監督:ポール・アンダーソン
出演:カート・ラッセル(トッド)
ジェイソン・スコット・リー(ケイン607)
ジェイソン・アイザックス(ミーカム)
コニー・ニールセン(サンドラ)
ショーン・パートウィー(メイス)
マーク・ブリンゲルソン(ルブリック)
ゲイリー・ビジー(チャーチ)
K・K・ドッグ(スローン)
ジェイムズ・ブラック(ライリー)
ブレンダ・ウェイリィ(ホーキンズ)
マイケル・チクリス(ジミー・ピッグ)
(感想)
カート・ラッセル主演作と言えば、この近辺(90年代)でも『バック・ドラフト』『エスケープ・フロム・LA』『エグゼクティブデシジョン』など、名作揃いです。そしてこの映画も過去のラッセル映画に勝るとも劣らない傑作映画に仕上がっています。
日本公開当時、「ブレード・ランナーのスタッフが再結集!」みたいな宣伝の仕方をされてましたが、『ブレード・ランナー』っぽい要素は全くと言っていいほど無いです。舞台設定が近未来というのが唯一の共通点と言ってもいいでしょう。この映画はそれよりも『ランボー』や『ロボコップ』のような、悲劇のヒーロー系の映画です。悲劇のヒーローと言っても、最後に死ぬわけじゃないですけどね。
カート・ラッセル演じる主人公のトッドは、生まれてこの方、人との触れ合いとか心の交流など全くしていなく、戦う事しか知らない、戦闘マシーンのような男です。トッドにとって民間人とは、命令によって撃っていいか撃ったらまずいかが変わる障害物のような存在だったようです。
しかし、そんな民間人達と接触する機会というのが初めて与えられた。それも、今まで拠り所としていた(拠り所とせざるを得なかった)軍から棄てられ、瀕死のところを助けてもらった人達です。多分、瀕死の人間を助けるという行動も今までのトッドには考えられない行為だったことでしょう。なので、まさに驚きと戸惑いの連続です。でも、「感情」というものに無縁で育ったトッドはそれを表情に出す事も出来ません。
こういう、内に複雑な思いを秘めた人物をあくまで無表情で演じなければならないのは、きっと傍で見ているよりも難しいに違いない。それをカート・ラッセルは見事に演じていましたね。
映画の前半はトッドの心の動きがメインに描写され、後半は攻めてきたソルジャーとの闘いがメインになります。しかも相手は、能力的にトッドを上回る新ソルジャー総勢20名弱です(しかも完全武装)。
とても勝負にならなそうですが、トッドには今まで数々の戦いを生き抜いてきた経験があります。さらに決定的なのは、トッドには「意志」というものがあることです。ただ任務に従って行動してるだけの連中とは根本から違うんです。
ソルジャーの攻撃で襲われる集落。次々死んでいく民間人達。そしてそこに颯爽と現れる人の心を持った戦闘マシーン!まったく、素晴らしいです。まさにヒーローですね。
ラストは、以前戦って完敗した相手、ケイン607との肉弾戦が控えています。戦場では経験を活かした戦術(ブービートラップ)で敵を蹴散らしてきたトッドですが、さすがに一対一の勝負では分が悪いです。何せ相手の方が能力的に上回っているのですから。しかしこちらも、あの時と同じトッドではありません。そして始まる白熱の一戦!
思えば、『デモリションマン』『ユニバーサル・ソルジャー・ザ・リターン』のラストバトルも、「敵が設定上、主人公よりも高い能力を持っている」という似たような状況でしたね。でも、映像や、主人公がその相手を倒さなければならない精神的な理由などを考えると、むしろ『リーサル・ウェポン』のラストバトルに似ています。
と言うように、過去のいろいろな名作アクション映画の要素の感じられる、とってもナイスな映画です。特にヒットしたわけでもないし、特に評価してる人をあまり見ない、地味な扱いの映画ですが、私は大好きな映画です。