監督:マイケル・ベイ
製作:ドン・シンプソン
ジェリー・ブラッカイマー
音楽:ハンス・ジマー
出演:ニコラス・ケイジ(スタンリー・グッドスピード)
ショーン・コネリー(ジョン・パトリック・メイソン)
エド・ハリス(フランシス・ハメル准将)
デビッド・モース(トム・バクスター)
マイケル・ビーン(アンダーソン隊長)
ウィリアム・フォーサイス(アーネスト・パクストン)
ジョン・スペンサー(ジェームズ・ウォマック)
ジョン・C・マッギンリー(ヘンドリクス)
トニー・トッド(ディロー)
そこで政府は、アルカトラズに密かに海兵隊チームを送り込む作戦に出る。そして、細菌兵器に詳しいが現場の経験の無いFBIのグッドスピードと、長年政府の監視の元に監禁していた、ある男をチームに同行させるのだった。その男とは、かつてイギリスの諜報員として活躍していた経歴があり、しかも唯一、アルカトラズから脱走した経験がある、その名もジェームズ・ボンド!ではなく、ジョン・メイソンだった!
(感想)
90年代のアクション映画界を代表する傑作アクションの一つです。まるで『ダイハード』のように、アクション映画の神が降臨したとしか思えないような完成度の高さを誇っていると思いますね。
当時、『ダイハード』ヒットの流れから、舞台をある建物なり乗り物なりに限定したアクション映画が綿々と作られ続けていて、一応、この映画もその範疇に入ると思うんです。
ですが、他の亜流映画と違うのは、「舞台限定アクション」だけじゃなく、他の娯楽アクション映画のあらゆる要素が、バランス良く入ってるという事ですね。
例えば、敵がただのテロリストや武装集団ではなく軍人であり、対する政府側も海兵隊を送り出す、という事で多少軍事アクションの要素が入っていますし(敵の大将ハメルと、海兵隊の隊長アンダーソンとの「国に対する忠誠」についてのやりとりも興味深いです)、迷路のようなアルカトラズの地下を舞台としたアクションシーンには、「危機また危機の連続!」みたいな雰囲気があって、『インディ・ジョーンズ』のような連続活劇映画の要素が入ってるように思えます(ご丁寧に、トロッコアクションまで登場しますし)。
そして、主演の二人、ニコラス・ケイジとショーン・コネリーの演じるキャラクターの間のやりとりからは、バディ物映画の面白さが感じられたものでした。
「制限時間内に解決出来ないと、爆弾を投下される」というのは、パニック映画でも時々見かける手法ですし、舞台がアルカトラズに移る前にはしっかりアクション映画名物のカーチェイスシーンまで出て来ます。
もう、アクション映画のあらゆる面白さが詰まってるようですが、中には「無い要素」というのもあります。それは、カンフーアクションとマッチョヒーローの存在です。一応、コネリーの演じるメイソンがマッチョヒーローに近い「強い男」なキャラクターではあるんですが、何しろお爺ちゃんですからね。
それにマーシャルアーツシーンとか筋肉マンとか、映画の構成を考えると無くても問題無い所です。そもそも、この映画のストーリーの面白い点の一つに、「主役の二人が“現場の経験の無い科学オタク”と“昔は強かった老人”という、一見頼りない連中だ」というのがありますからね。これで、グッドスピードが『コン・エアー』のキャメロン・ボーみたいなムキムキの猛者という設定だったら、また違う雰囲気の映画になってしまいます。
要するに、この映画に関して「あの要素があればもっと良かったのに」という面が全く無いわけですよ。
アクション映画としての構成も完璧ですが、主要登場人物のキャラクター描写もまたいいんですよね。それぞれが「ただのヒーロー」や「ただの悪役」で終わってなくて、非常に活き活きとしてるように感じられるんです。
そして、それを演じる俳優陣もまさに適材適所といった感じで、役柄に見事にハマってました。特に、「アルカトラズから脱走経験あり」「元英国諜報部員」という経歴のあるメイソン役がコネリーなんて、これ以外は考えられないぐらいの完璧な配役ですよね。と言うか、コネリーの出演が決まってから付けられた設定なのかもしれませんが(笑)。「アルカトラズからの脱走」は、これ以前は映画界で唯一脱走に成功していたのがイーストウッド御大のみだったと思うんですが、「もう一人いた脱走者」がコネリーならば誰しも納得というものですからね。
あと、後にマッチョヒーローも演じる事となるニコラス・ケイジも、この当時はまだ、こういう頭脳派で戦闘にあまり向かないヒーローの方が似合ってたような気がします。
ここまででも、もう十分完璧な映画なんですけど、まだ挙げてない凄い点というのがあるんです。それは、音楽が鬼のようにカッコいいという点。もう、「ハンス・ジマー最高傑作!」と言っても過言ではない、超熱のスコアが背景で鳴ってるおかげで、映画の迫力がどれだけ増した事か。
製作のブラッカイマーはこの後も良質のアクションエンターテイメイント映画を世に送り出すこととなりますが、ここまで完成度の高い映画はあんまり出ませんでしたね。もしかしたら、相棒のドン・シンプソンの功績も相当大きかったのかな、と思ってしまいますね。この映画の製作中か完成後かに他界してしまいましたが、これは、娯楽映画界にとってもかなりの痛手だったのかもしれないですね。
一方、監督のマイケル・ベイは、今となっては「この映画って、マイケル・ベイだったの!?」と思うような方向に進んで行きました。もう、この映画が大人しい映画に思えるぐらい、ド派手で騒がしい映画を連発するようになりましたからね。