ロッキー4/炎の友情
<ROCKY IV>
85年 アメリカ映画 91分

監督・脚本:シルベスター・スタローン
出演:シルベスター・スタローン(ロッキー・バルボア)
   タリア・シャイア(エイドリアン)
   バート・ヤング(ポーリー)
   ドルフ・ラングレン(イワン・ドラゴ)
   カール・ウェザース(アポロ・クリード)
   ブリジット・ニールセン(ドラゴ夫人)
   トニー・バートン(デューク)

(あらすじ)
ソ連から凄いボクサーがやってきた。「ソ連の科学力は世界一ィィ!」とばかりの最新科学技術トレーニングで、超破壊力のパンチ、ムキムキのボディを作り上げた長身の殺人マシーン、その名も人間核弾頭イワン・ドラゴ!
「きっと、でくの坊に違いない」と、元チャンピオンのアポロが戦いを挑んでみるが、あっさり敗北。しかも死亡してしまうのだった。
親友を無様に殺されたロッキーは、仇をとる為に、この怪物のような男に挑戦を申し込むのだった。

(感想)
私が『ロッキー』シリーズで初めて見たのが、この4作目だったんですが、当時は何のことやらよく意味の分からない映画という印象でしたね。だいたい、スタローン自体をまだよく知らない時期でしたし、他のアポロやエイドリアンといったお馴染みのメンバーも当然知りません(しかも、お馴染みのメンバーなので、劇中に人物の説明は一切無し)。さらにボクシングというものに何の興味も無いときたもんだから、もう、「どこが面白いのかさっぱり」なんて状態でしたよ。
黒人のおっさんがやたら派手に登場したと思ったら、瞬殺されたりしますし。しかも、そんな、対戦相手を数発で殴り殺せるぐらいの強力パンチを持つ殺人マシーンが敵なのに、ロッキーはそれを何発食らってもビクともしないんですよ。「何だ、これ?」みたいな事を思ったものでした。

そんな出会い方をした為に、しばらく印象の良く無い映画だったんですが、私もあれから年月を重ねて大人となり、ようやくこの映画の魅力も分かるようになってきました。
まず、一番の変化は「スタローンとは何者なのか」というのが分かった、という点ですかね(笑)。さらに、他のシリーズを見る事で、私もお馴染みのメンバーがそれぞれどういうキャラクターで、どういう過去があったのかが分かるようになりました。あの弱い黒人のおっさんも、昔は強くてカッコいいチャンピオンだったんですよ。
と言うか、今見ると、いくらなんでもあっさり殺しすぎですよねぇ。『2』を見た時は、むしろロッキーよりアポロを応援してたぐらいのアポロ好きになった私にとって、この『4』であんな無残にやられてしまうというのは何ともやり切れないものを感じてしまいます。せめて、再起不能ぐらいで済ます事は出来なかったのだろうか。
でも、この「アポロの死」は、アクション映画的には、相手がどれだけ強いのかを知らしめ、そしてそれと戦う主人公を引き立て、後の戦いを盛り上げるという、重要な役割があるんですよね。この手法は「少年ジャンプ」のマンガでもよく使われますし。
さらに、親友を殺した相手であるドラゴと戦うロッキーが、特に憎しみをもって挑んでいない、という辺りには、この映画のテーマが隠れていそうです。例え大事な人を奪われても、例え敵国の相手でも、憎しみや復讐といった負の感情をぶつけたら何も変わらないし何も終わらないじゃないかと。
もし、ロッキーが、アポロの復讐の為にドラゴを殺す気満々でリングに上がっていたら、ソ連の観客がロッキーコールを送るなんて事には決してならなかったでしょうからね。
そういう意味では、決して無駄死にというわけではないんですけど、やっぱり、ねぇ。たったの2ラウンドで終わらせる事はないだろうに。
それに、ここでアポロがある程度ドラゴのパンチに耐えてくれないと、ロッキーがドラゴのパンチを何発も食らってるのに死ぬどころかビクともしない辺りに説得力がなくなるんですよね。最初に見た時も戸惑った箇所でしたが、ここは今見てもいまいち乗り切れない箇所ですね。「今回のロッキーは無敵モードなのか」と思って白けてしまいます。まあ、「あの自然派トレーニングが元で無敵の体を手に入れられたんだな」と解釈する事は出来ますけどね。って、どんな解釈だ(笑)。

この、「アポロ、あっさりやられ過ぎ」と「ロッキー無敵過ぎ」の2点は気になる所ですが、それ以外はいい映画です。よく言われる「プロバガンダ臭」に関しては私は気にならない質ですからね。だいたい、アメリカ大好きですし(笑)。
それに、真に訴えたいテーマは、「アメリカは強い」という事ではないと思いますしね。何しろスタローンは才人なので、当時の情勢を汲み取ってそういう面を入れてみただけで、根底には「憎しみ合いの否定」だとか「今は敵国同士でも、分かり合う事が出来る」という精神が流れている映画だと思うんですよ。私の読み違えかもしれませんが、そういう風に見た方が楽しいですからね。
また、だいたい、シリーズが進むとマンネリ化したりとかで面白さが落ちるものですが、この『4』はシリーズ中でも最もアクション度の高い内容で、「一作目とは別の意味で面白い」という評価の出し易い映画でもありますね。
音楽もノリノリですし、ストーリーも非常に燃えるものです。アクション映画として、拳闘シーンなどに個人的に納得いかない箇所もあったりするんですが、「アクションの動きに迫力があっても、ストーリーに燃えるものがない」という映画よりかは、熱いストーリーをもったこの映画の方が、見終わった後の昂揚感は高いと思います。

このように、最初に見た時に比べると、私も大分この映画の魅力が分かるようになりました。やはり、最初見てつまらないと思った映画でも、後日トライしてみるべきなんですよね。もしかしたら、この次にこの映画を見る時には、「アポロ、あっさりやられ過ぎ」と「ロッキー無敵過ぎ」の2点も、映画的に意味のある評価ポイントとして見られるようになってるかもしれません。