監督・撮影:ドン・E・ファンルロイ
製作:スティーブ・セガール
出演:スティーブン・セガール(サイモン・バリスター)
エディ・グリフィン(アーマンド・タッカー)
カーク・B・R・ウォーラー(フランク・ショウ)
カルメン・セラーノ(アリス・パーク)
コリー・ハート(マックス・バリスター)
ダニー・トレホ(エル・チボ)
(感想)
息子を殺された報復の為、セガールが黒人ギャング団と対決するというストーリーで(真犯人はまた別にいるんですけど)、普通の映画なら恐怖の対象となるところのギャング団が、セガールに次々と酷い目に遭わされていきます。むしろセガールがギャング団にとっての恐怖の対象なんですが、こいつらアホだから、セガールがどんなに危険なのか死ぬまで気付かないんですよねぇ。
私は基本的に「悪党がぶち殺されるのを見るのは爽快だ」というような考えを持っていますが、今回はもう、悪党の方が気の毒に思えてきてしまいましたよ。心の中で何度悪党連中に向かって「ヤツと関わっちゃダメだ!逃げて!」と叫んだことか(笑)。
それにしても、セガールは強いですねぇ。何を今更な話ですけど、改めてそう思ってしまうような、無敵の快進撃っぷりですよ。セガールの大暴れで黒人ギャング団の縄張りである町に大混乱が起こる様は、ほとんど、怪獣が暴れる事で起こる混乱と同じような感じでしたからね。
あと、セガールのその独自の倫理観もとっても素敵でした。最近、「報復はまた報復を呼ぶだけで、キリがない」という世論じゃないですか。いや、実際にその通りだと私も思いますけど。で、この事を劇中でセガールも指摘されて、「あなたも、奴ら(人殺しのギャング団)と同じよ!」と言われるんですけど、それに対する返答が「いや違う。オレは奴らよりも、もっとワルだ。」でしたからねぇ。言ってのけてしまいましたよ。この男にはもはや説得も不可能なのか。
主人公がそんな倫理観で動いている映画なので、もう、バイオレンス!バイオレンス!バイオレンス!みたいな内容になってくるんですよね。すげぇなぁ。
このように、かなり暴力的な映画ですけど、今回はちゃんと悪党以外は殺さなかったんで(最近は、悪党以外の、その場に居合わせただけの人も殺す時がありましたからね)、私としては、「これぞ正しい暴力の使い方だ」と大喜びでしたね。
そもそも、黒人ギャング団のリーダーも、「息子の殺害には関わってなかった」という理由で殺されずに済みましたからね。このリーダー、かなり凶暴凶悪なキャラクターで、もう、ほんとワルくて危険な男なんですけど、最後はセガールの「あまりに豪快なクールさ」を目の前で見せ付けられて、すっかりリスペクトしてしまってましたからね(笑)。
要するに「悪党の親玉すらにも畏敬の念を抱かせる」という存在なわけですよ。すげぇなぁ。
ちなみに、この黒人ギャング団と敵対してる組織というのが存在してまして、そこのリーダーが何故かダニー・トレホです。で、最初の頃に、「トレホ軍団が息子の死に関わってるらしい」という話を聞きつけて、一人でトレホ軍団が根城にしているバーに突貫していくんですけど、そこでは全然暴れるような事もなく、トレホと一対一で酒を酌み交わして話し合う、という展開になるんですよね。やっぱり、トレホクラスにもなると、セガールと分かり合う事が可能なんですね。
と、セガール映画としては色々と見るべき点の多い映画で、実際、ファンからの評価もかなり高い一作のようなんですけど、ただ、アクション映画としてはちょっと、難が多い映画でもあるんですよね。
まず、アクションシーンの演出が全体的に単調なのと、何故か画面が暗めで見辛いんです。映画館で見た時に「妙に暗いけど、きっとDVDで見たらある程度は鮮明になってるんだろうな」と思っていたら、DVDでも暗いままでした。
セガール拳を行使するシーンも、何か、「セガールが腕を振り回しただけで、敵が勝手に吹っ飛ぶ」みたいな感じの、あんまり迫力の無いアクションになってるんですよね。セガールの無敵さだけはしっかり伝わってきますけど。
まあ、「明らかな代役使用シーン」というのが無かったのは良い点でしたけど、でも、これなんて、言ってみれば当たり前の事ですからね。
セガールのキャラクターをよく捉えた、いい内容の映画だったんで、余計に「もっとアクションシーンにこだわってくれたら、凄い映画になったかもしれないのに」と思ってしまいますね。