監督:クラーク・ジョンソン
音楽:エリオット・ゴールデンタール
出演:コリン・ファレル(ジム・ストリート)
サミュエル・L・ジャクソン(ダン・“ホンドー”・ハレルソン)
ミシェル・ロドリゲス(クリス・サンチェス)
LL・クール・J(ディーコン・“ディーク”・ケイ)
ブライアン・ヴァン・ホルト(マイケル・ボクサー)
ジェレミー・レナー(ブライアン・ギャンブル)
ジョシュ・チャールズ(T.J.マッケイブ)
オリヴィエ・マルティネス(アレックス・モンテル)
(感想)
もはや警官隊ではどうにもならないような凶悪事件が発生したときに、颯爽と現れて、強力な兵器と戦術で敵を制圧してしまう、ロス市警が誇るヒーローチーム“SWAT”の活躍を描いた映画です。
確かに、普通はSWATの事をヒーローチームとは呼びませんが(笑)、この映画を見ているとそうも思いたくなりますね。現実の世界において、アクション映画に出て来るマッチョアクションヒーローの代わりに凶悪な事件に対処してくれる人達なわけですから。
そんな、「現実のヒーロー」を描いた映画なので、アクションシーンはリアリティにこだわった演出がなされています。銃の構え方から、現場での動き(突入の仕方とか、銃撃戦の時のフォーメーションとか)までも、実際のSWATの動きを出来る限り再現しているようです。
で、この動きから装備に至るまでがカッコいいですね。防弾ベストにヘルメットという重くてゴツイ装備を着込んで現場を走り回ってる姿は、鎧甲冑を着込んだ騎士みたいな雰囲気すらあります。
ストーリーも、普通の刑事アクションとは違って、悪役が起こした一つの事件を追うというものではありません。何しろ、中盤頃まで主人公達は一切悪役と絡みませんからね。
それまでは、チームのメンバーを集めたりとか、集まったメンバーが訓練を重ねる所、そしてテストに合格してSWATチームとして認められる所等が描かれていくんです。この訓練シーンは、見ていて何だかスポーツ物の映画っぽい雰囲気も少し感じられましたね。「チームプレイで事に当たる」という点も、どこか団体競技のスポーツっぽいですし。
この映画、最初に映画館で見た時は、「アクション映画なのに、キャストにアクション俳優がいない」という点に引っ掛かりを感じたものですが、2回目、3回目と見て行く内に、この点は全く気にならなくなりましたね。やはり、この映画の主役であり、一番活躍しなくてはならないのはアクションヒーローではなく、“SWAT”でなければなりませんからね。下手にアクション派の人が主演したら、SWATの存在の有り難味が感じられなくなってしまいかねません。何しろ、ただでさえ、主人公のストリートの活躍シーンが多いんですから。
このストリートというキャラ、元海兵隊員で、ついでにかつてSWATに在籍していた過去を持つ為、仲間の内でも圧倒的に頼りになる奴として描かれているんですよね。確かに、これをアクション俳優が演じたら、もうSWATチームを描いた映画どころじゃなくなってしまいますね。「お前一人で全部片付けられそうじゃないか」と(笑)。
「SWATの活躍を出来るだけリアルに描く」というコンセプトの映画だと思いますが、ドキュメンタリータッチといった手法は使わず、基本は娯楽色の強い劇映画として作られています。パッと見は今までの普通の刑事アクションとそんなに変わらないんですよね。
ですが、「主人公がチームだ」という点等から、今までのアクションとは少し違う印象を与えてもいます。確かに、活躍がメインに描かれるのは主人公だけですが、アクションシーンの最中、常に援護射撃をしてくれる人がいたり、命令を下す上司的な人が現場に同行していたりするのはチームならではです。刑事アクションより、特殊部隊物のアクションっぽい雰囲気です。
ストーリー面も、与えられた任務を遂行する事のみが目的で、裏に隠された陰謀を暴いたりとかしなくていいので、実にスッキリしています。また、主人公のプライベートな事件も起こりません(恋人や夫婦間のゴタゴタとか)。序盤に一瞬それらしきシーンが出る程度です。
隊員の日常の風景も出てきますが、人物描写というよりも、「SWAT隊員の日常を描いた」といった感じのものです。
このように、ストーリー面でも「SWAT隊員を描く」というのにこだわった作りになっているんですよね。余計なものがないのでかなり見やすいです。
あと、この映画、主役のSWATだけでなく、悪役もかなり魅力的に描かれていましたね。
悪役は二人いて、一人は「これからマフィアの大物として活躍していくぜ!」と思っていた矢先につまらない所で逮捕されてしまった若造と、元SWATで主人公の元相棒でもあった男ギャンブル。
逮捕された若きマフィアのアレックスは、「いったい、その自信はどこから来るのか」と思うぐらい、常にふてぶてしい態度をとっています。ですが、それが見掛け倒しには見えないような、空恐ろしい雰囲気がしっかり感じられるんですよね。見かけによらず度胸もかなりあるようですし、その不敵な笑みからは「何か切り札を持っているのでは」と思わせるようなものも感じられます。
一方のギャンブルの方も、元SWATという事で、その辺のケチなチンピラとはレベルの違う凄味が感じられます。実際、ストリートと同等ぐらいの能力がありそうですしね。戦術面もかなり長けているようで、終盤のアレックスを脱走させるプランはかなり見事に練り上げられていました。「こんな凄い計画を準備する時間があったんだろうか?」という気はするものの。アレックスの「俺を助けた奴に1億ドル」発言を聞いてから準備したのでは、あそこまで凝った計画は立てられなかったと思うんですよね。まあでも、実はあの発言の前から二人は繋がっていたのかもとか、何しら理由があって可能になったのでしょう。
魅力的な悪役にノリのいい音楽、シンプルで分かり易いストーリーに派手なアクションと揃ったこの映画、娯楽アクション映画としてのレベルはかなり高いものがあると思いますね。VFXをほとんど使っていないアクションシーンの迫力は、一昔前の、アクション映画が花形ジャンルだった頃のアクション映画を思い出させてくれます。
それにしても、一回目を映画館で見た時には、ここまでこの映画の虜になってしまうとは思いもしませんでしたねぇ。人生何があるか分からないものですな(大袈裟な・笑)。