監督・共同製作:マーク・ディサル
出演:ジェフ・スピークマン(ジェフ・サンダース)
ジョン・ダイ(アダム・サンダース)
マコ(キム)
ジェイムズ・ホン(ヤン)
マリスカ・ハーギダイ(ジェニファー)
(感想)
肉体派スター、ジェフ・スピークマン衝撃のデビュー作です。定期的に挿入される格闘シーンで見事な技を披露してくれます。
ジェフの使う技は(役名も、演じる俳優の名前もジェフだ・笑)あらすじには「空手」と書いてありますが、劇中では「拳法」となってます。口でもちゃと「ケンポー」と発音していて、この拳法を極めた者は、空手を極めた者よりも強いらしいです。
ジェフの師匠は、熱血漢で頭に血が上りやすいジェフの動きを「虎」に例えます。これをさらに極めると「竜」になるらしいです。このシーンは冒頭のジェフの青年時代の回想シーンで出てくるんですが、現在のジェフが相変わらず「虎」な動きだったりします。最終的にはジェフも人間的に成長して、「竜」の段階になるみたいな話なのかなと思ったら、そうでもないという(笑)。
基本的にはスピークマンのアクションがメインの映画で、敵討ちが目的という、昔のカンフー映画みたいな作りなんですね。
とにかく、余計なキャラや心理描写などは極力省かれています。ビデオパッケージのキャストのところに書いてある、マリスカ・ハーギタイという人の演じるジェニファーというキャラクターも思いっきり省略されたキャラになってます。少年時代の回想シーンから出てたキャラで、現在のシーンでも姿を見せるんですが、セリフは一切無しで、もはや何のために出てるのか不明なほどです。パッケージを見る限り、主人公の恋人役のような感じなんですが・・・。
また、ジェフの弟が、父の跡を継いで刑事になっていたという辺りもサラっと流されます。ジェフの方は父から家を追い出されているので、この家族の間で何か一ドラマあってもよさそうなものですが、「そんなものはこの映画には不要」とばかりに、特に触れられることのないまま話は進んで行きます。
ドラマを削ぎ落としていった結果、残ったのはスピークマンのアクションのみというわけですね。「主人公にドラマ的にものが無いんじゃ感情移入できないし、そういうのは映画としてどうだろう」と思う人もいるかもしれませんが、この映画に、主人公への感情移入など不要です。ただ、画面上で繰り広げられるスピークマンの立ち回りに驚愕し興奮するための映画なんですから。だから、見る人を選ぶタイプの映画と言えなくもないですけどね。
劇中、「拳法」と言われている、スピークマンの格闘スタイルですが、この、連続攻撃主体の動きはかなり映画的に映えますね。フィニッシュによく用いる回し蹴りもとっても華麗です。
からんで来た町のチンピラをのすという、この手の映画でよく見かけるシークエンスが出てくるんですが(いわゆる、デモンストレーションなんでしょう)、この映画では4人のチンピラにジェフが囲まれるという状況になります。しかし、僅か数秒(多分5秒無いかも)で全員倒してしまうんですから、凄い。
この後も、聞き込みに入ったテコンドーのジムで繰り広げられる、拳法対テコンドーの異種格闘技戦も見応えタップリです。
単身、バーや敵のアジトへ殴り込みをかけるシーンや、ラストのケリー・ヒロユキ・タガワとの一騎打ち(でも秒殺してしまう!)など、超絶アクションが次々に展開されていきます。
でも、正直言うと、まだ物足りないという感じもあるんですよね。マーク・ダカスコスの『ドライブ破壊王』やジェット・リーの『キス・オブ・ザ・ドラゴン』のような、「完全にやり切った」感があまり無い気がするんですよね。まだまだこれはスピークマンのフルパワーではないような感じが・・・。でも、この後の出演作の中でも、この映画が一番アクションが多いんですよね。誰か、スピークマンをうまく使える監督なり製作者が現れてほしかったです。