監督・共同脚本:ジェームズ・ウォン
アクション・スーパーバイザー:コーリー・ユエン
音楽:トレバー・ラビン
出演:ジェット・リー(ゲイブ/ユーロウ)
ジェイソン・ステイサム(ファンチ)
カーラ・グジーノ(TK/マシー)
デルロイ・リンド(ローデッカー)
(感想)
ビッグなスターの主演&A級映画の製作資金で作り上げた、B級精神満載の近未来SF刑事アクションの傑作で、一般に、この映画と、『デモリションマン』『タイムコップ』『バーチュオシティ』で、“近未来SF刑事アクション四天王”と呼ばれる。という説がある。信じるか信じないかはあなた次第。
近未来刑事アクション四天王説と違い、“多次元宇宙論”というのは実際に提唱されてる説らしくて、その人それぞれの選択によって、次々と別の次元が作られていくというもののようです。現在ではカタカナで“マルチバース”と呼称される事が多く、アメコミやらウルトラマンやらで便利に使われていく事となる理論です。
私がこの概念の事を知ったのはこの映画からだったような気がするんですが、この後に他の色んな所で目にするようになってきました。この説が語られだしたのがこの近辺だったんでしょうかね。
本来なら無限に別次元が拡がり続けていくものだと思うんですが、この映画では“125”と限定。その根拠など別にどうでもいいかのように、ジェット・リーの超絶特撮アクションが展開されて行きます。ちなみに、“近未来SF刑事アクション四天王”に、世界設定の矛盾や粗を本気で指摘するのは禁止事項となっていますので注意してください。
でも、数が限定されてた方が分かり易くていいんじゃないかと思います。結局、多次元宇宙を科学的に真面目に描いた映画ではなく、この映画独自のローカルルールで語る多次元宇宙というわけなんですしね。
まあとにかくこの映画、ジェット・リーが文字通り大暴れします。123人分のパワーを吸収した超人という設定なので、車以上に早く走るわ、塀をひとっ飛びするほどの大ジャンプを見せるわ、弾丸を避けるわの大騒ぎ。終いには、白バイ2台を両手に持って武器にしてしまいます。
しかも、パワーの制御も出来るらしく、精密機械を壊さずに扱ったり、元相棒のローデッカーとの殴り合いでは、相手は普通の人間なので、手を抜いて互角の戦いをしてあげたりします。
しかも、そんなジェット・リーが2人もいるんですから凄い。善のジェット、悪のジェットが闘うなんて、この映画と同年製作の、善のヴァン・ダム、悪のヴァン・ダムが闘う『レプリカント』みたいです。
ただ、『レプリカント』と違って“超人”の設定なので、特撮使いまくりなバトルシーンになってるんですが。そのせいで、ジェット・リーの凄さがいまいち伝わりづらいかな、という感もあったりします。
ゲイブとユーロウ、それぞれ格闘の型が違い、ゲイブの“円”の動きは滑らかで本当に凄いんですが、何か特撮に邪魔されてる感じがしてしまうんですよね・・・。まあ、一人二役のバトルシーンなんですから仕方無いんですけどね。
でも、この超人ジェットの超人パワーの描写、もうちょっとVFX技術とかその使い方なんかがこなれてきたら、もっと迫力のあるバトルが描けたと思うんですよね。ちょっと作るのが早すぎたのかもしれません。
今一歩な感があるアクションとは言え、ラストに一対一のカンフーアクションが用意されてるというのは、ジャッキー世代の私にとっては嬉しい展開です。やっぱり、ラストは格闘戦か大爆破で締めてこそアクション映画です。
それに、これは当時の技術だからこそなのかもしれないんですが、所々格闘ゲームの動きみたいなアクションが入るのは中々面白い所です。超人の動きと言うより不自然な動きなんですけど、「もし格闘ゲームの世界なら自然」みたいな動作なんです。もしかしたら、超人の表現として敢えてゲームっぽい動きを取り入れてるのかもしれないですね。
アクション以外でも、ストーリーも割と面白いですね。ユーロウは、別の次元からやってきた暗殺者という訳なので、ちょっと『ターミネーター』みたいです。あちらは警官が銃で撃っても効かなかったですが、こちらは警官の撃った銃の弾を避けるという違いがあります(笑)。
あと、ゲイブが途中で服を着替えるんですが、そこで着た服が何故かユーロウと全く同じ服で、いよいよ外見で区別がつかなくなるというのも、ストーリーに適度な混乱を与えてて良かったと思います。それにしても、他の次元のジェットは多種多様な髪型で、そのあまりの似合わないっぷりでちょっとしたお笑い映像みたいになってたのに、この二人は髪型も一緒だったんですね。
一方、ゲイブの妻、TKのストーリー上の扱いはちょっと可哀相過ぎる気はしましたね。ラストは一見ハッピーエンドなんですけど、ちょっと素直に喜べないものがありました。むしろ、ゲイブよりユーロウの方がハッピーエンドだったような。修羅の国みたいな所で凄く楽しそうでしたからねぇ
ちなみに、この映画にはジェイソン・ステイサムが出てるんですが、まだ『トランスポーター』に出る前の脇役時代で、格闘アクションも披露しません。しかも髪の毛が多少あります。
まだ映画出演3本目で、非常に若々しくて青臭い感じがするんですが、数年後にまたジェット・リーと共演する『ローグアサシン』ではもうジェットと同等の人気アクションスターに成長してるんですから大したものです。