監督・製作・脚本:ジェームズ・キャメロン
音楽:ブラッド・フィーデル
出演:アーノルド・シュワルツェネッガー(ハリー・タスカー)
ジェイミー・リー・カーティス(ヘレン・タスカー)
トム・アーノルド(アルバート・ギブソン)
ビル・パクストン(サイモン)
アート・マリック(サリム・アブ・アジズ)
ティア・カレル(ジュノ・スキナー)
エリザ・ドゥシュク(デイナ・タスカー)
テロリストが核を使った攻撃を企てている事を知ったハリー達は調査を始めるが、ある日、妻のヘレンの浮気疑惑が持ち上がる。ハリーは本来の任務をほっぽり出して妻の浮気調査をおっ始めるのだった。
おかげで妻もろともテロリスト達に拉致される事態を招いてしまうが、ハリーをわざわざ本拠地に連れ込んでしまったのがテロリスト達の運の尽きなのだった。ハリーは自慢の筋肉やハリアーを駆使してテロを完全粉砕するのだった。
(感想)
『ターミネーター』シリーズに続いてシュワとキャメロンが手を組んだアクション大作ですが、キャメロン映画にしては珍しくコメディ色の強い映画になってました(シュワにとっては珍しくもなんともないんですが・笑)。
アクション演出には恐るべき手腕を発揮するキャメロンですが、コメディ演出の方もなかなか快調でしたね。特に、テログループのリーダーに関するギャグシーンはどれも大好きです。例えば、ビデオカメラの前で力んで演説してる最中に、そのカメラのバッテリーが切れるとか、ミサイルに引っ掛かったまま、そのミサイルを発射されるという死にっぷりとか(演出以前に、このテロのリーダーを演じてる人のコメディ演技が素晴らしかったというのもあるんですが・笑)。
シュワの役柄は政府のエージェント、いわゆるスパイなんですが、かなりジェームズ・ボンドチックなスパイです。妙な兵器類は出て来ないですが(小型カメラの映像が映るグラサンぐらいで)、普段の立居振る舞いから敵と戦闘時の対応とか、どこを切っても「ボンドのパロディ」みたいなキャラクターです。
ボンドと言えばダンディで男前な色男スパイですが、それと同じような事を筋肉マンがやってる辺りがなんとも楽しげですね。しかも、ただの筋肉マンではなくアーノルド・シュワなので、アクションシーンでの存在感は凄まじいまでのレベルです。もう、とにかくアクションシーンの動きどれ一つとっても絵になってるんですよね。
前半と後半には、かなり力の入ったアクションシーンが出てきて、ボンド・シュワが大暴れをします。そんなシュワアクションを、アクション演出の天才、ジェームズ・キャメロンが撮ってるというこの映画のアクションシーンの迫力は、全シュワ映画の中でもトップクラスのものでしょうね。しかも、「街中でハリアーを飛ばしてテロと戦う」なんてどう考えてもやり過ぎなシーンも出て来ます。ですが、シュワクラスになると、アクションはやり過ぎなぐらいやって、むしろちょうどいいんです。もう、クライマックスのハリアーアクションシーンでは、「ここまでハリアーが似合うスターが他にいるか!?」と見てて感動するぐらいでした。
と、ことアクションに関しては凄い映画なんですが、個人的に、ストーリーが面白くないんですよね。例えば、シュワ演じるハリーが、家族には自分がスパイである事を偽って暮らしている所とか、最終的に奥さんを巻き込んだ対テロ戦に突入する辺りとかはいいんです。ですが、その間のストーリーが何故「妻の浮気調査」という方向に行ってしまったのかと。
前半では、見事なアクションを披露しつつもテロの計画を暴いていたという「よく出来たアクション映画の見本」みたいな展開だったのに、中盤、そういった本来の仕事(ハリーにとってもアクション映画としても)を完全にほっぽり出して、くだらない公私混同を延々続ける様には、最初に見た時は本気で辟易したものでしたね(まともな大作アクションを期待していただけに)。
「どういうストーリーなのか」を知っている今見ればただ「つまらない」で済みますし、その間のコメディシーンには笑える場面もあったりするのでまあいいんですが、最初に映画館で見た時はほんとに辛かったです。後半の怒涛のアクションにもノレなくなるぐらい参ってしまいましたからね。
客観的にはかなりの出来の映画だと思うんですが、そんな出会い方をしたせいか、あまり「いいアクション映画だ」と言い切れないものがあるんですよね。まあ、私にとってはキャメロン映画全般に「いいアクション映画だと言い切れないもの」は常に感じてるんですけど。
この人、アクション演出に関しては恐ろしいまでの才能があると私も思うんですが、ストーリーの語り方が何か好きになれないんですよね。必ず中盤にダレるシーンをもってきますし。その「ダレるシーン」のつまらないっぷり(個人的に)が、それまでのいいシーンを打ち消すぐらいとんでもないんで困ってしまいます。ほんと、アクションは凄い人なんで、実に惜しいです。