乱気流/ファイナル・ミッション
<SONIC IMPACT>
98年 アメリカ映画 94分

監督:ロドニー・マクドナルド
出演:ジェームズ・ルッソ(ニック・ホルト捜査官)
   マイケル・ハリス(ジェレミー・バレット)
   メル・ハリス(ジェニファー・ブレイク)
   アイス・T(タジャ捜査官)
   サム・アンダーソン(アレックス・ホームズ)
   ブリタニー・ダニエル(レイチェル)
   ビリー・ウィリアムズ(サム・ホープス)
   J・ケネス・キャンベル(トム・ラッシュ機長)
   マイケル・ハーネイ(マーク・トラビス)
   ヒース・ローウッド(ジョン・ストラウス)
   ジャスティン・ラウアー(ベン・ストラウス)

(あらすじ)
ニック・ホルト捜査官は、長年追っていた犯罪者ジェレミー・バレットの逮捕に成功した。バレットは旅客機で護送される事となったが、ニックは上司のホームズに休暇をとらされ、バレット護送の任務につくことが出来なかった。
タジャ捜査官他数名の連邦保安官により護送されるバレット。今回はバレットの他、ストラウス兄弟というケチな犯罪者も一緒の護送となっていた。

「何か脱走する方法は無いものか」と考えるバレットは、とりあえずトイレに入って道具をいろいろと探るが、特に何も見つからない。諦めて外に出たところ、飛行機が急に傾きだす。何と、エンジントラブルが発生したのだ。
このドサクサに紛れ捜査官の一人と乱闘を開始。そして拳銃を奪う事に成功した。
銃を手に入れたバレットは乗客を人質にし、タジャ捜査官らからも拳銃を奪いとる。そして、ストラウス兄弟を手下として使い、機をハイジャックしてしまう。

一方、ホームズの言う通り、南の島で休暇を楽しもうとしていたニックだが、今まさに飛行機のチケットを買おうというところでホームズからの呼び出しがかかってしまうのだった。

(感想)
ストーリーには先の読めない面白さがありましたね。護送されるバレットがハイジャックをするんだろうというのは想像つくんですが、その方法が計画的なものではなく、たまたま起こった事故に乗じたものだったというのはさすがに読めません。
そして護送官から銃を奪い、手錠をかけさせて、機の完全制圧完了となります。
ですが、実はこの機にはもう一人、護送とは関係無く、たまたま乗り合わせていただけの黒人刑事がいるんです。しかも、こいつもちゃんと銃を携帯していて、『パッセンジャー57』のスナイプスよろしくトイレに隠れて、たまに顔を出しては外の状況を窺ったりしています。
いったい、こいつがどんな活躍を見せてくれるのかと思ったら、「英雄になるんだ!」とか言って一人で特攻し、犯人達との銃撃戦を誘発。この流れ弾がコックピットの酸素ボンベに当たり、爆発で機長が死亡。さらに操縦席の屋根が一部吹っ飛ぶという、味方にとっても敵にとっても困った事態を起こしてしまいます(ちなみに、こいつはこの撃ち合いでとっとと死亡)。

さあ、これからどうなるんだ!?と思って見ていたら、護送の任務から外され、飛行機に乗れなかった主人公ニックが、外から飛行機に乗り移るという展開に。
まあ、B級エアパニックでは、主人公なり特殊部隊なりがジャックされた機に乗り移るというのはよく見る展開ですが、まさか特殊部隊員でもない、ただの捜査官である主人公がそんな事をやるとは読めなかった!(しかも一人で) その方法は、お馴染みの「エグゼグティブ方式」ではなく、操縦室に開いた穴から強引に入るという「エアポート75方式」を採用。ご丁寧に、映像も同映画からの流用のようでした(ちなみに、飛行機が飛んでる所を映す空撮シーンも全部『エアポート75』からの流用らしい・笑)。
と言うと、この映画を撮るのに用意したのは、機内のセットだけなんですね。いやぁ、安上がりですなぁ。
さて、「エアポート75方式」という危険な手段で飛行機に乗り移ろうとする主人公ですが、職業がFBI捜査官(FBIではなかったかも。とにかく、“軍人”ではなく“捜査官”です)だというのにそんな危険なミッションをこなしてしまうところに違和感が出そうなものですが、主人公を演じる俳優が、ブルース・ウィリスとマイケル・マドセンを足して何かで割ったようなヒーロー面をしているので、特に違和感はなかったですね。
まあそもそも、そんなところを気にしてたらB級映画なんて見てられないですが(笑)。

