迫感に満ちていましたね。見ていて、ジャック・ライアンシリーズや『24』、『ザ・ロック』辺りの影響が感じられる展開を見せてきて、普通に、テロリスト物のパニック・サスペンスとして見ても十分楽しめる内容だと思います。
キャストも、『13デイズ』のブルース・グリーンウッドに、『ハムナプトラ』のイムホテップ役でお馴染みのアーノルド・ボスルー、『24』第一シーズンに出ていたレスリー・ホープ(またテロリストに関わる役なんですね・笑)と、割りと豪華です。
テレビ用の映画ですが、個人的には映画館で見たとしても満足出来たんじゃないかと思うぐらい、よく出来た映画でしたねぇ。