リベンジ
<REVENGE>
90年 アメリカ映画 124分

監督:トニー・スコット
製作総指揮:ケビン・コスナー
原作・脚本:ジム・ハリソン
出演:ケビン・コスナー(ジェイ・コクラン)
   アンソニー・クイン(ティビー・メンデス)
   マデリーン・ストウ(ミリア)
   ジャクイン・マルティネス(マウロ)
   ミゲル・フェラー(アマドール)
   ジョン・レグイザモ(イグナシオ)
   ジェームズ・ギャモン(弱ったおっちゃん)
   犬(ロッキー)

(あらすじ)
空軍の戦闘機乗り、ジェイ・コクランは、軍を除隊し、自由な民間人の生活に戻った。
メキシコの大物政治家メンデスの友人であるコクランは、彼の招待を受け、メキシコのメンデス邸に行く。そして、メンデスの異常に歳の離れた妻、ミリアに一目惚れしてしまう。一方、ミリアの方も、いつもメンデスとその同類的な仲間達しか周囲にいないという環境にいる為、自由奔放で二枚目なコクランに惹かれていくのだった。
そしてついに、メンデスにイタリアの姉の元に行くと嘘を言い、コクランがメキシコでの別荘として買ってあった荒野の中に一軒たたずむ小屋へ愛の逃避行をおっ始める。
行く道中から、小屋に着いて寝るまで、二人でヤリまくり三昧。だが、二人の愛のランデヴーに感づいていたメンデスが部下を引き連れて乱入。コクランの愛犬ロッキーを射殺し、コクランをボコボコにして荒野におっぽりだし、コクランの小屋(別名、愛の巣)を燃やし、ミリアの顔にナイフで大きな傷をつけた後、娼館に売り渡してしまう。さらにサービスでヤク漬けにもするのだった。

その後、謎のメキシコ人に助けられたコクランは、ミリアを救出し、メンデスにリベンジする為に復活を果たすのだった。

(感想)
前半の1時間と後半の1時間とで、ほとんど別の映画かと思ってしまうぐらいに内容が変わります。前半は男と女の愛のお話しという、アクション映画かと思って借りた私は、「つかまされた!」と思ってしまうような展開でした。いやぁ、これが最後まで続いたらどうしようと、見ながら不安でしたねぇ。
ですが、「旅先で、友人(と言っても爺さん)の美人妻(夫との歳の差は親子以上)に惚れ、相思相愛の仲になっていき、友人の目を盗んでは密会・・・」というストーリーは、何かちょっと「男の妄想チック」な感じで、自分がケビン・コスナーになったつもりで感情移入しながら見ていると、もしかしたら、ちょっと楽しい気分になったかもしれません。
ですが、個人的にはこういうシチュエーションにはあんまり燃えない質なもので、やっぱり見ていて退屈ではありましたね。残念。

そして、ラブラブの二人は一軒のとある小屋に来て、「さあ、今夜は朝まで!」的な状況となります。
見ていて、正直「もう勘弁してくれ」と思い始めたその時!メンデスが部下を引き連れてやってきて二人の仲を引き裂いてしまうんです。
本来なら、「よくやった!」ぐらいの事を思ってしまうところですが(普通はそんな事は思わない・笑)、こいつら、あろうことかケビン演じるコクランの愛犬をショットガンで撃ち殺しやがるんです。イケナイ事をしていた二人が酷い目に遭うのは自業自得ですが、このワンちゃんには何の罪も無いというのに!
というわけで、後半ようやくスタートするこの映画のタイトルである所の「復讐」劇が始まった時も、「でも、もともと原因を作ったのはオマエだしなぁ」みたいな事は考えずに、「さあ、お犬の復讐を果たしてやれ!」という感じで見て行く事ができましたね。
ただ、この犬に関しては、殺されて以来、劇中では一言も触れられずに忘れ去られてしまってるんですが(笑)。

そして、この後半の「復讐編」から面白い登場人物が増えます。まず、途中、行き先が同じという事で車に乗せてくれた男。この男、登場した時から変に弱っていたんですが、ある晩、「女と遊んでくる」言って出て行き、次の朝、なぜかボロボロに弱った状態で登場します。しかも何だか分からないまま、そのうち助手席でポックリ行くという始末。何なんでしょう、このキャラ(笑)。

こんなのだけでなく、ちゃんとストーリーに関わるキャラも出ます。コクランが瀕死の状態でいたところを助けてくれたマウロという人物が出るんですが、後にこいつの知り合いと名乗る男がコクランの元を訪ねてきます。アマドールという名前のこの男、敵に回したらとっても厄介そうな、殺し屋みたいな奴です(正確な職業不明)。さらに、こいつの姉がマウロの妻で、そして過去にメンデスに殺されている、という事実が判明。アマドールもコクラン同様(と言うか、それ以上に)メンデスを恨んでいるんです。
そして、アマドールのいとこ、有名になる前のジョン・レグイザモ演じるイグナシオの3人でミリアの居所を探し、メンデスにリベンジする事となります。

このアマドールという男、汚い仕事を引き受けたり、血気にはやるコクランを落ち着かせたりと大活躍を見せてくれます。こいつがいなかったらストーリーは全く違うものになったでしょうね。ちょっと、スティーブン・キングの『痩せゆく男』の、主人公の友人のマフィアみたいな感じのキャラです。
でも、登場が終盤からという事で、出番自体は少な目です。きっと、原作ではもっとこいつの活躍が詳しく書かれてたりするんでしょうね。

さて、役者も揃った事だし、これからリベンジアクションが始まるのかな?と思ったんですが、メンデスと対峙したコクランは“撃ち合い”ではなく“話し合い”で済ませてしまいました。あれ?
お互いに、しでかした事を後悔するかのようなコクランとメンデス。そしてメンデスはミリアの居場所をコクランにおとなしく白状します。あっさり目ではありますが、ただ殺しあって終わりというありきたりな展開から敢えて外してみたのかもしれないですね。
そして、ようやく再会できたコクランとミリア。ですが、何かが原因で弱っていたミリアは(ヤクかしら?)、コクランの腕の中で息絶えてしまいます。
「悲劇的な結末!」と言うより、「これで終わりかよ!」といった感じのラストでした。銃撃戦も無ければ、ハッピーエンドも無しですよ。結局、この映画は何を我々に訴えたかったんでしょう。そして、何を見せたかったんでしょう?

そんな映画ですが、監督が「主演俳優をカッコ良く見せる術を心得てる男」トニー・スコットなせいか、コスナーはやたらカッコ良く見えましたけどね。コスナー目当てで見るのなら、充分お釣りが来るぐらいだと思います。