これで、ヒーローが飛行機を奪還して終わるのかと思ったら、犯人側の見事な連係プレーで形勢逆転(まあ、運が良かっただけなんですが)。あんなに苦労して入って来たのに、あっさり人質と化している主人公の姿には感動を禁じ得ません。
さて、これからいったいどうなるのかと思ったら、人質の女が(乗客はみんな一ヵ所に集められているんですが、この女だけ犯人の手元に置かれている)、犯人に普通に近づいていって、落ちてた刃物で刺すという驚きの展開!
ここで肩口を刺された犯人のセリフ、「痛ぇじゃねーか!何しやがるんだ!」というストレートな心情の吐露にまた感動。
この犯人、セリフが面白いんですよね。特に、数年にわたって自分を追っていたニックを“ストーカー呼ばわり”するあたりなんて最高です。でも、脚本家の腕とか演じる俳優の力というより、吹き替えの野沢那智の力だったような気はしますが(笑)。
この映画、ストーリーを引っ張っているのが主人公ではなく、この犯人の方なんですよね。舞台となる飛行機に最初から乗ってるのもこっちの方ですし。で、機内で次々起こる状況の変化(操縦席の屋根が吹っ飛んだり、その穴から“遠く離れた場所にいるはずの”自分を逮捕した捜査官が乗り込んできたり・笑)に臨機応変に対応していく様が、何か見てて面白かったりします。

そんな、影の主役バレットも、ついにラストのバトルでニックに敗れ、とどめに“踏み殺され(!)”ます。合掌。
そしてこの後に待っているのは、もはや恒例「主人公が管制官の指示を聞きながら機を着陸させる」シーンです。ここで「またかよ」なんて言ってちゃいけません。むしろ「待ってました!」と喝采を送ってあげましょう(そんな事をしても、見返りは何も無いですが)。


と、こんな映画なんですが、一番の見どころはやはり、護送官として機に乗り込んでおきながら、全ての局面で満遍なく役に立ってないアイス・Tでしょうね(笑)。最初に犯人に手錠をはめられて以来、結局最後まで手錠をはめたままというのもイカしてます。一度、手錠のカギを手に入れて、外すチャンスがあったんですが、黒人刑事の突撃に驚いて“カギを落っことしてしまう”というポカをやらかします。でも、この人が演じると、それが“見せ場”に見えるから不思議です(笑)。
見せ場と言えば、犯人に銃を突きつけられたら、とたんに命乞いを始めるというシーンは凄かったですね。このアイス・T演じるタジャ捜査官、主要キャラの中でも最も人間的と言えそうです。
もちろん、“ちゃんとした”見せ場も用意されており、手錠をはめたまま敵に蹴りを放つ場面が出てきます。でもその蹴り、どう見ても相手まで届いてないんですが(映し方が悪いせいです)、敵はちゃんと吹っ飛んでくれます。もしかしたら、蹴りの風圧か何かで倒したんだろうか(笑)。
そんなタジャも、終盤、あまり劇的でもない場面で殉職。ただ、他のキャラと違って、スロー処理の中で銃弾を4,5発食らうという、この映画中最も派手で華麗な死に様でした。これまで楽しい見せ場をありがとう&ご苦労様でした、アイス!