ケミカル51
<THE 51st STATE>
02年 アメリカ/イギリス/カナダ合作 92分

監督:ロニー・ユー
製作総指揮:サミュエル・L・ジャクソン 他
出演:サミュエル・L・ジャクソン(エルモ・マルケロイ)
   ロバート・カーライル(フィーリクス・デスーザ)
   エミリー・モーティマー(ダコタ・パーカー)
   ミート・ローフ(リザード)
   リッキー・トムリンソン(デュラント)
   リス・エバンス(イキ)

(ストーリー)
薬剤師を目指していたが、ある事件がきっかけでドラッグの製造をするようになったエルモ・マケルロイが、合法的な薬剤を調合する事で製造出来る新種のドラッグ、POS51を作り出した。調合方法さえ分かれば、材料を薬局で買う事が出来るという、売人にとっては夢のようなドラッグだ。
エルモは、このPOS51の調合方法と引き換えに、麻薬業者から大金を頂戴しようと、取り引きの為にイギリスにやってきた。だが、渡英前に始末したはずの、アメリカの麻薬組織のボス、リザードが生きていて、殺し屋を差し向けてくるのだった。
他にも、イギリス警察、白人至上主義の売人といった連中に付け回されたりして、中々うまく取り引きが出来ないのだが、売人のフィーリクスに無理矢理協力をさせ、どうにかして取り引きを成功させようとするのだった。

(感想)
全体的に、実に軽妙でノリのいい、見てて単純に「楽しい!」と思える、面白い映画でした。
ストーリーのテンポとか、演出面とか、登場人物同士の会話のやりとりとか、全てに渡って、“ノリの良さ”みたいなのが感じられるんですよね。特に、会話面の面白さは絶品ものでした。見たのは吹き替え版だったんですけど、セリフが一々洒落てて面白いんですよね。そのせいか、主要キャラがそれぞれ、実に個性的に見えたものでした。
演じてる方々も、皆、その役にハマっているように見えましたが、中でも、主演のサミュLのとっつぁんが素晴らしかったですね。職業としてはドラッグの売人ですけど、豊富な薬剤の知識を持った科学者風の人物で、犯罪者としての危なさの他に、知的な雰囲気というのも濃厚に漂わせている演技が実にクールでカッコ良かったです。
共演のロバート・カーライルも、準主役としての風格を出しながらも、サミュLのキャラクターと比べると、“所詮、売人の一人”という下っ端っぽさも感じられるという、面白味のある演技を見せていましたね。
バディ物映画の雰囲気も入ってる内容ですけど、二人の間に友情が芽生えていく、みたいな事はなくって、「利用している」「巻き込まれてしまった」というだけの間柄なんですよね。この、親密さが希薄な所が、バディ物として逆に新鮮で面白かったです。
あと、エミリー・モーティマーの女殺し屋も良かったですね。普段はクールなのに、私生活の面になると、途端に普通の女性っぽさが出てくるという、このミスマッチ感は中々魅力的でした。

ところで、ロバート・カーライルの役は、本来、コメディリリーフとして使われてもおかしくないキャラだと思うんですけど(実際、そういう役回りでもあるんですけど)、他の、ほとんどのキャラに妙な所が入っているんで、その面があんまり目立ってないんですよね。その代わり、笑いをとろうとしてるとしか思えない行動を見せる奴ばっかり出てくるんで、ジャンル的にはコメディではないと思うんですけど、終始、笑いっぱなしでしたね。
そんな連中が織り成すドラマなわけで、もう、ドタバタ喜劇に片足突っ込んでるみたいな状況になってるんですよね。「一応、裏社会の連中の話だ」という所とか、どことなく、後の『アドレナリン』シリーズを思わせる雰囲気が感じられたものでした(あの映画よりももう少し落ち着いた演出ですけど・笑)。
ところどころに、笑える小ネタも仕込んでありましたし、全体的に笑いのセンスも良かったですし、もう、とにかく楽しい映画だった、という印象でしたねぇ。