監督・共同脚本:デビッド・トゥーヒー
原案・脚本:ジム・ウィート
ケン・ウィート
音楽:グレアム・レベル
出演:ヴィン・ディーゼル(リディック)
ラダ・ミッチェル(キャロリン・フライ)
コール・ハウザー(ジョンズ)
キース・デイビッド(イマム)
ルイス・フィッツジェラルド(パリス)
クローディア・ブラック(シャザ)
リアンナ・グリフィス(ジャッキー)
ジョン・ムーア(ジーク)
サイモン・バーク(オーウェンズ)
生存者達はリディックの影に脅えながらも、水と、かつて人の住んでいた居住区、それに脱出用の宇宙船を見つけた。その脱出艇はバッテリーが無く、動かすことが出来ないが、乗って来た宇宙船のを使えば動かす事が出来そうだった。
そんな折、ひょんな事からリディックの捕獲に成功した。だが同時に、生存者の一人が小さな洞窟に引き込まれて行方不明となる。その洞窟の中を調べてみると、謎の凶暴生物が大量に潜んでいるのだった。この星には、生者にとって、リディックよりも脅威となる存在がいたのだ。
その生き物は光を恐れ、暗闇の中でしか活動出来ないが、この惑星には数十年に一度、惑星直列による日食が起こる事が判明。そして、運の悪いことに、今日がその日食の起こる日なのだ。
かくして、太陽は隠れ、闇の世界が訪れた。謎の生物達も巣から大挙して出てくる。だが、闇の中のその光景を唯一見る事の出来る人間がいた。かつて手術により、両の目を暗視用の目に変えていたリディックだった。
(感想)
新生マッチョヒーロー、ヴィン・ディーゼルが魅力的なアンチヒーロー、リディックに扮したSFアクション・ホラーです。
ジャンル的には『エイリアン2』の流れを汲むタイプですが、ストーリーはかなり捻ってあります。護送中の犯罪者リディックがまるで危険人物のように描かれていて、怪物以外にも脅威となる者が存在してるんです。まあ、実際は「見かけは怖いが、実は気のいいあんちゃん」という、いつものヴィン・ディーゼルなんですけどね(笑)。
ともかく、そんな危険人物リディックが仲間にいるというだけで、かなり他のこの手の映画と雰囲気が違ってきますね。と言うのも、ただのアンチヒーローキャラというだけでなく、「光が苦手で、暗闇を見通せる」という、敵と同じ能力を持っているんです。『エイリアン2』で言えば、マイケル・ビーン辺りが、酸性の血液を出すようなものでしょうか(ちょっと例えが違う気がしますが・笑)。
ストーリーやキャラ設定、美術面や映像なんかもなかなかのハイレベルで、「謎の星で謎の生物に襲われる」という単純な話を、かなり面白く見せてくれます。序盤から中盤にかけての、舞台となる星の謎がだんだん解かれていく辺り。そして、日食が訪れて辺りが暗くなり、エイリアン達が闇の中ワラワラと巣から出て来ている様を一人、特殊能力で見ているリディックの姿など、見ていて緊張と興奮がいい具合に高まっていきます。
ですが、その後の展開がどうも思ったより盛り上がっていかないんですよね。絶対的な脅威かと思った大量のエイリアンですが、太陽の光どころか、ライトの明かりで追い払う事が出来るので、意外に簡単に夜闇の中を進む事が出来るんで、リディックの特殊能力が、必ずしも生存者達にとって必要なものじゃないんですよね。
それに、『ディーブ・ブルー』で“水”が恐怖の対象となったように(水=そこにサメがいる、となるため)、この映画では“闇”が恐怖の対象となるべき所なんですが、主人公がその肝心の闇を見通す事が出来る設定のせいで、闇に対する恐怖感が無くなってしまってるんです。
その代わり、リディックの“カッコよさ”はより引き立てられてましたけどね。何しろ、本来脅威となる“闇”を見通してしまえるんですから。これは、『ディープ・ブルー』の登場人物の中に「水中の方が機敏に動ける」という能力を持った奴がいるようなものですね(この例えは結構合ってるかも・笑)。
ちなみに、「リディックの特殊能力が必要じゃない」と書きましたが、リディックが凄いのは特殊能力があるという点だけではなく、それ以前に、サバイバル能力というのがずば抜けているんです。なので、結局、生存者達にとって、この悪夢の事態から生きて抜け出す為には、凶悪犯リディックは絶対必要な存在ではあるんですよね。ですが、困った事にリディックは清く正しいマッチョではなく、基本的には自分中心な、アンチヒーローなマッチョです。油断したら一人でとんずらしかねないというサスペンスもあったりします。
さて、肝心のクリーチャーですが・・・。どうも、良いんだか悪いんだかよく分からない、微妙な奴らなんですよね。外見はまあ悪く無いですし、殺傷能力もかなりのもので、空から襲ってくるところなんて、そのまま『スターシップ・トゥルーパーズ』にも出られそうなぐらいです。
ですが、「いつ襲ってくるか」というのが、どうも曖昧なんですよね。ライトが消えて光が無くなったら途端に襲われてしまう、というわけでもなく、ライトを照らしていても、光の当たって無い背中とかを目がけて襲ってくるという事もしてきません。
予告編でお馴染みの、暗闇の中で一瞬炎が上がったら、大量の怪物に囲まれていた!というショッキングなシーン。ここも、暗闇に包まれてから炎が上がるまでちょっと間があるんですよね。その間、なぜこいつらは襲って来ないのかが不思議でしょうがないんです。
どうも、その理由は、「そういう性質だから」というより、監督なり脚本家の都合で襲ったり襲わなかったりしてるように感じてしまうんですよね。この、怪物の習性が曖昧に感じられるという所が、後半、盛り上がりに欠けるように思ってしまった一番の原因かもしれないですねぇ。