監督:アート・カマチョ
出演:ゲイリー・ダニエルズ(レイ・モーガン)
トム・コパッチ(トレント)
リチャード・フォロニー(ビンセント・スローン)
グレゴリー・A・マッキニー(ルーカス)
ロビン・カーティス(ジュリア・スローン)
ビリー・マドックス(ブラウン)
(感想)
邦題の通り、復讐物の映画なんですが、ストーリーにはそこはかとなく、“復讐”という行為に対する空しさと、それを生み出す原因となる“暴力”の無益さのようなものが感じられます。
冒頭、覆面強盗達による銀行襲撃事件が発生し、人質は殺すわ、警官を射殺するわ、巻き添えで市民の犠牲を出すわの大惨事を巻き起こします。
で、犯人は結局全員射殺されるわけなんですが、そのうちの一人が復讐の本場であるところのマフィアの息子だったからさあ大変。この息子の射殺に関わった刑事5人に対してマフィアの復讐が始まるわけです。
ですが、復讐される側には、敵を蹴り殺してなんぼの武闘派、ゲイリー・ダニエルズがいたからさあ大変。仲間や妻子を殺されて怒ったゲイリーが逆襲に赴き、数十人はいるであろう手下共を含めて皆殺しにしてしまうわけですよ。
まさに、復讐が復讐を呼び、死人の山が築かれる。という状況ですね。確かに、身内を殺されたら復讐したくなるという気持ちも分かります。でも、それでいざ復讐を実行したら、このように延々とキリの無い復讐合戦が始まり、本来死ななくても良かったような人までもが犠牲になっていくわけです。
ここで、何が原因でこうなってしまったのか、どうすれば防ぐ事が出来たのか、という疑問が出て来るわけですが、やはり問題なのは、一番最初に「銀行強盗」という暴力事件を起こした奴です。こいつらがこんな事件を起こしていなければ、当然その後には何も起こらなかったわけですからね。一度事件を起こしてしまえば、警官達がこいつらを「射殺して止める」という行動に出るのは、事件の性質上やむを得ない事です。
要するに、「犯罪は起こすものじゃない」という事ですね。この辺の「暴力の無益さ」的な事は、オープニングクレジットの場面で、ラジオDJの口を借りて語られる事となります。
といったストーリーの映画なんですが、このテーマを真面目に語ってみようという気はどうもあんまり無いらしく、メインに描かれるのは“アクションシーン”だったりします。なんといっても、B級アクションですからね。そういう、「考えさせられるような点」は軽く流す程度でいいんですよ。あとは見た人が勝手に考えればいいだけの事で。グダグダとテーマを語るのは社会派映画にまかせておけばいいんです。
そんなこの映画のアクションですが、ある特徴があります。それは、描写がやたらしつこいという事(笑)。
映画の前半の約15〜20分ほどは、銀行前での銃撃戦と、逃げた犯人の一人を追いかけるカーチェイスしか出てきませんからね。もう、銃声やパトカーのサイレンがBGMと化してるような状況です。
本来なら、主な登場キャラの人物紹介的なシーンとか、メインストーリーに絡む伏線とか出ててもおかしくない時間帯に、「銃撃とカーチェイス」しか出て来ないというこの前半戦。ここまでやるともはや驚異的ですらありますね。
また、銃撃シーンでは、敵の撃った弾は自らの意志で避けてるとしか思えないぐらい、主人公に当たりません。至近距離で撃っても掠りもしません(笑)。しかも、お互い、銃が「無限弾モード」になってるらしく、何発撃ってもリロードの必要がありません。
カーチェイスでは、爆発炎上した車が天高く舞ったりしますし、トラックの追突から逃れる為に車から大ジャンプで脱出する主人公を釣るワイヤーが見えてたりします。
そして!クライマックスで登場するゲイリーのマーシャルアーツ大会!もはやマフィアの手下と言うより、スタントマンにしか見えないような連中が次から次へとゲイリーに襲い掛かって来ては、投げられたり蹴り飛ばされたりしていくんです。
といった、まさに「B級アクションの真髄、ここに極まれり」といったアクションシーンが、それぞれ無駄に長く出て来るわけです。このしつこいアクション映像のオンパレードっぷりには、見終わった後「ご馳走様でした」と言いたくなる事必至です。
このように、ストーリーとアクションがまるで噛み合っていない映画ですが、私は嫌いじゃないですね、こういうの。一つ難点を言うとするなら、アクションシーンの演出に少々迫力が足りない点でしょうかね。せっかくアクションシーンに長い時間を割いてるんですから、もうちょっと見せ方に工夫を凝らせた、見てて飽きないアクションシーンになっていればなと思ってしまいます。