監督:ロブ・コーエン
製作総指揮:ヴィン・ディーゼル
撮影:ディーン・セムラー
音楽:ランディ・エデルマン
出演:ヴィン・ディーゼル(ザンダー・ケイジ)
アーシア・アルジェント(エレーナ)
サミュエル・L・ジャクソン(ギボンズ)
マートン・ソーカス(ヨーギ)
マイケル・ルーフ(トビー・リー・シェイバース)
イヴ(J.J.)
ダニー・トレホ(エル・ジェフ)
トーマス・イアン・グリフィス(失敗エージェント)
(感想)
「民間人をスパイに仕立て上げる」という、コメディ映画みたいなネタで、ド派手なアクション大作を作り上げた映画です。ちなみに、日本で同時期の公開となった『9デイズ』は、同じネタをコメディ要素を交えた形で作り上げていましたね。
一応、「スパイ映画」というジャンルに含まれるストーリーの映画ですが、普通、スパイ映画と言うとサスペンス寄りのアクション映画になるものです(『ボーン・アイデンティティー』みたいに)。
ですがこの映画は、中身は純粋なアクションでしたね。何しろ、主人公のザンダーが完全にアクション派でしたからね(笑)。見るからに、隠密行動よりも破壊行動の方が似合うというタイプです。どちらかと言うとジェームズ・ボンドもこのタイプですが、『007』シリーズよりもさらにアクションへの比重が高いです(『ダイ・アナザー・デイ』みたいな例外もありますが)。
そんな、シークレットな作戦行動が似合わないザンダーですが、これまで一流エージェントが失敗してきた敵組織への潜入に、難なく成功してしまいます。それは、今までのエージェントと違い、「悪い奴を装ってる」のではなく、「もともとこっち系の人間だ」というせいです。ですが、心底のワルではなく、根はいい人間なんです。何故なら、演じてるのがヴィン・ディーゼルだから(笑)。多分、「ワルだけど根はイイ奴」を辞書で引いたら、ヴィン・ディーゼルの顔写真が出て来るんじゃないだろうか。
そしてこの、今までのワルの知識を活かして敵の組織に潜入するというのは、『ブルー・ストリーク』で見られた「泥棒が刑事に化けて、窃盗犯を捕まえる」というのと同じ種類の面白さがあるように思えます(何でこんな有名でもない映画を例に出したのかと言うと、この間見たばかりだからです)。
主人公の設定や行動にリアルさというのが無いのでストーリーに緊張感もほとんど無いんですが、「主人公の活躍を見てるのが楽しい」というタイプの面白さがあるんですよね。
また、他のスパイ映画と違う点として、主人公の任務に対する目的意識の違いというのがあります。普通のスパイ映画(『007』とか)だと「国の為、仕事の為」という感じになりますが、ザンダーの場合は基本的には「自分の為」なんですよね。
最初は、「無理矢理やらされた任務に当たっている」というものでしたが、次には、「敵組織内にいた女にホレたから、何とか助け出してあげたい」というものになります。
ですが最後には、敵の企みを阻止する事が「本当に命を賭けるに値する行動」と思えるようになるという、崇高な思いで任務に当たるようになります。
任務達成以外に、こういう主人公の心情の変化があるというのは面白いものですね。ただ火柱が上がるだけの中身の無い映画という見方も出来ると思いますが(多分、それが一番簡単な見方でしょうね)、ドラマ面に面白さを見出す事も決して不可能では無い映画でもあると私は思いますね。
さて肝心のアクションシーンですが、その派手さは相当なものです。VFXも使ってはいますが、メインに使われるのは火薬という、もう火柱オンパレード状態。そして、主人公が“Xゲーム”なる、スタントだかスポーツだか分からないような危険なゲームで名を馳せている奴なせいか、普通のスパイならまずやらないような超絶スタントアクションを披露したりします(スタントアクションと言っても、ジャッキーみたいに本当にやってるわけではありません)。例えば、バイクで大ジャンプをして金網の間を潜ったり、雪山をスノボーで滑りながら雪崩を起こしたり。冒頭では、車に乗ったまま橋から落下し、パラシュートで脱出するなんて技も見せていました。
今の技術を使えば、こういった超絶アクションシーンは、アクション初体験のアイドル女優ですらやれたりするものですが、ちゃんと筋肉ムキムキのマッチョがやってるというのが実に嬉しいですね。こういうのはやっぱり、似合う人がやってこそ燃えるアクションシーンになるんです。
それに加え、この新時代的なエクストリーム・アクションと、80年代を思い出させるような火柱アクションが融合したこの映画のアクションシーンには、今までに無いようで見慣れているようでもある、不思議な感覚がありましたね。
ところで、この映画には、キャスティングに驚くべき点があります。それは、ヒロインを演じてるのがアーシア・アルジェントだ、という点です。普通の映画ファンにとっては何の事は無い点ですが、ホラーファンにとってアーシア・アルジェントと言えば、ジュリア・ロバーツより大物女優という認識ですからね(そうなのか?・笑)。
私がこの人の姿を見るのは『スタンダール・シンドローム』以来約5年振りぐらいで、しかもあの映画は今では1シーンすらも思い出せないぐらい何だかよく分からない映画でした。当然、アーシアがどんな顔をしていたのかも全く覚えてなかったんですが、この『トリプルX』に出てるのを見て、こんなにセクシー美女だったのかと驚きましたね。「よくぞあの親父からこんな娘が・・・」と思わずにはいられません。
私は基本的に、アクション映画は主役のマッチョだけをメインに映して、女優との絡みは一切無くていいぐらいの事を思っていたんですが、この映画で初めて、ヒーローのマッチョよりもヒロインの方がカッコいいと思ったものでした。
「続編では、もっと出番が多くなって欲しい」と思っていたんですが、結局、アーシアもヴィン・ディーゼルも降板し、代わりにアイス・キューブが主演という形の続編となってしまいました(しかも日本ではビデオスルーに。残念)。