監督:ルイス・ロッサ
音楽:ジョン・バリー
出演:シルベスター・スタローン(レイ・クイック)
シャロン・ストーン(メイ・マンロー)
ジェームズ・ウッズ(ネッド・トレント)
エリック・ロバーツ(トマス・レオン)
ロッド・スタイガー(ジョー・レオン)
レイの爆弾により、トマスの部下の一人が爆死。この事態にトマスの父親、ジョー・レオンは元CIAの爆破のスペシャリストに、犯人の割り出しを依頼する。その男、ネッドは、CIA時代のレイの相棒であり、そしてレイに恨みを抱いている人物だった。
(感想)
爆破のスペシャリストが主役の話ながら、かなり地味なアクション映画です。
正確には、地味というよりも、渋い映画ですね。ストーリーから演出、主演のスタローンの演技まで、「大人向け」な感じが漂っています。ただ、“漂ってるだけ”で、実際の大人向けとはちょっと違う感じなんですが。
地味な映画ながら、キャスティングは妙に豪華です。まず、スタローンとシャロン・ストーンの共演というだけでかなり派手ですが、さらに敵役がジェームズ・ウッズです。そして、この大物3人の見せ場が、映画の中でほぼ平等に描かれるというバランスの良さ。
ですが、主役のスタローンの出番が前半に偏ってるような気がしないでもないです。爆弾のプロで“爆破の規模も自由自在、標的だけを爆死させる事が出来る”というレイのキャラクターはとっても面白いんですが、その能力を見せる場面が少ないんですよね。う〜ん、もったいない・・・。
それにしても、敵役にジェームズ・ウッズを配したのは大したセンスです。スタローンにとっても、まさに不足の無い相手と言えるでしょうね。
スタローンの場合、他のアクションスターと違って、「いかにも強そう」という感じの武闘派の俳優を敵に迎えるより、この映画のジェームズ・ウッズや『コップランド』のハーベイ・カイテルのような演技派の俳優を敵に迎えた方が見てて燃える気がします(まあ、殴り合いで決着をつけるような映画の場合はまた違ってきますが)。
さて、このウッズ演じるネッドという男、とっても危ない奴です。知的なんだけどヤバそうという。と言うか、実際にヤバい奴なんですけどね(笑)。特に、キレた時なんか、もう、見てて笑ってしまうぐらい凄い事になります。この“キレたジェームズ・ウッズ”は、もはやこの映画の見せ場の一つと言っていいぐらいですね(いや、むしろ一番の見せ場かも・笑)。動き、表情、セリフ、その全てがもはや狂人のレベルまでイッてしまってます(笑)。
この映画にはネッドの他にもう一人敵がいます。それは、シャロン演じるメイの標的である、両親の仇トマスです。演じるのは、B級映画の世界では主演級の活躍を見せ、しかもジュリア・ロバーツの実の兄という変わった経歴の持ち主(それは“経歴”じゃないだろう・笑)エリック・ロバーツ。
このトマスというキャラクター、マフィアの親分の馬鹿息子のボンボンお坊ちゃまという、設定からしてムカつくキャラです。で、そんなキャラクターをエリックが見事なまでに憎々しげに演じてましたね。ほんと、表情と態度がもう見てて腹が立つんですよね。「雑魚のくせに、何でそんなに偉そうやねん!」と(笑)。
渋目の作風も、それにマッチしたスタローンの演技と存在感も、かなり浮いた感はあるものの見てるだけで楽しいジェームズ・ウッズの悪役演技も全てが良くて、中盤ぐらいまではかなり面白い映画です。
ですが、中盤から後半にかけて、思ったよりも盛り上がっていかないんですよね。具体的には、トマスが死んで、メイの復讐が終わった辺りからですかね。ここからのストーリー展開が何か面白くないんです。
ここから、スタローンよりもシャロンがメインな感じの話になるんですけど、きっと、これが原因なんでしょうね。個人的に、シャロンはあまり好きじゃないですし、メイというキャラクターにも面白みが感じられないです。シャロンには申し訳ないですが、この人のメインのシーンを見てても「お前はいいから、スタローンを出せ」とか思ってしまいます。
さらに、スタローンとシャロンとの濃厚なラブシーンまで登場。「こんなのいいから、ジェームズ・ウッズがキレてるところをもっと見せてくれ」とか思ってしまいます。
まあ、この映画のウリがここなんですからしょうがないんですけどね。
終盤には派手な爆破シーンが用意されてますが、どうもいまいちのめり込めないです。ここよりも、前半の、トマスの部下達を一人づつ爆死させていたところの方が面白かったですし、爆破シーンとしてもよく出来てたように思います。ただ単に爆発してるだけのシーンじゃなくて、サスペンス風味もありましたからね。爆破もでかけりゃいいってものじゃないです。
と、中盤以降の展開には個人的に難があるんですが、前半はかなり面白いです。この前半のテンションがうまい具合に最後まで持続してくれたら、相当お気に入りの映画になったと思います。
さて、アクション映画ではよく、主人公のヒーローが「いかに強い奴か」を示すためのシーンが序盤に出てくる事があります。大抵、その舞台はコンビニで、主人公が強盗を倒すというシチュエーションが多いです。
この映画でもその手のシーンが出てくるんですが、その舞台はバスの中です。
で、実はこのシーン、「スタローンのアクションシーンが少ない」という事で、後から追加されたシーンらしいんですよね。そんな事ってあるんですねぇ。
そんな理由で入れられてるシーンなので、当然、ストーリーには全く絡まない、独立したシーンなんですが、このシーンのせいで「実はレイは意外に喧嘩っぱやい」という印象を与える事になってしまっています。
そこで、この後に出てくる「レイがトマスに因縁つけられる」というシーンで、このバスでの乱闘シーンがふと思い出され、「あれ、もしかして、ここでもうヤっちまうのか!?」と、このシーンを別の意味でドキドキしながら見てしまいます。
ただ、ここでのエリック・ロバーツがまた「もう、今ここで殴り倒しちまえ!」と思わずにはいられないようなムカつく態度をしてるんですよ。ここで殴ったらストーリーが台無しになるんで(笑)、何か変な緊張感が出てるシーンになってましたね。