監督:ツイ・ハーク
リンゴ・ラム
出演:ジャッキー・チェン(マー/ボミー)
マギー・チャン(バーバラ)
ニナ・リー(タミー)
テディ・ロビン(ターザン)
(感想)
実は、この映画が、私が初めて劇場で見たジャッキー映画でした。当時の私がジャッキーに期待していたのはカンフーとスタントアクションのみだったので、この映画のかなり長くてしつこいギャグシーンには、見ててちょっとうんざりしたものでした。
アクションシーンが始まるともう、それは凄い事になるんですが、結果として、「ジャッキーのアクションが凄いだけの映画だった」という印象が残り、それ以来テレビ放映を一度見たきりという扱いでした。
そして現在(※これを書いてるのは2003年)。ハリウッドでの『タキシード』や『シャンハイ・ナイト』を経験し、「カンフーアクションに頼らずに勝負するジャッキー」の魅力に開眼した今の私が、久々にこの映画を見てみました。
そして思った事。
「ジャッキーのアクションだけはとてつもなく凄かった」。
以上(爆)。
いや、決してコメディシーンがつまらないというわけではありませんよ。ストーリー自体もそれなりに面白いものです。そもそも、ジャッキーの一人二役というのも珍しいですからね。
ですが、当時は気付いてなかった事ですが、私は基本的に笑いのツボがアジアよりもアメリカ寄りらしいんです。なので、コメディシーンだけを見たら最近のハリウッド製の映画の方が面白いし見てて楽しいんですよね。
あと、これは今も昔も思ってる事ですが、ジャッキー映画において、共演女優こと“ジャッキーガール”が絡んでくるシーンが全然面白く無いんですよね。そんなところに、この映画はジャッキーガールが2人も出てきて、しかもその絡みのシーン(※エロシーンという意味ではない)が長くてしつこかったりするんですよ。これでは当時見て悪い印象が出たのもしょうがない。
その代わり!アクションシーンの凄さがもう、とんでもなかったです。およそ『シャンハイ・ナイト』の3倍はスピードとキレのあるカンフーアクションに、現在はもはや封印状態の超絶スタントアクション!ジャッキーのアクションの凄さを改めて実感しましたね。これはむしろ、今見るから余計に凄く感じるのかもしれないです。
この映画の監督は、後にヴァン・ダム主演作でハリウッドに進出するツイ・ハークとリンゴ・ラムの二人がやっています。どうも、アクション場面をツイ・ハークが、ストーリー部分をリンゴ・ラムが演出したらしいです。
この映画の弱点と言っていい箇所、「ジャッキーガールとのしつこいコメディシーン(特に終盤の風呂場のシーン)」はツイとリンゴ、どっちの仕業なんだろう(笑)。やっぱり、ストーリー担当のリンゴの方か。
この映画、女優陣の出番を大幅に減らして、ジャッキー二人の掛け合いを増やした方が数倍楽しい映画になったと思うんですよね。でも、ジャッキー的には女優と絡んでる時の方が楽しいんだろうなぁ(笑)。それに、香港ではこういうギャグの方がウケるんでしょうね。
ところで、アクションスターの一人二役と言えば、『ザ・ワン』や『シックス・デイ』などがありますが、どちらも「これだったら、ヴァン・ダムがやった方がもっと面白くなったんじゃないのか」と思える映画でした。何せ、ヴァン・ダムと言えば、ミスター一人二役として有名な男ですからね(私の中では)。でも、この『ツイン・ドラゴン』の場合は、コメディ色が強すぎるのでヴァン・ダムだとイメージが合わないですね。ジャッキーならではです。
あと、これまでのアクションスターによる一人二役映画と比べて、コンビのキャラクターの違いから来る、“二人の掛け合いの面白さ”があるんですよね。もう、比較の対象が一人二役映画よりも、コンビ物アクションコメディの方が合ってるぐらいです。
例えば、最近のハリウッドでのジャッキー映画ではクリス・タッカーやオーウェン・ウィルソンといったコメディセンスのある人達とコンビを組んでいて、その掛け合いが面白かったりしましたが、その面白さがこの映画にもあるんです。しかも、その相手はジャッキー自身という(笑)。
ジャッキー演じる双子のうち、ボミーの方はいつものジャッキーとほぼ変わらないタイプですが、もう一方のマーは「カンフーも出来ない音楽家」という、まさに新境地なタイプです。でも、マーが見せる“事件に巻き込まれたり、回りの人達に振り回されてヒーヒー言う”というのはジャッキーの得意な分野の一つではありますけどね。
ただ、このマーというキャラクター、今でこそ「コメディ演技のみで勝負するジャッキー」を見る事に慣れがありますが、当時は「カンフーを使わないジャッキーなんて意味が無い」ぐらいの事を思ってたんで、見ていてもどかしいキャラでしたね(もちろん、今はそんな事は思わないですが)。
あと、「成功してる音楽家」という役柄の割に、あんまり音楽家に見えなかったんですが、どうもその「音楽家に見えない」という点も笑うところだったらしいですね。いやぁ、それは気が付きませんでした。まあ、『サイクロンZ』だと弁護士の役でしたし、「その職業の人に見えない」なんて今更何言ってるのかって話ですな。
ところで、アクションシーンはスタント無しのジャッキーですが、ピアノを演奏する所はやっぱりスタントなんだろうか(笑)。