追跡 ザ・スイーパー
<THE SWEEPER>
95年 アメリカ映画 105分

監督・製作:ジョセフ・メルヒ
出演:C・トーマス・ハウエル(マーク・ゴッダード)
   エド・ロウター(モールズ)
   クリスティン・ダルトン(レイチェル)
   ジェフ・フェイヒー(デール・ゴッダード)
   ジャネット・ガン(メリッサ)
   カスリン・ラウナー(エイミー・アンドルーズ)
   マックス・スレイド(少年時代のマーク)

(あらすじ)
家に押し入って来た犯罪者達に家族を皆殺しにされたマーク少年は、数年後、殺された父親の後を継いで刑事になっていた。
だが、過去の事件が原因で歪んだ性格となり、私生活では妻に逃げられ、仕事では、これまでに数人の犯罪者を逮捕の際の過剰な暴力で死に至らしめていた。
そんなマークにある組織からの誘いがくる。J・Iという名のその組織は、職務中に犯人を9人殺したら入会資格が得られる、元刑事達による組織なのだった。
入会を渋るマークだが、「家族を殺した犯人を教える」と言われ、仕方なしにJ・Iに加わるのだった。

(感想)
まず、冒頭のアクションにいきなり度肝を抜かされましたね。パトカーを奪って逃走する犯人をバイクに乗った警官が追うというシチュエーションですが、この逃げる車が通行人をドッカンドッカン撥ねまくりながら疾走してるんです(笑)。これまでカーチェイスは幾度となく見てきましたが、ここまで一般人を巻き込んだカーチェイスは見た事無かったですね。いやぁ、驚きました。
最終的に撥ねた人数は10人は軽く越えてると思うんですが、何でしょう。あまりの凄さに、人が撥ねられるたびに笑ってしまいます。話だけ聞くと残酷なシーンのように思えるかもしれないですが、当然、通行人はスタントマンが演じてる為、撥ねられ方がすごく上手いんです。ただの通行人のくせに、その技術溢れる撥ねられ方は何だ、と(笑)。もう、見ていて思わず「ビバ!スタントマン!」と歓声を上げてしまいそうになるような名シーンでした。

と、こんなシーンがのっけから登場するように、アクションにはかなり力が入れられてましたね。他にも、建物の屋上での足を使った追跡劇(最後は落下&宙づりで締め)に、火柱がドカンドカン上がるカーチェイス。『コマンドー』や『ビバリーヒルズ・コップ』の終盤のような、豪邸の庭を舞台とした、多人数の敵が相手の銃撃戦と、凄いアクションが定期的に挿入されてきます。あ、もちろんカーチェイスではクラッシュした車が炎上しながら宙を舞います。
とどめとばかりに、ラストは複葉機の翼の上で格闘なんてしてました。これも、実際に飛んでる飛行機の上で戦ってる様を、飛行機全体が映る位置から撮ってるカットが出て来たりするので、本当に空で戦ってるんですよね。このスタントの迫力の凄さはA級映画に引けを取らないどころの話じゃないですね。B級映画も、たまにこんな映画が潜んでたりするんで侮れません。

アクションが凄いだけでなく、ストーリーもまた面白いものでした。“J・I”という元刑事達で組織された謎の機関が出てくるんですが、これが「職務中に犯人を9人殺した刑事をスカウトしてくる」という、変わったメンバー選抜方法を採用しています。この9人という人数はどこから来たのか不明ですが、とにかく、バイオレンスなコップで組織された部隊なわけですよ。
で、その目的は、犯罪の撲滅ですが、もう、犯罪者は生きてる価値の無いダニだとばかりに、凶悪な犯罪者を逮捕するのではなく、片っ端からぶっ殺していくという組織です。まさに町の掃除人。きっとボスや幹部の部屋にはチャールズ・ブロンソンのポスターが貼られてるに違いないと思ったんですが、そんなシーンは出ませんでした。

主人公のマークは、若い頃に、家に押し入って来た犯罪者に家族を(両親と姉か妹)殺されているという過去があり、それが原因で犯罪者に過剰な怒りを持つバイオレンス・コップになったという背景があります。
また、父親も警官で、冒頭のカーチェイスにおいてバイクで犯人を追っていたのが、この父親でした。ちなみに、父親を演じるのは、かつて『エグゼクティブ・エクスプレス』で見た事のあるジェフ・フェイヒーでした。
で、そんな暴力刑事のマークですが、このJ・Iの過剰な暴力主義にはついていけないものを感じているようでした。それは、どうやら、「父親のような立派な刑事になりたい」という思いが、心の片隅に残っているからのようです。この、主人公のドラマ面も割としっかり描いていて、細部にも手抜かりが無いです。

最終的に、マークはJ・Iに反旗を翻し、アジトに単身乗り込んで行き、次々出てくる敵を、もうBANGBANG撃ち殺していきます。実は、この理由がちょっと分からなかったんですが、結局、マークの父親もこの組織に入っていて、そこから抜けようとしたために襲われた、という事だったんでしょうかね。
まあとにかく、拳銃一丁(途中から二丁)でそこかしこから出現する敵を撃ち殺して行く様は、まるでシューティングゲームでしたね。爽快感満点です。ちょっと、『ラストマン・スタンディング』の銃撃シーンを思い出してしまいました。

ところで、途中、グラサン&黒ファッションで敵地に乗り込んでいくシーンがあって、「ああ、『マトリックス』をパクってるんだな」と思ったんですが、この映画、製作が95年なんですね。すると、二丁拳銃アクションもかなりブームを先取っていた事になりますね。いやぁ、恐るべき映画です。