トリプルX ネクスト・レベル
<XXX2: THE NEXT LEVEL/ XXX: STATE OF THE UNION>
05年 アメリカ映画 101分

監督:リー・タマホリ
音楽:マルコ・ベルトラミ
出演:アイス・キューブ(ダリウス・ストーン)
   サミュエル・L・ジャクソン(オーガスタス・ギボンズ)
   ウィレム・デフォー(ジョージ・デッカート将軍)
   スコット・スピードマン(カイル・スティーリー捜査官)
   ノーナ・ゲイ(ローラ・ジャクソン)
   サニー・メイブリー(チャーリー)
   マイケル・ルーフ(トビー・シャバーズ)
   ピーター・ストラウス(ジェームズ・サンフォード大統領)
   ジビット(ゼーク)

(あらすじ)
ギボンズの仕事場である秘密の地下基地が何者かの襲撃を受けた。脱出に成功したギボンズは、敵の正体を探るべく、新たなトリプルXに任務を与えるのだった。それは、9年間、刑務所に入れられていたスーパーブラザーのダリウス・ストーンだった。
捜査&破壊活動を始めたダリウスは、かつて因縁のあるデッカート将軍が何か企んでいるらしい事を突き止めるのだった。

(感想)
ヴィン・ディーゼル主演で大ヒットした『トリプルX』の続編ですが、今回はヴィンが降板し、代わりにアイス・キューブが主演の座について製作されました。
最初にこの報を聞いた時は「また驚くほど地味なキャストになったものだ」と思ったものでしたが、後に、「サミュLの出番が前作より増えたらしい」「ウィレム・デフォーが悪役らしい」「何と、あの『ダイ・アナザー・デイ』のリー・タマホリが監督らしい」といった情報を聞いていくにつれ、この映画への期待感がバリバリに高まっていきましたね。一丸となってヴィンの抜けた穴を埋めようとしているのが感じられて、「なんて清々しい舞台裏だろう」と勝手に思ったりもしました。
ですが、全米で公開されるや、驚きの大コケ。さらに驚愕の「日本未公開、ビデオ直行」の刑。あの、『アナコンダ2』ですら、小規模でも劇場公開したソニー・ピクチャーズが!
この映画を劇場で見られる日を楽しみに待っていただけに、これには怒りと寂しさを感じずにはいられませんでしたねぇ。そして、見た暁には「何でこんないい映画をビデオスルーにするんだ!」と怒るに違いないと思ったものでした。

で、今回その問題の映画をついに見たわけですが、やはり予想通り、「これは映画館で見たかった!」と悔しい思いをするハメになりましたねぇ。
「前作よりも面白いか?」と言えば確かに微妙なところではありますし、主演のアイス・キューブには、「こういう大作映画の主演を任せるにはまだ力不足の感は否めない」という印象を持ちました。
ですが、さすがボンド映画を火薬にまみれたハードアクションに仕立てたリー・タマホリが監督だけあって、アクションファンならニンマリ、と言うか、爆笑必至な映像の出て来る、イカしたアクション映画になっていました。

前作は、一応はスパイ映画の範疇に含まれる内容の映画でした。主人公のザンダー・ケイジも、「今までのスパイとは一味違う、新時代のスパイ」といった触れ込みが与えられて、エクストリーム・スポーツの達人という設定により、アクションシーンに関しても今までとは少し違う面を見せていました。
ですが、今回の主人公ダリウスは、実にストレートなアンチ・ヒーローといったキャラクターで、その行動自体には特に目新しい所はありませんでした。
映画の内容も「スパイ映画」といった雰囲気は影を潜め、「アクションヒーローが敵の陰謀を打ち砕く」という、あまり凝った所の見受けられないストーリー展開となっていました(敵の設定を国外に求めなかったのは珍しい点かも)。
でも、正直、前作を見た時も、別に「新鮮だ!」なんて事は特に思わなかったので、むしろ正攻法で攻めてきたこの映画の方が私にしてみれば取っ付き易かったですね。

新主人公のダリウスは、かなり無敵風味な奴で、ほとんど活躍シーンしか描かれません。こと「主人公の人間味」で言ったら、前作のザンダーとは比べるべくもないぐらいです。でも、アクション映画の主人公としては、こういうキャラクターも十分アリだと思いますね。ザンダーはザンダーで魅力的でしたが、ダリウスはダリウスで魅力的なキャラクターだったと思います。
ですが、やはりキャスティングはもう少し慎重にやって欲しかったと思いますねぇ。アイス・キューブも悪い俳優ではないんですが、ダリウス役を完全にこなすには何かが足りないような気がしてなりませんでした。しかも、敏捷なアクションを見せる役どころなのに、やたらポッチャリした体型なのもどうかと思わずにはいられません。
アクションの動きとか、ここ一番の表情とかはきちんとサマになってるんですけどねぇ。でも、何か物足りないんですよねぇ。個々のアクションシーンの映像やら演出やらが優れていただけに、何とも惜しい気がしてしまいます。特に、橋の上で爆発炎上するモーターボートの前をダリウスがふてぶてしい顔で歩いているシーンと、クライマックスのVFXをバリバリに使ったアクションシーンなんかは、ほんと素晴らしかったですしね。もう、拝みたくなってくるぐらいの名シーンでした。

ちなみに、私がこの映画を見て一番ビックリしたのは、ザンダーが死んだ事になってた所ですね。もうちょっと前作に敬意を払っても良かったんじゃないんだろうか。でも、この世界では「行方をくらます為に、死んだ事にする」という技がよく使われたりするので、実際はまだ生存してるという考えも出来ますけどね(結局、数年後にヴィン・ディーゼル主演の続編が作られ、やっぱり生きてたという事が判明するのでした)。