ランボー3/怒りのアフガン
<RAMBO V>
88年 アメリカ映画 100分

監督:ピーター・マクドナルド
製作総指揮:マリオ・カサール
共同脚本:シルベスター・スタローン
音楽:ジェリー・ゴールドスミス
出演:シルベスター・スタローン(ジョン・ランボー)
   リチャード・クレンナ(トラウトマン大佐)
   マーク・ド・ジョング(ザイセン大佐)
   サッソン・ガーベイ(ムーサ・ガニ)
   カートウッド・スミス(ロバート・グリッグス)
   スパイロス・フォーカス(スマード)

(あらすじ)
タイで暮らしていたランボーの元にトラウトマンが現われ、ソ連の占領下に置かれているアフガンへの潜入作戦に同行して欲しいと頼んでくる。「俺の戦争は終わった」と一度は断ったランボーだが、後日、トラウトマンがまんまと敵にとっ捕まったと聞くと、トラウトマン救出の為にアフガン行きを決意するのだった。

(感想)
アクション映画の3作目は、やたらと派手になるか、前2作と違った面白さを出そうとして失敗するかのどちらかになる事が多いですが、この映画は前者のタイプでしたね。アクション度の凄さはシリーズ中最高どころか、全アクション映画の中でも上位に来るぐらいのとんでもないレベルに達してしまいました。
もう、映画の半分以上がアクションシーンです。しかもアクションの無いシーンはほぼ前半に固められているので、中盤前辺りでアクションが始まると、後は終わりまで延々アクションシーンです。そしてそんな中、スタローン=ランボーがフルパワーで大暴れをするんだからたまらないです。
一応、前2作同様、現実の社会情勢を取り入れた脚本という、社会派な側面を覗かせている映画ではあるんですが、もう、あまりにアクション度が高すぎて、この映画を“社会派アクションだ”なんて言ってる人はほとんどいないでしょうね。それに、映画が完成し、公開する頃には現実の社会情勢が大きく変わっていたというのも痛いところでした。
でも、もし舞台が架空の地で、敵も架空の国だったなら、そのストーリー自体は別段、おかしくも珍しくもないものなんですよね。

まあ、それにしてもこの映画のスタローンのアクションはほんと凄いです。
まず、強力な重火器で銃撃をしている時の壮絶な表情と、その扱い方ですね。もう、強力な武装があまりに似合いすぎてます。ロケットランチャーがここまで似合う人もそういないでしょう。ただ「構えて発砲する」「担いで砲撃する」だけなら誰でも出来ますが、それだけではなく、まるで長年使ってきた相棒のようなフィット感があるんですよね(“リアル”かどうかは関係無しに)。重火器だけでなく、あのアホみたいにデカいナイフもよく似合ってました。
忘れてはいけないのが、前作から引き続き登場の弓矢ですね。この弓矢の構え方がもはや“美しい”というレベルにまでなってますね。
さらに、走ったり飛んだりといった、体を張ったスタントアクションも多数見せてくれます。そして、その動きの速さには驚かされますね。下手したら、当時のハリウッドで最速なんじゃないだろうか。特に馬に乗るところなんて凄いです。馬の脇に立って乗る体勢を整えた次の瞬間にはもう馬上にいるんですから。
この映画で、スタローンのアクションスターとしての実力がどれぐらいのレベルなのかがよく分かりますね。それに、数多くいるアクション俳優の中でも「全編フルパワーで暴れる映画」を作ってる人はあんまりいないですからね。

さらに、本人のアクションが凄いだけでなく、ランボーというキャラクターがまたいいんです。前2作はベトナム帰還兵で元戦争の英雄というキャラでしたが、今回は、まるで“流れの戦士”という感じがあるんですよね。普段の立居振舞なんかも、軍人や兵士と言うよりも戦士と言った方が近い感じです。
戦闘力自体、前作よりさらに強力になってるような感じですね。超人というより、鬼神とでも言うのか。
前作もそんな感じではありましたが、今回はもはや人外のレベルまで行ってましたね。ですが、そんな人外アクションをしてる時の表情が凄く一生懸命なところがいいんですよね。これのおかげで、「神のパワーか何かで動いてるんじゃないのか」という妙な印象を持つような事が無くて、全て魂と根性で動いてるような感じに見えるんです。これにより、「魂と根性を入れれば、見てる自分もあんな真似が出来るんじゃないか」と錯覚してしまうような印象があるんですよね。なので、この映画を(楽しく)見た後の人は、普段より戦闘力が倍ぐらいに上がってそうです(笑)。
そんなキャラなので、他のヒーローに比べて“ダメージを受けた後”の動きにも迫力があるんですよね。「腹に爆破で飛んできた破片が突き刺さってるのに根性で走り回ってる」姿の迫力はもう怖いぐらいです。終盤も、足を撃たれたにも関わらず、「まさにこれからが本番」といった感じの活躍を見せますからね。
それに、セガールみたいに「貫通したから何のダメージも無い」というわけではなく、「確実にダメージを受け、痛がってるのにまだ超人的に動いてる」んです。いやぁ、こりゃ凄いですね。とんでもないです。

そして、そんなランボーの力を最大限に引き出す、“全編アクション!”というこの映画の内容!これはもう、まさにアクション映画馬鹿の為の映画ですね。
あと、そんなランボーのアクションをしっかりと見せてくれた監督の手腕も見事でした。どうも、当初はラッセル・マルケイが監督をしていたのに、スタローンと意見が衝突して降ろされたらしいですね(それで第2班監督だったピーター・マクドナルドが監督に昇格)。きっと、また、MTVチックな凝った演出でもしてしまったんでしょうね。そういう映画もいいですが、さすがに『ランボー』には合わないでしょうからね。

ところで、これまで、各地でランボーの恐ろしさを吹聴するだけだったトラウトマンが、今回はランボーと一緒に戦場で戦うハメとなりましたね。ですが、ランボーを育てたという割りには、あんまり強くない人だったようで(笑)。まあ、普通の大佐ぐらいの戦闘力はあるのかもしれないですが、ランボーの相棒としては力不足の感は否めなかったですね。ランボーの相棒が務まる大佐は、世界広しといえども“ブラドック大佐(もしくはマッコイ大佐)”ぐらいしかいないでしょうね(笑)。
それにしても、何でこの人はランボーの事を感情の無い冷徹な殺人マシーンのように言うんでしょうね。そんな男じゃないのに。それとも、相手をビビらせる為の作戦なんだろうか。